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   帆越山(321m)、太田(485m)、相泊(532m)

 
最西端の山・帆越山 霊験あらたかな太田山
太田神社へ あまり特徴のない相泊山
 

1/25000地形図   「後志太田」

木々の間には太田山が見える(ズーム使用) 太田山への登り
帆越山トンネル前には広い駐車スペースがある
帆越山への急な尾根を登る
帆越山への途中、日が差して気持の良い樹林帯となる
帆越山頂上で休憩

 今回訪れた三山、帆越山は北海道・本土の最西端に位置する山で、となりの太田山は北海道最古の神社(創立は嘉吉年間/1441〜1443年)が建てられ、それぞれに別の意味で有名な山である。この二山に普通の藪山・相泊山を合わせ、三山の循環縦走ということで今回の計画となる。もちろん、この計画の発案者は全道・完全登頂を目指すKo玉氏で、およそ登山の対象としては小粒過ぎる帆越山(321m)までもが含まれる。太田神社の参拝は45°の階段に最後の鎖場と、一般的には困難を極めるようだ。神社の参拝は無雪期の楽しみに取っておくこととして、我々山ヤとしては本殿到着では太田山に登ったことにはならない。本殿から頂上へは行けないようなので、積雪期のこの時期が太田山登頂への狙い時となる。霊験あらたかなパワースポット・太田山、神への冒涜となるかもしれないが、このピークですら踏まなければならないのも藪山愛好者の宿命である。

 道の駅「テックイランド大成」に三々五々集合、10名もの大所帯となって、三山踏破へと向かう。6台もの車で乗りつけたとあってはトンネル前に縦列駐車するしかないだろうと思っていたが、トンネル前には町民登山でも十分に対応できるほどの広い駐車スペースがあり、幸先の良いスタートとなる。まずは帆越山へと向かう。駐車場からひと登り、古道へと出る。この古道の反対方向が帆越山への最良のアプローチとなると知ったのは下山後、我々は地形図上のコンタが一番緩そうな斜面に取付く。前日にはそれなりにまとまった積雪があったようで、スキー登高が可能となったのはラッキーだった。この時期は一年間を通して積雪が一番豊富な時期であり、当然といえば当然だが、如何せんここは海岸線、この時期でさえ笹が頭を出している。まるで初冬の風景の中、急斜面にジグを切りながら強引に標高を上げる。

太田山頂上にて
崖っぷちまで行ってみるが、覗き込むことはできない
新雪で雪化粧した樹林が美しい
相泊山頂上は目の前

 斜面を登りきると集材路(この山で伐採作業が行われていたかどうかは疑問)に飛び出す。帆越山まではこの集材路を使って近づいて行く。前方には帆越山が見えるが、その端正な山容を見ていると、つい急斜面の登りが想像される。しかし、地形図を見る限りは恐れるに足らずである。詰めは青空が映える気持の良い樹林帯となって、それなりに展望のある頂上到着となる。まずは一山ゲット。三角点を掘り出そうと9名があそこだここだと船頭を決め込む中、漕ぎ手1名が頑張っていたが、意外に多い積雪量に阻まれて発見は叶わなかった。帆越山の山名由来だが、後日、盟友Ko玉氏から送られてきた資料によれば、太田山権現との関わりがあるようだ。そもそも太田山山頂には病気、災厄、航行安全の守り神・オホタカモイが座しており、松前藩祖・武田信弘が太田権現の尊号を奉て一族の息災と武運を祈ったとのこと。以来、岬の沖合を通る船は帆を下ろして航行の安全を祈ったらしい。(北海道の口承文芸/北の生活文庫企画編集会議編)  “帆おろし”が“帆こし”となり、岬の名となり、山名となったようだ。

 最初、この山を一山にカウントするには標高321mとあっては少々気が引ける思いだった。だが、海抜数メートルからの登山であれば標高差は300mを超える。ましてや、取り付きが嫌らしいとあってはそれなりの登り応えを感じる。また、帆越トンネルが開通する前までは、太田地区へのアプローチでは落石や高波などのリスクを背負いながらの通行を強いられていたらしい。そんな経緯や歴史的な伝承等を考える中で、私の中での帆越山の存在感がぐんと増したというのが正直なところである。  

