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      夕暎(846.4m)

1/25000地形図ノ下」「奥芦別」

林道の雪割り作業も登山技術?
雪割り作業で進むが、さすがに2kmほど入った地点でリタイア
沿道にはエゾエンゴサクが見られる

 夕暎山の語源についての正式なところは判らないが、読んで字のごとしで、夕日に映えて見える山であろうと思われる。頂上から芦別市街を眺め、途中に遮る山が無いこと、芦別側へ向って樹木の少ない広い尾根となっていて、特に積雪期であれば夕日に映える様子が容易に想像できることなど、命名した場所はおそらく芦別であろうと感じた。いずれ機会があれば現地へ出かけて行ってじっくり確認してみたいところであるが、芦別から見ての「夕映山」であったことはほぼ間違いないところである。

 雨天予報の日曜日、雨の確率は50%である。道内700m以上の全山登頂まで残り二桁としているKo玉氏が札幌へ帰ってくるとのことで、一山でも減らすための計画として、林道が頂上近くまで入っている未踏の夕山に白羽の矢を立てる。林道歩きであれば単に距離との勝負で、多少ずぶ濡れになったとしてもたかが知れている。道道135号美唄・富良野線の大滝トンネルを過ぎて少し走ると、アプローチとなる近藤沢川林道の入口である。この林道は入口付近から左側がスッパリと切れ落ちていて、林道走行に慣れない向きは止めておいた方が無難のようだ。特にこの時期は冬期間の礫岩が散らばっていて、少々のことでもタイヤを破損しかねない。

頂上北西側には雪渓が残っている 臭いで発見?夕暎山の三角点
頂上からは幾重にも山並みが 車まであと少し・・・左手には

 林道の途中、雪渓を削りながら何とか2qほど進むが、その作業は容易ではない。ほんの少しの雪渓のつながりと思って汗を流しても、数百mも進まぬうちに次のものが現れてくる。同じ労力を払うくらいなら、数百mを歩く方が遥かに楽であり、何よりも健康的である。我々は二箇所ほど切り開くが、三箇所目で不可能と悟り雪渓削りをあきらめる。三箇所目の次にはすぐに四箇所目も続いており、こうなってしまっては重機でも持ってこなければどうにもならない。雨模様との予報ではあったが、日も差し始め、スタートのコンディションとしてはまずまずである。車を止めた地点は二股となっていて、林道は右股へ入って行き「ゆうばえ橋」手前で近藤沢と別れて不惑沢林道へと入る。“まどわずのさわ”とはどんな経緯で付いた名称なのか、ついつい考えさせられるが、こうして雨天覚悟で夕山を目指している我々にとっては何ともしっくりくる名称である。

 この林道はほとんど下ることなく、ぐんぐんと標高を上げて行く。夕暎山の標高は846mであるが、その標高のほとんどをこの林道で稼ぐことになる。ここまで入ってくる山菜目当ての人達はほとんどいないのか、アイヌネギがいたるところに見られる。やがて沢形地形が狭まり、林道は右岸側への折り返しとなる。さすがに融雪期で、道路の水溜りから落ちている水でさえ、十数メートルの見事な滝となっている。この時期ならではの壮大な光景といえる。ここで林道と分れ、沢形へとそのまま入って行く。水流は跨ぐほどしかなく、渇水期であれば当に水は切れていることだろう。100mも進むと最初の二股となるが、地形図では見られない沢が一本入っていて、どうにも地形図とは合致しない。結果的には間違っていなかったため、地形図では表現されていない程度の沢形との結論になるが、載っている沢が意外に小さくて見逃してしまったり、今回のようにあるはずのない沢が現れたりと、読図の面白さというか醍醐味といったところであろうか。

 沢形の水流は少なく、プラブーツでも十分だ。途中、集材路を一本通過、これを使用して少しでも標高を稼ごうと思ったのが失敗であった。Ko玉氏の指摘通り、深追いせずに根曲がり竹の藪へは突入したが、結果的には300mほどずれた地点で稜線上へ出てしまう。頂上が近いことは判っているが、見落しでもしたら再びこの山を訪れなければならなくなり、ここは真剣勝負である。薮の向こうに南北に高みが見えるが、北側の高みの方が明らかに大きく、地形図とも合致し、間違いなく夕暎山頂上であると確信する。こうなれば、三角点の臭いが判るといわれるKo玉氏、ゆっくり、ゆっくりと言いつつも、根曲がり竹の濃い藪の中をヒグマのように駆け出して行く。最後は頂上付近の北西側に残る雪渓から回り込み、そのまま薮に再突入、三角点へまっしぐらであった。深い薮の中からこんなに簡単に三角点が見つかるものであろうか?…長い間、同様の山行を続けてきた私であっても、三角点の臭いとでも結論付けなければ説明が付かないほどの素早さであった。

アイヌネギと冷たいビール

 笹薮に囲まれた三角点からは何も見えないが、北西側に残った雪渓からの眺望は素晴らしい。折からの小雨は頂上では小雪となり、遠くの山々が霞んでいて、薄っすら何層にも重なって見える。その山並みが日本画の巨匠・東山魁夷が描く代表作「山雲」のような幻想的な世界を作り出している。その中にはかつて登った、金剛山、烏帽子岳の山影、また、野花南ダム湖と特徴的な丸山、芦別の市街など、全てがマッチしている。恒例の証拠写真「Ko玉氏と三角点とのツーショット」を撮影、頂上ビールで祝杯後、下りの薮漕ぎを開始する。方向を見定めながらの薮漕ぎ下降であるが、すぐに沢形へと戻り、最後は登りでの腐心がまるで嘘だったかのように、すんなりと不惑沢林道へと飛び出した。(2008.4.27)

【アイヌネギ】

 下りの林道沿線でアイヌネギ採りを楽しむ。言わずと知れた、この時期を代表する山菜である。近畿地方以北の高山と北海道に自生するそうで、昔は山伏が食したことから行者ニンニクとも呼ばれるようになった。山菜に目が無いチロロ2さんの話では、葉っぱの開き始めが食べ時で、下山後に私が持っていったものは葉っぱが開いた二級品とのことであった。御浸し、ジンギスカン、餃子と、食べ方にはおよそこと欠かないが、この旬の味を少しでも長く楽しむのであれば、やはり醤油付けが良い。醤油にそのままという説やめんつゆが良いとの話も聞くが、共通するのは醤油にみりん、隠し味には酢と砂糖を少々といったところである。徐々に気温が上がってくるこれからの季節、輪切りの唐辛子を乗せた醤油付けのアイヌネギは冷たいビールには格好の一品といえる。

【参考コースタイム】 車止め P 8:30 入渓地点 9:15 → 夕暎山頂上 10:10、〃発 10:25 入渓地点 10:50 途中アイヌネギを採集 車止め P 11:50  (登山時間;登り1時間40分、下り1時間25分)

  【メンバー】Ko玉氏、saijyo

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