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      余市/天狗岳(872.3m)

頂上からみる余市・天狗岳(望遠使用)

八内岳から望む余市・天狗岳

/25000地形図  「豊浜・然別」

690ピークを過ぎると、行く手には余市天狗岳が姿を現す
余市天狗岳への最後の登り
除雪終点には、十分な駐車スペースがある
余市ダムは冬期に車で入ることは出来ない
豊丘林道は深雪に埋まっていた
頂上への登りへ入った頃から天気も回復する

 道内には“天狗”と名の付く山は24山もある。余市の天狗岳は積丹半島の基部に位置する1000mにも満たない山であるが、この山域の中では比較的高く奥深い山である。アプローチは北側の古平牧場と南側の余市ダムからが考えられるが、古平牧場側は状況が掴めなかったため、余市ダムからのルートで計画することにする。1/25000地形図「豊浜」は平成13年部分修正測量だが、「然別」は現在のところ昭和61年が修正の最後となっていて、「豊浜」に載っている林道が「然別」には載っていない。林道の起点が判らず、現地に着いてから地形を見て考えることにする。余市市街から豊丘町へ向う道道228号線を進み、余市ダムの手前約1kmの除雪終点に車を置く。 春先であれば余市ダムの管理事務所まで除雪されるそうである。

管理事務所から直ぐのところに「豊丘林道」の入口を見つける。天狗岳方向へ向っているようであり、地形図上の林道にほぼ間違いないと思われる。この林道は途中で急傾斜の斜面を横切るところがあり、降雪後であれば雪崩への注意が必要である。予定では林道を出来るだけ利用して沢沿いに進み、853m標高点へ突上げる尾根に取付くつもりでいたが、そのまま進むと、途中から沢を離れて高度を上げてしまうため、林道を離れることにする。

林道を離れて約20分進んだ渡渉地点で行き詰まる。このところの多量の降雪でスノーブリッヂは十分に発達しているものと予測していたが、積雪量が多くても短時間ではとても人が渡れるほどの安定した状態にはならないようである。時計は既に10時を廻っており、13時を限界と考えた場合に登頂までに使える時間は約3時間である。積雪状態も考えると深雪をラッセルしての登頂は時間的にかなり厳しく感じられる。 何度も渡渉点を探すが、どこもあと一歩のところで無理があり、結局山行を断念せざるを得ないとの結論になる。

次回があると自分に言い聞かせ引き返す途中、往路の林道との合流点付近で、スノーモビルの音が聞こえてくる。ラッセルしてきた林道上には既に何台ものスノーモビルが止まっている。彼らの話では硬雪になる春先であればスノーモビルで天狗岳へ登ることも可能であるが、今日のような深雪では無理とのことである。

彼らに続いて、全く予想もしなかった天狗岳を目指す登山パーティが現れる。S山岳会のYさんと山岳ガイドのSさんとそのお客さんの3人である。「暗くなるかもしれないが、一緒に登りませんか」との、いかにも山慣れした感じのYさんの誘いに、次回のための林道偵察を考えていたため、二つ返事で乗ることにする。進む方向は計画段階で考えていた尾根ルートであるが、距離的にも長く、頂上直下が急斜面となっていることもあって、前述の沢詰めルートへ変更していた。時間的にはかなり厳しいが、人数が増えればラッセルの速度も当然上がってくるはずである。

林道上はスノーモビルが先導する形となり、しばらくはラッセルもなく楽に進むことができる。林道分岐でスノーモビルのトレースと別れるが、屈強なSさんとYさんはその後もスピードを落とすことなく、ぐんぐん進んで行く。このペースであれば何となくピークに届くような気もしてくる。アップダウンをものともせず、コンタ690mの稜線上のピークまで一気に上がってしまうのだから凄い。やはりこの時期は多人数によるラッセルの成果がものをいうことを実感させられる。登頂予定の時間を尋ねたところ、14時とのことであり、日没の時間を考えるとぎりぎりの行動計画である。

青空が顔を出し、樹氷とのコントラストが美しい 奥のコブが余市天狗岳の頂上

スキー登山での下降は登り時間の半分以下であることは判っているが、 “冬山の常識”でこの山行を考えた場合、余裕のない時間設定ではとてもそのまま計画することは出来ない。しかし、メンバーの力量や気象条件、地形的条件が揃っている場合、これらの条件をうまく組み合わせることにより、多少日没ぎりぎりの時間設定であっても計画することは可能であり、こんな山行があっても良いような気もする。

 690mピークで90°左にルートを取るが、Sさんの話ではルート中ここが一番迷いやすいとのことである。確かに視界の悪い時にはそのまま真直ぐに進んでしまう可能性も考えられる。690mピークからは40〜50m下降するが、帰路はこのピークを巻くことにする。天狗岳へは、一度登り返しはあるが標高差は少ないため、意外に距離を稼ぐことが出来る。

 いよいよ最後約240mの登りに入る。朝方の降雪により白く輝く木の枝々と透通るような青空とのコントラストが何とも美しい。ここはひたすら上へ向って、一歩一歩着実に歩を進めるだけである。見上げると、先頭を登っていたYさんが稜線上の小さなコブで立ち止まっている。嘘のような頂上到着である。少し遅れて頂上へ飛び出すが、視界は一気に開け余市や古平の町並が遠くに望まれる。360℃の展望は雄大であり、一等三角点の山であることを実感させられる。

一度は完全に諦めた登頂ではあるが、人がほとんど入ることのない山域で、しかも林道に戻った途端に他パーティと出会う等、偶然に偶然が重なったのも事実である。拾い物の登頂を果たした喜びがいかに大きいかは語るに及ばない。(2004.1.18)

【参考コースタイム】 除雪終了地点 8:00 → 余市ダム(豊丘林道入口) 8:50 → 登頂断念地点 10:15 → 690mピーク 12:10 → 余市天狗岳頂上 13:15、〃発 13:35 → 余市ダム(豊丘林道入口) 15:10 → 除雪終了地点 15:30 

メンバーsaijyoチロロ2

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