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  奥手稲山(949m)

 

定山渓天狗岳から奥手稲山を望む

/25000地形図「銭 函」「手稲山」「張 碓」「余市岳」

「夕日の沢」入山口はいつも込み合っている
奥手稲山頂上にて・・・この頃から天候は急速に回復
ノスタルジックな奥手稲山の家
小屋備え付けのギターと歌集はここだけのもの

北海道の山スキーといえば、私には手稲山〜奥手稲山、春香山、ニセコ、十勝・三段山等がイメージされる。ゲレンデスキーが開花する以前には山スキーが主流であった時代があり、大学山岳部と並んで、旧国鉄山岳部も盛んに活動していた時代であった。そんな中で建てられたのが国鉄山の家(現;奥手稲小屋)で、名称は変わっても小屋自体は当時のままで、同山岳部の意気込みを垣間見ることができる。昭和40年代、ニセコ・五色温泉「国鉄山の家」改築を機に、この建物の管理は北海道大学へと移管され現在に至る。以前、札幌・テレビ塔の階段を上がって行くと、道内観光地を紹介する白黒写真パネルの中に「奥手稲山の家」のものがあり、子供心にある種の憧れを感じていた。奥手稲小屋の中には現在もフルヤキャラメルの広告が入った周辺図など、当時のままの掲示物なども見られ、山小屋そのものが昭和初期を象徴する博物館といった感じである。今回は、北見・熊ぷ〜さんの札幌遠征ということで、正に山男といった彼の風貌と奥手稲山の家のイメージが妙にオーバーラップし、この山に決める。

奥手稲山へ至るルートとして、以前は手稲山から通称・パチンコ尾根を越えるルート、銭函のゴルフ場からのルート等が主流であった。1978年の国際スキー場の開設以来、道道1号線(小樽・定山渓線)が冬期間も日中に限り通行可能となり、夕日の沢からのアプローチが容易になった。その後の中高年登山の盛り上がりと相まって、僅か数時間の歩行によって登れる山となった奥手稲山周辺は再び人気の山域となる。

今回はこのメジャーなルートをトレースしてみることにする。雪の舞い散るあいにくの天候であるが、午後からは回復傾向とのこと。昨日のものと思われるトレースが続き、ラッセルの必要はない。夕日の沢沿いの林道は途中で途切れ、右岸左岸と進んで行くうちに、いつのまにかトレースだけ見て進んでしまったのかもしれない。770m分岐を見落とし、そのまま直線的に進んでしまう。途中、下山途中の単独行の登山者とすれ違うが、挨拶も交わさずにそそくさと下山して行った。私の頭の中では昨夜は奥手稲小屋に泊まり、早々の下山かと思っていたが、トレースはそこから先ですぐに途切れてしまう。この登山者は迷っていたのかもしれない。小屋へは左岸をトラバース気味に戻ることになる。

小屋では昨日泊まった中高年パーティが下山準備をしている。我々は担いできた夜用のビールを置くにとどめ、直ぐにトレースを引き返して奥手稲山頂へ向かう。トレース終了点からは広い樹林帯の緩斜面が広がる。登るというよりは歩くといった感じであり、最後は丘への一登りで頂上に到着する。最初は見えなかった展望も徐々に回復、石狩の海岸線や周辺の山々が姿を現す。何度も登ったピークであるが、同じピークでも星置川や銭函から苦労して登った時の方が感動は大きかったような気がする。それほど、このコースはあっけないということだろう。

奥手稲小屋は地下の石炭庫も含め、4層の素晴らしい山小屋である。居間から3階までは吹き抜けとなっていて、真ん中には石炭ストーブがある。週末ということもあり、たいそうな賑わいを予想していたが、夕方になっても管理当番を含め、他の登山者はだれも上がって来ない。今日は斜里岳・清岳荘管理人の熊ぷ〜さんが奥手稲小屋の臨時管理人といった贅沢さである。彼はいとも簡単に石炭ストーブを点火させてしまう。小屋には備え付けのギターや歌集などもあり、70年代フォーク全盛の時代に青春時代を過ごした我々パーティにとって、ギター伴奏で好きな歌を歌うのは至福のひと時である。雰囲気満点の山小屋で、仲間内だけで夜遅くまで気兼ねなく歌って飲んで過ごす。

白銀の世界へ、いざ! ツゲ山頂上にて

通称;ユートピアから朝里岳“飛行場”を望む

翌朝は快晴の朝となる。付近の山スキーには格好な斜面を見ながら、小沢を詰める。今日の目標は展望の良いツゲ山登頂である。984m峰(通称;ユートピア)を完全に過ぎて、ツゲ山への分岐・994m峰に登ったと思っていたが、実はユートピアへ上がっていた。木々のない広い頂上「こんなところにテントを張りたいね」という言葉も飛び出すが、ユートピアであれば当然な話であった。目指すツゲ山が見え尾根を下るが、下れども下れども標高は落ちるばかりである。ふと見るとツゲ山との間の稜線が南側に見え、初めて間違えに気が付く。傷は浅いうちに…ということで、できる限り標高を落とさぬよう、慎重にトラバースを開始する。結局、二尾根ほど巻いたが、思ったよりは苦労なく稜線上へたどり着く。簡単な山域であり、好天にも恵まれたため、ほとんど地形図を見なかったことによる失敗であった。

ツゲ山は4年ぶりで、前回は痩せ尾根に苦労させられた。その展望の良さは知っていたが、近づくにつれ、稜線からの展望にはやはり期待が膨らむ。低山にも関わらず、木々の少なさか、位置の良さか、奥手稲山のそれよりは数段優れているような気がする。最後は木々のない急斜面を詰めてツゲ山山頂である。百松沢山・南峰、烏帽子岳、札幌岳、空沼岳、無意根山など主だった山々が見渡せる。中でも定天の眺めが素晴らしい。反対方向からは他のパーティも上がってくる。この山は残念なことに、冬山としては手頃であり素晴らしい山であるといった認識が世間に広まってしまったようである。

下山は夕日の沢へ向かって一直線に下ることにする。途中、積雪後であれば雪崩れそうな急斜面を下降、沢形から滝の左岸を巻いて夕日の沢へ出る。奥手稲小屋泊がメインの今回の山行、多少のルートの間違いはあったが、これもバリエーションの一つと考えれば、楽しさのみが際立った山行であった。 (2007.2.24〜25)

今回同行して頂いた ■熊ぷ〜さんの山行記へ  marboさんの山行記へ     ★地図がガイド…2002'ツゲ山山行記

【参考コースタイム】 2/24 夕日の沢出合・P 8:35 → 奥手稲小屋 11:35 → 奥手稲山頂上  12:50、〃発 13:20 →  奥手稲小屋 13:40 

2/25 奥手稲小屋 7:20 →  ツゲ山頂上 9:20 → 夕日の沢出合・P 10:50  

メンバー熊ぷ〜さん&エル嬢、marboさん、saijyo、チロロ2チロロ3(旧姓naga)

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