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      (うつだけ) (818.3m)

    
林道を一時間半歩いて、目指す欝岳本峰が現れる

/25000地形図  「欝岳」「西興部」

林道途中にはゲートがあり、車はそこに置いて行く
欝岳への取付きまで、緩く長い林道を歩く

欝岳は山名から受けるイメージとは違って明るい感じの山である。山行当日の天候に因るところは大きいが、新しく整備された林道が山懐深く伸びていて、意外に良いアプローチには驚かされる。林道の途中からは残雪で真っ白に輝く北見山地の山々が広がり、心地よい春風に吹かれながら林道を歩いているだけでも十分に楽しい時間が過ごせそうだ。この山の特徴と言えばとにかくその山域の広さが挙げられよう。道央であれば昆布岳によく似ているが、昆布岳ほどの空へ向かっての伸びはない。先日登った札滑岳頂上から東側に大きく広がるこの山を見たが、山というよりは広い丘陵といった印象であった。ただし、山域の広さでは昆布岳や後方羊蹄山の比ではなく、興部、西興部、滝上、紋別の4市町村に大きく裾野を広げている。

道北に位置していることもありスキーを持参で札幌を出るが、標高が低いために思ったよりも雪が少なく、スキーの出番は全くない。道道137号(西興部〜滝上線)の布袋橋を渡ると8号の沢川沿いの林道入口である。一月前には道道からは全く入れず、片道12kmの林道歩きを考え、中止している。一ヶ月後の今回は林道の積雪も消え、地形図上二重線で記載されているコンタ280m地点まで車を乗り入れることができた。林道はさらに同じように続くが、鎖が張られており、森林管理所の入林許可を予め取っておくべきであったと後悔する。ゲートからは予定の取付き地点まで、約1時間半の道程を歩くことになる。途中、507m標高点のある小ピークをグルッと巻くように続くが、付近は近年整備されたようであり、周りの樹林が伐採されたため、眺望は大変よい。右に大きく曲がるコンタ450m付近のカーブを過ぎると林道は徐々に下って行き、帰りの登り返しを考えただけでも億劫になる。標高差にして約100mも下った先に予定の取付き地点がある。登頂だけを考えれば、むしろ北側の於達部川沿いの林道を使った方が効率が良かったのかもしれない。

頂上から望む札滑岳
欝岳頂上には一等三角点が設置されている 頂上から望む札滑岳
頂上から望むウェンシリ岳は実に美しい 頂上からはオホーツク海も広がる

取付き地点から見る欝岳北面には何本もの集材路が刻まれている。この集材路を利用、つなぎながら頂上へ向うルートを考えるが、上流部とはいえ融雪による増水で簡単には渡渉できそうになく、下草のない左岸側の斜面に取付くことにする。沢筋の雪渓上はこの時期、一見簡単そうに見えるが、雪渓を踏み抜く危険も潜み、多少の藪漕ぎを強いられても尾根筋の方が無難である。斜面は雪渓が消えて間もないのか、アイヌネギがまるで畑のように群生している。標高を上げて行くと雪渓が現れはじめ、少しずつ春山の様相となって行くが、さすがにこの時期とこの標高では残雪は北東側のみであり、快適な雪渓歩きは期待できそうにない。傾斜が緩み藪に突入すると、雪渓を予測して持参したストックが藪漕ぎのテンポを乱してくれる。捨てていくわけにも行かず、ここは辛抱して登り、予定の696m標高点となる。

頂上まではできるだけ雪渓上を歩きたいところであるが、雪渓が豊富な北斜面側は傾斜があり、南側の吹きだまっていた部分の雪渓は残骸程度にしか残っていない。稜線上では基本的には藪の中を進まなければならない。春の硬雪を想像していただけに少々期待はずれではあるが、気持だけは初見山の欝岳頂上の魅力にぐいぐい引っ張られて行くようである。北面の雪渓斜面が緩み、北面側から大きく回り込んで最後の登りとなる。左手には春霞の中、藍錆色のオホーツク海が広がっている。できるだけ雪渓をつなぎ、最後は低い藪を漕いで一等三角点の設置された頂上に飛び出す。

この山は意外に人気があるのか、樹木には「欝岳」の頂上を示す標識が掛けられている。展望は正に360°であるが、やはり白く輝くウェンシリ岳や札滑岳などの北見山地の山並みが素晴らしい。800m少々の標高とは思えない眺望が展開する。今回始めての参加である、Oさんは清里町出身とのこと。普通であれば気づかないほど霞んでいる地元・斜里岳の山影を指呼していた。

さて、下りであるが、林道の登り返しだけは避けたいものである。であれば、少なくても732m標高点手前のコブだけは藪を漕いででも越えなければならない。とりあえずは往路で通過した696m標高点を目指し、頂上からいきなり藪へ突入する。シーズン最初の藪漕ぎ下降の腕試しといったところである。696m標高点までは足跡を辿る。その後も同じような雪渓歩きと藪漕ぎが繰り返されるが、723m標高点手前への最後の登り返しの藪漕ぎだけは本格的であり、けっこう辛い。

723m標高点手前からは駐車地点のゲートまで僅かな距離にある尾根末端を目指し下降に入る。北側であるため、ところどころ雪渓も現れ、予想通り快適である。途中からは集材路も現れ、難なく予定の尾根末端から林道へ飛び出すことができた。時間的には林道を歩いても大差はなかったかもしれないが、得した気分は十分に味わうことができる下山であった。(2005.5.29)

【参考コースタイム】 林道(ゲート前)6:00 → 斜面取付き 7:35 → 欝岳頂上 9:40、〃発 10:15 → 林道(ゲート前)13:30 

メンバー】hachiya夫妻、Ootaさん、saijyoチロロ2、チロロ3(旧姓;naga)

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