《太田山へ》・・・

 次は今回の本命・太田山である。帆越山からは意外なほどの下降となる。前方には木々の間から、険しさを絵に描いたような太田山が見える。確かにこの山の山容を眺めているだけでも霊験あらたかな何かを感じる。コルまで下って電線を通過、スタートで歩いた古道から続くものと思われる。太田山への最初の登りは頭の中で描いていたものとは違った疎林帯の軽いものだ。対岸からは立って見えることは織り込み済みだったが、それにしても穏やかな登りである。痩せ尾根で難儀するものと覚悟はしていたが、痩せてきても登り自体の傾斜は緩い。今か今かと急斜面を予測したが、そんな傾斜は終いまで現れなかった。きつい斜面といえばむしろトラバース気味に進む横の傾斜である。細い稜線上には雪庇が乗っかっているため、安全策を考えれば斜面の中を横切って行くルートとなる。しかし、雪庇も発達しているわけでなく、狭い雪庇が木々の上に乗っかっている程度である。見た目と実際とはかなり違うようだ。

 左側の大岩壁が近づくとこの雪庇から霊場・太田神社本殿をついつい覗きたくなった。最初は恐る々だったが、いざこの雪庇に乗るとそうでもないことに気付く。真正面に現れた大岩壁、その何処に太田神社・本殿があるのだろうか…? 先日買ったばかりのキャノン・EOS M にその全体像をとりあえず納める。後日、写真の解析の中でその実像を探してみようという目論見である。ところが、私が下った後、ほぼ全員がそのビューポイントへ登っている。しかも「あった、あった」と。どうやら、私の立っていた目線よりもかなり下だったようで、痩せ尾根上からは見下ろす位置にあったようだ。頂上直下と単純に考えていたため、それを確認するどころか、写真にも写っていなかったのは残念だった。

  相泊山への途中、太櫓山(左)と毛無山(右)を望む

 いよいよ詰めとなり、痩せ尾根から広い斜面となる。急かと言えば、それ程でもないというのが正直なところ。とは言え、先行するKo玉氏のトレースは急過ぎて踏み固められた二番目以降にはそれなりに辛いものがある。新に大きく緩いトレースを刻みながらKo玉氏を追っかける。ko玉氏が止まった。頂上到着かと思ったが、頂上手前30mとのこと。風が強そうなので皆を待っているとのこと。彼特有の演出だが、痺れを切らすのもまたせっかちな彼の一面、最後はあっさり一番乗りを決め込んでいた。私も一歩遅れて頂上に到着する。この山の展望は素晴らしい。鋭角的な天狗岳や登ったばかりの帆越山、これから向かう相泊山等、この山ならではのアングルでそれらが広がっている。ここで気になったのはやはり本殿。恐るおそる大岩壁の際まで進んでみたが、足元からスッパリ切れ落ち、引きずり込まれそうで思わず樹木を握ってしまう。 とても覗き込むことなど出来なかった。

《相泊山へ》・・・ 

最後に一番高い相泊山へと向かう。広い尾根上はまるで歩くスキー、新雪で綺麗に雪化粧した木々を楽しみながら進んで行く。途中、800mクラスの毛無山や太櫓岳を望むことが出来るが、さすがにこの低い稜線からではなかなかの高山的な雰囲気を感じさせる。そのまま進み、緩い雪面上の少し高くなった高みが相泊山の頂上だ。かなりマイナーな山であり、こんなきっかけでもなければ、この山を単独で狙うことはまずないだろう。今回、Ko玉氏は付き合いということで二度目の登頂となるが、夏冬とこのピークに立った人間はあまりいないと思われる。さすがに、全山踏破を目指すKo玉氏ならではの快挙? と言えるのかもしれない。天候も回復傾向、青空に映える昼下りのピークは藪山愛好家でしばし賑わっていた。

相泊山頂上にて
強風で変形したトドマツが見られる(相泊山からの下降途中)

