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    分監山(459.7m)

平凡な里山である分監山

1/25000地形図「月 形」

崩壊地点の手前に車を停める
籔に覆われた沢形は見ているだけでも疲れる
笹薮漕ぎの背後には中空知の平野が広がっていた

月形町といえば明治時代・初期に設けられた樺戸・集治監(現在で言えば刑務所)で有名だが、当時の集治監に因んだ地名が今も町内各地に残っている。まずは町名の「月形」であるが、イメージ的には傍を流れる石狩川の三日月湖を連想させる。ところが、意外にもこの名の出所は人名だそうで、初代の典獄(監獄長)となった筑前出身の月形潔(つきがた きよし)の功績を称えて命名されたとのこと。分監山は「樺戸監獄札比内分監」がこの地にあったため、その名がそのまま山名となって残ったようだ。さらに、分監山へのアプローチとなった中小屋川は道路を切り開く際の受刑者たちの収容小屋がそのまま地名となったようである。もともと何もなかったところに、当時の明治新政府が監獄を作ったことによって切り開かれた土地であり、そんな経緯も当然といえば当然といえるだろう。

単なる里山に過ぎない分監山も一時期話題となったことがある。昭和47年の531日、紋別空港を離陸した横浜航空のセスナ機402A・そよかぜ号が行方不明となり、この分監山でバラバラになった機体を発見、搭乗者の10名全員が死亡したという航空機事故である。当時としては大きな事故で、号外まで出たそうだ。現在では何もなかったようにひっそりとしている分監山であるが、人間の開拓の歴史や悲劇をずっと見つめてきた山でもある。

私がこの山に出合ったのは昨年この山の奥に位置する三角山へ登った時だった。Web上で検索してみたところ3月〜4月の記録が数件ヒットして、見ると低山のわりには眺望が良く、中空知の平野の広がりや樺戸山地の山々の眺めが特に見事でついつい気になっていた。積雪期のルートとしては豊ヶ丘貯水池付近へと延びる尾根末端付近から登るのが一般的のようであるが、雪のない時期であれば藪漕ぎはできるだけ短い方がよい。三角山へのアプローチとなった中小屋川沿いの林道を使って、頂上への最短地点から枝尾根へと取り付いてみることにした。昨年は半分くらいまでは車を乗り入れることができたこの林道だが、現在は入口からすでに道路が流されしまい通行は不可能な状況となっていた。予定の取り付き予定地点まではいくらもないので歩くことにするが、今後はさらに奥の三角山へのアプローチとして使う場合、消えた林道跡を上手につなぎながら入口から歩いて行かなければならない。

残っている道路を利用して予定の取り付き地点へと向かう。そもそもこの道路は林道というよりは砂防ダム建設のための取り付け道路で、一番新しい工事が平成10年となっている。ダム工事が全て終了した現在となってはこの道路の修復の必要はなくなったのかもしれない。道路跡ののり面を登ると冬枯れした樹林帯となるが、樹林帯のわりには意外と明るい感じである。頂上から真東に下る沢形は入口付近が判然としないため見つけられず、とりあえずは左手の尾根上へと向かう。途中、沢形へ入るチャンスはあったが、こんな傾斜のきつい沢筋では最後に行き詰まることも考えられる。藪はあっても尾根筋へ取り付いた方がより確実のようだ。とは言っても、ずり落ちそうな急斜面、靴底のスパイクをフルに効かせ、微妙ではあるが何とか尾根上へと抜けることができた。

尾根上の藪は予想していたよりは薄く、何となくほっとさせられる。冬迫る晩秋のこの時期にはこの時期特有の登山スタイルがあるということだろう。盛夏であれば鬱蒼とした夏草を掻き分けなければならず、積雪期であれば雪崩や雪庇に神経を尖らせなければならない。この時期の特徴としては多少急な斜面であっても草木の生える斜面であればわりと気楽にルートとして使えるということだろう。尾根上の傾斜は登るにはちょうど快適な度合いで、潅木や笹につかまりながらぐんぐん標高を上げることができる。

三等三角点「分監山」と麦とホップ 周りはご覧の通りの籔ばかり

途中の笹斜面で視界が開け、振り返ると積雪期の記録で見た中空知の平野が大きく広がっていた。そもそもこの山は小さな山で頂上もそう遠くはないはず。頂上直下といわれているセスナ機の墜落地点はいったいどのあたりだったのだろう?心霊スポットといわれている今夏のヌモトル山行の時は冷静を装いながらも、内心はびくびくしていたのが正直なところだった。心霊現象など全く信じていないが、見えないものに対しては何となく薄気味悪さを感じるのは事実である。前方に小高い笹薮に覆われたコブが見えてくる。しかしそれは支尾根のわずかな凸地形で、そのコブも真横を通り過ぎ、頂上へと笹薮の斜面はさらに続いていた。行く手を阻むのはツル植物で、笹薮に織り込まれたように絡まっていてはどうにもならない。一つ一つ丁寧に振り解くように突破、最後は背丈を越える根曲がり竹の藪となってやっと平らになる。

ひょっとして頂上はこの藪の中かと思いつつ前進していると、先を行くチロロ2さんから「三角点があった!」との報。案の定、視界ゼロの背丈を超える藪中での頂上到着となった。Web上で見た素晴らしい眺望を期待していただけに、期待はあえなく裏切られた格好だ。頂上なら確か標識があったはずだと言ったところ、目ざといチロロ2さんは頭上の樹木34mの高さに取り付けられた「分監山」とかかれた頂上標識を発見する。確かにあの標識くらいの目線で見ればここより展望が良いのは当たり前である。眺望を期待するのであれば、やはり積雪期に登るのが正解だったようである。ただし、積雪期には決して見ることのできないこの三角点は、籔を掻き分け登ってきた我々へのご褒美といえるだろう。

結果的に藪の中の頂上ではあったが、これが里山本来の姿であり分監山である。当りもあればはずれもある、薮山登山の持つ解答なき楽しさはここにあるのだろう。(2010.11.6)

参考コースタイ 林道入口P 10:40 → 分監山頂上 12:40、〃 発 12:55 林道入口P 14:15  ( 登り 2時間、下り 1時間20分  )

メンバーsaijyo、チロロ2

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