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     三角山(707.9m)

札比内の町と樺戸・三角山

    1/25000地形図「ピンネシリ」「月 形」

途切れがちな作業道だが、十分な駐車スペースを見つける

最終砂防ダムのプレートには平成10年と記されている
砂礫の中に水流があるといった感じ

 道内では、丸山と並んで多い山名が三角山である。樺戸の三角山は山域の中では標高が低く、札幌方向からは隈根尻山と重なって見えづらいこともあり、登山者の間でもあまりよく知られていない。だが、国道275号線を北上する時には月形を過ぎたあたりからは左手にしっかりと三角形の山容を目にすることができ、山好きであればつい気になる一山である。この山は意外に奥深く、アプローチが難しい。

途中から広がった中空知の平野

当初は月形ダムからのアプローチで考えるが、林道入口は施錠されているかもしれないとのこと。最新の地形図を見たところ、古い地形図では記されていなかった中小屋川沿いの作業道が載っており、アプローチとしては短いこちらの方が断然有利である。ところが、この作業道に入って驚いたのが、その荒れようである。新しいと思った作業道であるが、イタドリが両側から被り、川によって寸断された所も何ヶ所か、既に廃道といった様相である。結局、車は終点から約2km手前まで進むのがやっとであった。そこからは荒れた作業道を徒歩で進む。道路上には雑草が生い茂り、その中を獣道?が点々と続いている。終点の砂防ダムのプレートを見ると平成10年竣工とあり、わずか11年前のことである。比較的メンテナンスが行き届いている林道とは違って、砂防ダムの場合は一度作ってしまえば後はほったらかしといった状況である。

 最終砂防ダムの少し手前からの入渓となる。沢中は砂礫の中を水が流れているといった状態で、作業道よりもむしろ歩きやすい感じさえする。この山を踏んだことがあるキンチャヤマイグチさんの話によると、高巻きが嫌らしい滝が一ヶ所あったとのこと。この話を聞いて、だれも考えないような奥まで進んでから小沢へ入る予定でいたが、結局我慢できずにコンタ320m二股から直接頂上へ突き上げる小沢へと入ってしまう。小沢は何もない様子で細々と続いているが、途中コンタ400m付近でおっ…!と驚く滝が現われる。近づいて見ると実質10mくらいの落差であるが何とも嫌らしい。スラブ状に立っていて取り付く手掛かりは全くなさそうだ。左岸のバンド状の草付き斜面をトラバースすることで乗り越えることができそうだが、それも登ってみなければ判らない。取り付きは潅木を頼りに、途中からは脆い草付き斜面を騙しだまし登って、バンド状へと上がる。落ち口付近の木々に掴まれば成功であるが、そこまでの数メートルには全く手掛かりはなく傾斜のある斜面のみである。ステップを刻みながら一歩一歩進んで行く以外に方法はなさそうだ。岩を掴んでも脆すぎてすぐに崩れてしまう。息を呑むような数分間、こんな場面では悪いことを考えては負けとなる。ここをかなり慎重に通過、何とか木に掴まることは出来たが、落ち口へ廻り込むところがさらに微妙であった。ひょっとしたらこれがキンチャヤマイグチさんの言っていた“嫌らしい滝”だったのかもしれない。

位置を確認するKo玉さん 三等三角点「三角山」は健在

 この滝を越えた後には何も出てこないと予測していたが、その後も枯れ滝が何ヶ所か現われる。チムニー登りの滝、ショルダー登りの滝など、巻こうと思えば巻くことも可能だが、登った方が楽しいことは言うまでもない。沢形は残りの標高差が150mを切っても続き、やがて草付き斜面へと消える。一休みして振り返ると中空知付近の平野が大きく広がっている。水田は緑色から黄色へと変わりつつあり、既に秋の気配である。対峙する夕張山地の山々の中では、天を突く夕張マッターホルンの姿がやはり特徴的だ。イタドリを始めとする夏草も枯れかかってはいるが、騙しだまし掴むぶんにはそれなりの加重にも耐えうるようである。結局、最後は潅木の繁る小尾根へと逃げ、一登りで頂上となる。さすがに狭い頂上では数メートル手前から三角点が見えている。

 ここの頂上は位置的なものなのか眺望はかなり優れているが、不満をいえば木々が視界を邪魔していることと、山座同定する山々が遠すぎるところである。何か、カタログでも見ながらそれぞれの山々を指呼している感覚でしか望めないところがもの足りない。魅力ある眺望とは山々が迫力ある姿で、また、違った角度、意外な姿で目前に現われるところにある。数え挙げれば限がないほどの山々は見えるが、どれも車窓から見る姿とはあまり違いはない。その中で気を引いたのは、遠く札幌市街が見え、その後に私の住む地域である藻岩山が見えたことである。未知の山からではあったが、私の生活圏が意外と近くに見えることには妙な新鮮さを感じた。

 登ってきた滝は懸垂するにも支点の確保が難しく、沢を下らず尾根筋を藪漕ぎにて忠実に下ることにする。油断をしようものなら知らず知らずのうちに沢形へ引っ張られるため、ここは滝を避けるべく慎重の上にも慎重を期しての下降である。その成果か、最後はピンポイントで小沢の出合へと飛び出す。

 700mを少し超える程度の三角山であるが、あの有名な札的沢とは同じ山域。やはり地形的に似ているのか、それなりの滝も現われた。小沢といえども油断はならないと感じさせられたが、同時にコンパクトではあるが変化のある沢登りを楽しむことのできる山域であると再認識させられた。(2009.8.30)

 【参考コースタイム】約2km手前の作業道P 8:45 三角山頂上 11:35、〃発 11:55 約2km手前の作業道P 13:50 (登り 2時間50分、下り 1時間55分)

メンバー】Ko玉氏、saijyo

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