<戻る

      宇尻山(856m)

春香山から和宇尻山を望む

1/25000地形図 「 張 碓 」 「銭 函」

12月の日は短く、スタート前から暗くなる
HYMLのメンバーは春香山を目指す
東側の平坦地から見た宇和尻山
銀嶺荘は竹本氏の人柄と共に人気の山荘である

 和宇尻山(わうすやま)は春香山と山容がよく似ており、いわば双子の兄弟のような山である。春香山は銀嶺荘管理人・竹本氏の尽力もあって、札幌近郊では四季を通して賑わいを見せる人気の山となっている。一方、この和宇尻山であるが人気がなく、春香山の陰のような存在である。登山道がないこともあるが、銀嶺荘からの斜面が傾斜に乏しく、冬季間のツアースキーコースとしても少々もの足りなさを感じさせることが原因しているのかもしれない。

この山を最初に計画したのは2年前であるが、実際に登ったのは今回の1回だけである。近間の山との印象から何時でも行けるとの思いがあり、このことがかえって計画倒れに終わってしまう要因となってきた。一度だけ実際にこの山をオーンズスキー場側から目指したことがあるが、尾根取り付きが観光牧場とのことで、駐車スペースの問題で牧場側からクレームがつき、計画はあっさり中止となった。桂岡の登山口も付近に私有地が要り込んでおり、駐車した後、看板通りの法外な料金を提示されたことがある。そんなこともあって、今回は銭函からのタクシー利用である。タクシー会社の駐車場に車を置かせてもらい、桂岡登山口へ向う。片道1090円であり、三人であれば一人往復700円である。住民とのトラブルや精神的なわずらわしさなどを考え合わせれば、安い入山費用と言える。登山者として、無断駐車その他で地元に迷惑をかけてはならないことは言うまでもない。

今回の登山はHYML(北海道山メーリングリスト)の交流山行に参加するために計画するが、私は通常土曜半日勤務のため午後からのスタートとなる。登山開始後まもなく日が暮れてしまい、ヘッドランプを頼りに林道上に続く先行パーティのラッセル跡を辿って行く。もちろん、どこにでも泊まれるようビバーク用装備は必携である。以前は標高550mの通称“土場”からはそのまま急斜面を真っ直ぐに登ったが、その後右側を巻くように作業道が出来たとのことで、現在はこの作業道を利用して緩やかに尾根上へ上がるのが一般的のようである。途中、石狩から札幌へかけての夜景が美しく、街の灯によって浮き出される銭函天狗山のシルエットや海岸線が印象的である。尾根上からは500〜600mも進むと、HYMLの仲間が待つ銀嶺荘である。

翌朝は春香山へ向うHYMLメンバーを見送り、我々は和宇尻山へ向けてラッセルを開始する。雪はさほど深くはないが、深くないことがかえって倒木などに進路を邪魔され、思ったようには進んで行かない。春香山までは近いせいか、HYMLメンバーの歓声まで風に乗って伝わってくる。頂上へは意外に短時間で到着する。南北に広がる平地であり、GPSによって頂上の位置を特定する。Web上でこの山の頂上は見たことがあり、展望は樹木に邪魔され何も見えないことは知っていた。あまり期待はしていなかったが、やはり四方視界の利かない頂上にはがっかりさせられる。下山はオーンズスキー場付近にある尾根取り付き地点の観光牧場を目指す。GPSに入れてきた情報は頂上だけであり、ここからは地形図とコンパスが頼りの下降である。

和宇尻山の途中から春香山を望む 終点はオーンズスキー場である

シールを外し、上り返しが少ないよう西側方向から北東尾根に回り込むことにする。GPSを持たない時代は頂上からしっかりとコンパスをきって行動したものであるが、ここを感覚で乗り切ろうとコンパスを出し渋ったことがその後の行程に災いしてしまう。北東尾根と考えて下降した尾根は回り込みすぎたのか、東側の尾根であったことが薄っすらと映る太陽の位置から下降後に判った。この時はじめてコンパスを取り出すが後の祭りである。傾斜はきつく、雪崩の可能性も考えたが、雪は部分々ではずり落ちて固まっており、落ちるべき部分は落ちてしまったようである。表層雪崩が起こるであろう弱層はなく、全層雪崩が起こるほど積雪はまとまっていない。雪崩れる危険性はほとんどないと読み斜面に突入する。概ね尾根上を下降し、東側の平坦地に出る。平坦地からは石狩湾の海岸線を眼下に望むことができる。ここからは北東尾根へのルート修正のため、トラバース気味に針路を取ることにする。

直ぐに急峻な沢形が現れるが、とても横断できそうにはなく、そのまま下って地形図上では山を巻くように走っている作業道へ下りてみることにする。作業道は予測通りに現れるが、ここでも予定の尾根を一本間違えて下降してしまい、銀嶺沢川上流へ向うことになってしまう。近郊の山という安易な気持が読図を雑にしてしまったようだ。銀嶺沢川沿いには林道も作業道もなく、ここから先が予想以上に難しい。この時期ではスノーブリッヂも未発達で、簡単には両岸を行き来できない。

下れども下れども何も現れず、唯一ピンクテープを発見、作業道の出現を期待して恐る恐るスノーブリッヂを渡るが結局作業道は現れず、再び左岸へ渡り返すことになる。時折、オーンズスキー場のアナウンスが風に乗って聞こえてくる。このまま国道まで下ってしまうのではないかと話していた矢先、頭上に送電線が現れ、目的地の観光牧場よりもさらに下ってしまったことを確認する。さらに、この日初めての人造物である水道施設が現れ、管理用道路上に到着する。頂上を出てから、約4時間もの迷走であった。

今回の迷走の原因として考えられるのは、GPSを持って簡単に動けることになったことと、近郊といった安易な気持での行動に尽きるだろう。フル装備での山行であり、遭難といったことはまず考えられないが、冬山シーズンは始まったばかりであり、自分にとって良き警鐘となったことだけは間違いないようである。(2005.12.25)

【参考コースタイム】12/24 桂岡登山口 16:00 → 銀嶺荘 18:50着  12/25 銀嶺荘発 9:15 → 和宇尻山頂上 10:10 、〃発 10:30 → オーンズスキー場 14:10

メンバーsaijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

<最初へ戻る