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   横津岳(1167m) 〜 袴腰岳(1108.4m)

烏帽子岳から見た横津岳  最高峰にも関わらず平らな山だ

1/25000地形図 「横津岳」

ゲート前に車を置く  ばんだい号の墜落現場が近い
横津岳へは単なる道路歩きのみ
横津岳頂上はこんなところ
お互いの平和のためにも鈴は付けた方が良い
存在感たっぷりの秀峰・駒ケ岳

  私が横津岳の名を初めて耳にしたのは、やはり1971年の「ばんだい号の墜落事故」の時である。東亜国内航空のYS-11機で、丘珠空港から函館へと向かった際に十数キロはなれた横津岳山中に墜落、60名以上の犠牲者を出したというもの。なぜか、この時の惨状を雑誌か何かの写真で見ていて、樹木に引っかかった外国人副操縦士の遺体の様子が鮮烈に頭に残った。横津岳、さすがに恐ろしい山との印象を受けたが、その険しいイメージとは裏腹で、実際は大きな丘のような平らな山であった。この山はこの航空機事故以来、国土交通省のレーダーサイトが頂上に建てられ、その管理道路の沿道にはスキー場やゴルフ場なども作られて、地元ではかなり身近な山となったようだ。ちなみに、この山は八雲以南の最高峰である。山名由来はこの山から流れる川に津(川港)が出来たことを示す川名で、それが山に転じたとの和名説と、アイヌ語説(ユク・アツ・ヌプリ=シカがたくさんいる山)がある。

 昨年の夏に一度この山へやって来たが、あいにくの雷雨によって車から降りることさえ出来なかった。道南へ出かけることがあれば、何かのときには一度訪れようと思っていた。今回は大千軒岳登山の翌日も晴れ天気が予想されたため、職場には事前に休みをもらっていた。知内の道の駅で車中泊、茂辺地から函館・茂辺地道に入って七飯まで一気に入る。と、ここまでは順調だったが、進んで行くうちに横津道路の入口で通行止めとなっていた。ただし、ゲートはあるが二つのゲートは間隔があって通れるようにはなっている。だが、「臨時通行止め」の看板が出ていてはさすがに入れない。時間が早いので、山域を変えようと、しばし七飯岳方面へと走ったが、こちらは感染症予防のためか牧場内への立ち入りは「禁止」の看板がある。

烏帽子岳から望む袴腰岳  見かけよりは近い 烏帽子岳周辺から望む函館市街と庄司山

 つい面倒くさくなり、山を中止して札幌へ帰ろうかとも考えたが、同じ通行止めでもここ横津道路の場合は意味合いが違うのでは… との疑問も感じる。昨年の様子から言えば、舗装路面はかなり荒れた状態だった。舗装道路と考えてここを走れば、タイヤへのダメージも大きく、走り方次第ではパンクすることだって考えられる。ひょっとしたら、どこかのだれかがここでパンクでもさせ、管理者である七飯町にクレームでもつけたのでは… と想像した。であれば、自己責任という意味合いでの通行止めかもしれない。工事を実際にやっているのなら直ぐに中止するつもりでゲートを通過、一路横津岳へと向かう。一般の林道を考えれば間違いなく一級の道路と言える横津道路を実質の登山口となっているゲート前まで進む。工事どころか、途中には一台の車も入っていない。スキー場は10年程前に閉鎖、ゴルフ場は跡形も無い。バブル時代の開発が盛んだった時代は既に過去のものである。ゲート前からは前述のばんだい号事故の慰霊碑へと続く細い道路が入っているので、43年前の墜落現場はこの付近なのだろう。当時はこの現場の2km以内には道路がなかったそうで、一夜にして現場へのルートを切り開いたらしい。