 帰路、下山ルートのコンタ400mピークを目指して快適に進んで行く。途中、Taoさんの苔についての説明に皆が耳を傾ける中、ふと見るとこの日の主役であるKo玉氏はカバアナを見つけて「しかたない…採って行くか」と独り言、別にしかたがなくなんかないんだよな…と思ったが、ここは満足げなKo玉氏を黙って見ていた。その速さだが、チロロ2さんがそのことに気付いた時点で、カバアナは既にKo玉氏のザックの中へとしっかり納まっていたほどだ。カバアナはレアと聞くが、ko玉氏と山を歩いている限り、何処にでもあるような気がしてならない。私としては、この石としか思えない代物を背負って下ろうなどとは思わない。

両岸の進めそうな斜面を選びながらのトラバース

 この日の核心部は最後に待ち受けていた。472m標高点からの下りである。私としては下降ルートについては何処でも良かった。誰かが案を持っていればそれに従うつもりでいた。今回はmarboさんが、自分の考えてきたルートを提案、すぐにそのルートに決まる。彼は出張先の清里からはるばる12時間かけてここへと駆けつけてきた。彼のルート計画はなぜか私の考えと一致することが多く、そのぴりっと効いた独特の山椒効果が山行に充実感という彩りを添えることが多い。スキーに自信のあるメンバーはシールを外すが、そうでないメンバーはシールを付けたままの下降とする。もっとも、何が現れるか判らない藪山山行を考えれば、シールは付けたままの方が得策という考え方もある。ひと滑り、ふた滑りと快適に下って行く。シールを貼ったままでも十二分に楽しめる。だが、途中から藪が混んで来きた。やっぱり… スキー上手も下手も狭くなった藪が濃い狭い尾根上でストップしてしまった。その先は藪が濃い上に急傾斜となって落ち込んでいるとのこと。ちらっと横を見れば沢を隔てた向かい側の斜面はかなり近い。それなりに下降したようだ。sakag氏始めスキー熟達者数名はそれでもスキーにこだわり藪斜面を斜滑降で沢底へと下って行く。Ko玉氏はさっさとツボ足で沢底へと下っている。何度も出くわした藪の急斜面での沢下降、私もこんな場面ではKo玉氏同様にツボである。沢底に関しては経験則上、そう心配するような状態ではない。

 案の定、沢底に水は流れているが川底は浅い。今の時期ではスノーブリッジは何処でもOK、底氷もかなりぶ厚くなっており、渡渉に関しての問題はない。両岸のトラバース可能な斜面を選びつつ相泊川の本流へと向かう。ただし、途中1ヵ所、自分的にはかなりヤバそうな、いつ崩れてもおかしくない斜面を横切っている。直後に続くメンバーが居たら… と見張っていたが、後続は誰も続いては来なかったので、まずはホッとした。もっともそれぞれに自分の判断で動くメンバーばかり、私の取り越し苦労だったようだ。相泊川を渡って、最初の古道に出た時には誰からともなく大休止となった。せっかちなKo玉氏は一歩先に進んでいたが、わざわざ戻ってきた。山行達成の喜びを皆で共有する、そんな思いにさせたのは、やはり最終局面の変化あってこその結果だろう。もう1つ結果論を言えば、コンタ400mポコを経由するルートがやはり正解だったと言える。ただし、その場合は普通のスノーハイキング的な山行となり、残る印象としては「楽しかった」で終わっていたかもしれない。ともあれ、どれもが一山と認識できる特徴ある三山を巡る山行であった。(2013.02.17)  

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【参考コースタイム】 帆越山トンネル入口 P 8:10 帆越山頂上 9:30、〃発 9:35 太田山頂上 11:10、〃発 11:35 → 相泊山頂上 12:05、〃発 12:15 → 472m標高点 12:50 帆越山トンネル入口 P 14:20 (総登山時間 6時間10分)  

メンバー】ko玉氏、sakag氏、Taoさん、yukiさん、marboさん、T山さん、mocoさん、saijyo、チロロ2さん、チロロ3(旧姓naga)の手温泉(入浴)

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