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      (779m)

珊内の街から見る鉞山

1/25000地形図内」

珊内川林道は崩壊のため、途中のゲートが閉められている
ルートはすべて藪漕ぎ(Fujimotoさん提供)

積丹半島の西部には1000mには満たないが、小粒の山椒と言える尖峰が所々に見られる。その代表格が鉞山で、読んで字のごとく、鉞の刃の上でも歩いているかのような痩せ尾根が続いている。4年前にこのピークを踏んでみようと、本峰東側へ入り込む通称「湯ノ沢」から頂上を目指したが、予想外の沢相の変化に簡単に持ち時間を使い果たしてしまう。この時は沢の源頭付近にて敢え無く敗退、必ずやリベンジを…と思い続けていた山である。この時よりも日照時間が短い今回、湯ノ沢ルートは最初からあきらめ、頂上へ続く稜線の末端から藪を漕いでの登頂を目指す。アプローチは前回とは違い、珊内川の林道が地形図に記載されていることもあり、林道を車で進むことにする。ただし、林道は途中で崩壊しており、途中のゲートからは歩かなければならない。とはいえ、水量の多い珊内川を行くよりは遥かに楽で、湯ノ沢出合付近までは容易に到着する。参加者は当初10数名の予定であったが、最終的には4年前のメンバーの一人であるFujimoto@低山大好きさんだけとなる。前回のメンバーもその後、約半数が既にこのピークを踏んでいるようだ。

林道を下ると4年ぶりの珊内川である。前日の雨により増水気味で流れも速い感じがする。流心では股下くらいの渡渉となり、お互い捕まりながら何とか渡りきる。沢からの取り付きは急斜面で、潅木を頼りに登りきると、広い斜面の密度の薄い藪漕ぎとなる。標高を上げるごとに藪の密度が濃くなり、コンタ410mコブ手前ではやはり根曲がり竹が現れる。コブを越えると再び密度の薄い藪となりほっと一息といったところだ。その後しばらくは歩きやすい。再び登りに差し掛かる頃からか、ツルが行く手を阻むようになる。見た感じ、根曲がりよりはかなり良さそうだが、実際は根曲がりの比ではなかった。首やザック、さらには手足などにも絡み付き、すぐにがんじがらめの立ち往生の状態となる。ツルが出てくると、我々はよく葡萄のツルと呼んでいるが、実際は別ものであることが多い。しかし、ここのツルではいきなり本物の熟した葡萄がかき分けた藪の直ぐ先に現れ、我々はただ々笑うしかなかった。まるで、ご苦労さん、褒美に葡萄でも食べていってくれと言わんばかりの絶妙のタイミングである。いつもであれば酸っぱくてつい遠慮してしまうヤマブドウも、さすがに疲労のためか、実に甘く美味しく感じられるから不思議なものだ。“藪の幸”にしばし疲れを忘れ、さらなる藪漕ぎの再開である。

鉞山頂上にて
鉞山頂上にて 頂上からはガニマナコも目前に望める
珊内川は増水気味(Fujimotoさん提供)

コンタ660m付近からは両側の空が低くなり、稜線が痩せてきているように感じられる。ふと、藪の隙間を見ると、足元がスッパリと垂直に切れ落ちており、木々をつかむ手にもつい力が入ってしまう。感覚的には頂上は近いと確信できるが、行けども行けども次々に高みが現れ、その度にがっかりさせられる。痩せ尾根上には樹木があり、普通であれば左右に避けるところだが、ここでは極端に稜線が狭いために避けられず、枝々の中をすり抜けるより術がない。頂上直下の稜線はさらに狭く、途中、潅木が根こそぎ崩れたところがあり、崩壊して動く潅木の根っこに騙しだまし捕まりながら素早く通過する。足元自体が崩壊しそうで、事故とはこんなところで起こるのだろうといった予感とも思える恐怖心を感じる。

目前の高みは紛れもなく頂上だ。今度こそは間違いない。大きな三角形の岩が一つ、4年の間、ずっと気持ちのどこかに敗北感を感じさせられ続けた鉞山頂点に到着である。GPSを取り出して確かめたところ、頂上は16m先となっている。確かにコブとなっているが、明らかにこちらよりは低そうだ。しかし、後で後悔するのは敵わないので、ついでにこちらも踏むことにする。さらなる藪漕ぎ20m前後、GPSの誤差であったと確認する。大天狗岳や余別岳、珊内岳など、雄大な眺望を欲しいまま眼中へ収める。中でも、珊内の街とその背後にきらめく日本海が何とも美しく、実に印象的だ。この山は浜益・黄金山に似ている感じがあるが、頂上の薄さのみをいえば、こちらに分がありそうだ。

頂上から望む大天狗岳

下りの藪漕ぎは難しい。尾根筋は幾度となく枝分かれしており、斜面の微妙な変化を読むのは至難の業といえる。特にここの両側に入り込む沢は変化に富んでいるので、安易に下ってしまうと余計な時間を費やしてしまいそうだ。後続が先頭に細かなルート修正の指示を出しながら慎重に下って行くが、即席パーティとは思えぬなかなかのチームワークである。Fujimoto@低山大好きさんは4年前と比べ、ずいぶん逞しくなった感じで、彼女が先頭となると追いかける方は容易ではない。コンタ410mコブを越えたところで、少々油断してしまい、尾根筋を外すが、出合まで直線距離にして約300mのカジ山沢川の流れへ飛び出す。長い時間藪中にいたためか、水の冷たさが何時になく気持が良い。途中、増水のためか豪快な滝が一箇所、右岸から巻き倒木につかまりながら下降する。やはりこの付近の沢は簡単には終わらせてはくれないようだ。直ぐに出合となるが、水量が多いため、帰路で使う小沢の二股を越えるところまでは右岸をへつり、本流の渡渉を終えて無事山行の終了となる。

 藪漕ぎの最長記録更新とFujimoto@低山大好きさんは言っていたが、どうしてどうして、記録は今後もさらに更新されそうだ。ともあれ、4年掛かりの鉞山敗者復活戦は見事終了である。(2007.9.22)

4年前の湯ノ沢からの記録へ

【参考コースタイム】 珊内川林道ゲート 7:10 → 尾根取付き 7:40 → 鉞山頂上 12:05 、〃発 12:50 → 尾根取付き 16:30 → 珊内川林道ゲート 16:40 (上り4時間55分、下り3時間50分)

  【メンバーFujimoto@低山大好きさん、saijyo

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