 ゲートからは40分ほどで空監視レーダーや通信施設が林立する横津岳頂上となる。山に登ったと言うには少々おこがましさ感じる。向かいの木地挽山は頂上まで車で行っているのでカウントしなかったが、こちらは少しだが歩いたので1山とした。頂上展望は素晴らしく、特に駒ケ岳は角度的にもなかなかである。建物の際で強風を避けて小休止、すぐに次の目的地である袴腰山へと向かう。袴腰岳は和名で、袴の腰の襞のように、山肌が縦に切れて流れている山とのこと(日本山岳ルーツ大辞典・竹書房刊)  道路が作られたため、登山としての魅力がすっかりなくなった横津岳だが、袴腰岳へのルートが作られてからは人気が回復したらしい。袴腰岳方面への標識に沿って進んで行くうちに函館海洋気象台の背の高いレーダーで舗装道路が終わり、その名の通り「レーダー横登山口」となる。と言うことは、ここまでは登山の領域ではなかったということだ。横津岳、1山ゲット? …まぁ、いいか!

どこにでもあるミヤマスミレだが、実に美しい コキンバイも彩を添える
最終目的地の袴腰岳頂上にて記念に1枚 袴腰岳で見られたヒメイチゲ

  登山口からすぐのところに熊出没注意の看板が立っているが、昨年はまさかと思うところでヒグマと遭遇している。そんなこともあり、ザックの底から鈴を出すことにする。こうするのが、人、ヒグマ双方のために賢明ということだ。道南の山はどこにでもヒグマが出没しそうで侮れない。歩道はアップダウンのないまま前原湿原(第一湿原)を横切る。雪渓が消えて間もないこともあって、枯れ草が覆い、笹ばかりが目立っている。時期的なものか、案内板に見られる花々が1つも見られないのが残念なところだ。さらに平坦地を歩いて行くと烏帽子沼湿原(第二湿原)となるが、こちらは水溜り程度だが水面が見られる。雪渓が消えたばかりのこの時期ではあるが、湿原の豊かさをあまり感じることができないのが気になるところだ。どちらの湿原も乾燥化が進んでいるようで、笹の進入がかなり顕著なような気がする。第二湿原からは緩い登りで草地となっている烏帽子岳の頂上に到着する。烏帽子岳は山の登頂としては物足りなさを感じるが、展望ということでは申し分ない。函館市街や直ぐ近くの庄司山、当別丸山を始め北斗市周辺の山々など、ぐるり大パノラマとなっている。何たって、秀峰・駒ケ岳を背景に横津岳の様子が鳥瞰図のように見えるのが良い。

  目指す袴腰岳は笹の薄い緑と、未だ新芽が出ていない木々の淡い茶色に染まり、雪渓が消えたばかりの春山の装いである。笹原の中に続いている登山道を見る限りではそんなに距離感を感じない。烏帽子岳からの下りには雪渓が残り、コルへとサクサク下って行く。雪渓の末端は予想以上の急角度で下っているため、登山道へは回り込みながら降りることにする。袴腰岳へは思いのほか急な登りとなる。ヒメイチゲやミヤマスミレ、コキンバイなど、小さな花々が随所に見られ、この日の山行としてはやっと豊かな自然に触れることができたような気がする。また、本格的に登山といった気分にもなる。登り詰めたら頂上かと思っていたが、頂上は南東の端にあり、立派な一等三角点が埋められていた。残念なのは函館側の展望は素晴らしいが、逆側の展望がないことである。一等三角点の山ということで、大展望を期待していただけに残念だ。いつものように三角点に金麦を置いて記念写真を1枚。何はともあれ、この日のノルマは完了となる。

 下山途中で、単独の登山者とすれ違う。やはり彼も「臨時通行止め」の看板を通過してきたようである。しかも、車は帯広ナンバーだった。また、横津岳頂上付近では自衛隊が通信施設に車を乗り入れていた。彼らは公務なので許可されているのであろうが、やはりゲートをカギなしで通過している。この横津道路は自己責任で… という私の推測は間違ってはいないような気がする。例えタイヤをパンクさせても、管理者へ抗議するのはお門違い。自己責任、山ヤはもとより、これは社会人としての常識である。(2014.5.19)

参考コースタイム】  ゲート前 P 8:10 → 横津岳頂上 8:50 → 烏帽子岳 10:00 → 袴腰岳頂上 10:55、〃 発 11:15 → 烏帽子岳 11:50 → レーダー横登山口 12:35 → ゲート前 P 13:15 (登山時間 5時間5分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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