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 横山中岳(724m)

横山中岳を中心とする山塊

1/25000地形図ぺラリ」「三 石」

横山中岳頂上に到着
牧場入り口が登山口で、有刺鉄線をくぐってスタートする
人なつっこい二頭の馬のお出迎え
南横山への途中、ニリンソウが群生している

南横山への途中、ニリンソウが群生している

横山中岳へは深い霧の中

  横山中岳を中心とする山塊は日高山脈の西部に位置し、700m前後の山々が連なる日高山脈の良き展望台である。横山中岳は「夏山ガイドC日高の山々」(北海道新聞社刊)で取り上げられて以来、一躍夏山登山の定番となった山で、Web上でも数多く紹介されている。山塊は北横山、横山中岳、南横山の三山からなり、北横山と南横山には三角点がある。中間に位置する横山中岳は真ん中であるためにこの山名となったようであるが、三角点がなくても山容の立派さで他の二山に勝っていて、山塊の盟主といった風格を感じさせる。登山道は地元・旧三石町や地元山岳会の尽力により、1985年に開削された。今回は横山中岳へ登山道を使って登り、最初に北横山へ、次に南横山への藪漕ぎにての往復が目的である。

 ガイドブックを片手に牧場入口の有刺鉄線をくぐる。登山道へのアプローチとして、牧場内への自由な立入りは珍しく、つい首をかしげてしまうが、後で調べたところによると牧場は町営とのことで、この山に対する町の期待と力の入れようの表れということであろう。何れにせよ、我々一般登山者にとっては大変ありがたいことだ。坂を上って牧草地へ出ると、二頭の馬のお出迎えである。人なつっこい馬で、歩いているとザックに鼻をくっ付け、臭い息をかけてくるからかなわない。何度か追い払おうとするが、一向におかまいなしといった雰囲気である。私は馬などに全く興味は感じないが、ここまでなつかれてしまうと気持が何となく伝わり、つい意思が通じてしまうようにさえ感じられる。馬というのは不思議な生き物だ。

 有刺鉄線で彼らと別れ、綺麗に刈り分けられた登山道を進む。直ぐに風倒木地帯となり、大きく迂回して登山道へ戻る。ここからは急傾斜となり標高を上げて行く。極楽平と呼ばれる小ピークを過ぎ、さらに急な斜面に付けられた登山道をたどると横山中岳・頂上となる。朝方からの曇り模様の天候も、標高500m付近を過ぎた辺りからは日が照り始め、気が付くと眼下には雲海が広がっている。日高南部にはダニが多いと言われるが、ここも例外ではなさそうだ。地べたにゆっくり座って休む気にもなれず、次の目的地である直線距離で1.7km先の北横山へ向けてそそくさと出発する。

北横山は背丈の低いミヤコザサで覆われている オオサクラソウも随所に見られる

三等三角点「南横山」

横山中岳への三度目の登り

 稜線上には林班界を示す杭が要所々に埋められ、わりと明瞭な踏み跡も見られる。後半戦の南横山を考え、ここはかなりの急ぎ足で進む。途中、横山中岳頂上からは木々に邪魔され見ることのできなかった日高の主稜線が、場所によっては遮るものもなく見えるのが嬉しい。明瞭な踏み跡は獣道というばかりではなく、人間も少なからず踏み込んでいるようだ。高みを登ったり巻いたりで、結局、コンタ730mピーク(山域の最高地点)付近まで続いていた。このピークを過ぎると踏み跡は消える。ただし、背の低いミヤコ笹が広がっているため、薮漕ぎというほどのものではない。この区間、急いだせいもあるが、アップダウンが比較的少ない地形であり、30分ほどで北横山に到着する。頂上は冬枯れしたようなミヤコザサの中で、雲海がなければ海岸線まで見渡すことができるだろう。

 往復1時間25分で北横山を終え、次の南横山へ向う。こちらは一転様相が変わり、いきなり70mの標高差を下らなければならず、帰路を考えると少々うんざりさせられる。下りきったコル付近はお花畑となっていて、ニリンソウやオオサクラソウが咲き乱れている。ここから細い稜線が続くが、踏み跡は明瞭である。678m標高点を越えると南横山とのコルまではさらに下りが続く。南横山は丸みのある平らな山で、踏み跡はなく最後の登りは辛いものがある。頂上は一見、草原のようにも見えるが、近づいて行くと雑草が生い茂る荒地といった感じである。樹木に赤布が下がっていて、頂上到着となるが三角点が見つからない。10分ほど探し回り、結局、赤布から20mほど戻った藪の中に三角点を発見する。

さて、あとは横山中岳へ戻って下山するだけであるが、1.3km先のこの山が遥か遠くといった感じである。さすがに登ったり下ったりを繰り返していると、トータル的には相当な山を登った疲労感を覚える。678m標高点までは惰性で登る。最後の70mの登り返しは、これで最後と思うと余計に足が前へ出て行かない。冬枯れして背が低いミヤコザサでさえネマガリダケほどの強力なものに感じさせられる。一歩進んでは一休み、二歩進んでは一休み、数十メートル先の頂上が実に遠い。それでも何とか、この日3度目の横山中岳を登りきる。

下山時、重い足取りで登山道を下って行く。急斜面から風倒木地帯、そして緩い登山道へと…二頭の馬は出迎えてくれるのだろうか? なぜか期待しながら有刺鉄線をくぐるが、そこに広がっていたのは、青い空とただの広い草原のみであった。(2007.6.3)

【参考コースタイム】 横山中岳登山口 610 → 横山中岳頂上 7:55 → 北横山頂上 840 → 横山中岳頂上 9:25 → 南横山頂上 10:15 → 横山中岳頂上 1130  → 横山中岳登山口 1235 (登山時間 6時間25分)

  【メンバーKo玉氏、saijyo、チロロ2

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