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   銭函・天狗山(536.7m)

札樽国道からは特徴的な姿を見せる銭函・天狗山

    1/25000地形図「銭 函」

迫力ある姿で現われる銭函天狗山頂上部
迫力ある姿で現われる銭函天狗山頂上部
頂上標識と手稲山
入山口には駐車スペースも用意されている
良い雰囲気の中に建つ銭天山荘
犬の足跡が登山道に点々と続く

“天狗”の名が付く道内の山の中で認知度ベスト3といえば、まず定山渓の天狗岳、そして小樽の天狗山は合格点だろう。これは道都・札幌と、かつて経済や文化の中心であった小樽に君臨する山であり、道央圏の人口密度から考えても当然と思われる。もうひとつとなると私は銭函の天狗山を挙げたい。“銭天”の愛称で呼ばれ、登山者は間違いなしに多く、札幌と小樽の行き来の際には必ず視界に飛び込んでくる特徴的な山である。このサイトを開設して以来、道内のほとんど人が入らない“天狗”も2〜3山登ったが、いつでも登れるこの銭天に入るのは今回が初めてである。いかにもハイキングといったイメージが先行し、将来的に体力がなくなってからでも十分と思っていたからである。今回は300山目というキリの良い数字が見えてきたため、できれば年内にそれを達成させようと手軽な銭天を目指すことにしてみた。もちろん、一般登山道からである。

登山口付近は私有地であるが、駐車場が用意されている。登山者と地権者の間でトラブルとなることが多い札幌近郊の山にあって、ここの地権者はなぜか好意的である。いずれにしても有難い話だ。歩いてすぐに砂防ダムが現われる。20年以上前に所属していた山岳会の新人歓迎会で銭天山荘(札幌山岳会所有)を使わせてもらったことがあるが、この時にはこんな整備された園地などはなかった。砂防ダムのためとはいえ、ずいぶん整備されたものである。急斜面を登って広い樹林帯の中の一本道を進んで行くと銭天山荘が見えてくる。冬目前のこの時期、すでに木々の葉が落ちて見通しが良くなっていることもあり、明るい雰囲気の中に建つこの山荘もなかなか洒落た感じに見える。先行者は犬を連れているようで、犬の足跡が点々と続いている。雪面の記録は、見ている側に様々な想像力を呼び寄せる。

小沢の右岸に移り、やがて沢中を進んで行くと足跡が消える。そのまま進んでも良いが、明らかに登山道を外してしまったようだ。雪が薄っすら積もったこんな時期であれば、後続がいれば間違いなく我々の足跡をたどることだろう。ここは正規の登山道へ戻った方が良さそうである。見回したところ右岸側の尾根上へと伸びる登山道らしき刈り分けが確認でき、すぐにそちらへと移動する。直線状の一本道は稜線まで一息である。再び表れた人間と犬の足跡を追いかけながら稜線上へと上がる。チサンカントリークラブゴルフ場が大きく開け、このゴルフ場の縁でも歩いているような感じとなる。20年ほど前であっただろうか、山域縦走の折、奥手稲山からの下山ではこのゴルフ場が山行のゴールとなった。この時は、込み入った長い藪尾根からいきなり開放された嬉しさのためか、ゴルフ場をスキーゲレンデのように思いっきり滑った記憶がある。

石狩湾と手稲区方面の眺望
石狩湾と手稲区方面の眺望 漫画チックなこの岩が銭天頂上

尾根通しの一本道は徐々に傾斜が増し、鎖場ならぬロープ場も現れる。標高400mを越えると視界が開け、日本海が背後に広がり、前方には左側がスッパリ切れた頂上岩峰が迫力ある姿で現れる。なぜか人間の足跡が数日前のものと思えるのに対して、犬の足跡は今朝のもののようだ。肉球から想像するに中型犬のようである。時々遊んでいるように乱れて消えてしまうが、しばらく進むと再び表れ一路頂上へと向っている。ひょっとして、足跡の主は八剣山のシロのように、銭天登山を毎日のように謳歌しているのかもしれない。登山道は右側の雑木林の斜面から回り込むように頂上へと向うが、足跡は頂上を交わすように樹林帯の中へと消えてしまった。足跡は一方向のみだったので、ひょっとして頂上で待っているのでは…とつい期待していたが、その期待は儚く裏切られたようである。頂上稜線は右側がスッパリと切れ落ち、ここでこけようものならそれこそ人生はそこでストップしてしまう。崖っぷちにも踏跡はあるが、ここは左側がよい。

少し進むと私製のものか、古い頂上標識のある岩場に到着する。展望だけで言えば、石狩湾の湾曲が良く見える少し手前の方が良いようだ。この山は手稲山から派生する尾根の一突起といった認識であったが、どうしてどうして、手稲山や奥手稲山、春香山などに囲まれ、立派にひとつの山として独立している感じである。しかも、標高が低い分だけ主だった山々が高く大きく見え、山域内の絶好の展望台となっている。丁度よい休憩場所があったので少し崖側へ降りて振り返る。おっ!漫画チックな小犬の彫像。頂上標識のある大岩が、見る角度によってはそう見えるから面白い。登山中ずっと追ってきたこの山の主のせいか、頭の中が完全に犬モードとなっていたのでそう見えたのだろう。何はともあれ食わずにとって置いた銭函天狗山、予想以上の名峰であった。(2009.11.23)

【参考コースタイム】登山道入口 8:30 銭函天狗山頂上9:55 、〃発 10:30 登山道入口 11:25 (登り1時間25分、下り55分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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