<戻る

      海別(1419.4m)

早朝の海別岳 (2015年1月撮影)

/25000地形図「海別岳」「朱 円」

雪渓が繋がる地点を探す
森林限界を越えると、行く手に目指す海別岳が現れる
森林限界を越えると、行く手に目指す海別岳が現れる
白く長い尾根筋を登る

白く長い尾根筋を登る

  ウトロへ向う車窓から見ていつも感じることだが、険しい斜里岳を雄に例えると、雌にあたるのが海別岳である。幾分険しさには欠けるが優雅さでは勝っている。存在感のあるこの2山は秘境・知床の山旅への期待を大いに膨らませてくれるプロローグと言える。海別岳は知床半島へと続く稜線が標高の半分まで高度を下げるため独立峰と言ってもよいくらいで、この時期の白い裾野を大きく広げた姿は何とも見事である。北西方向から南東方向にかけては意外に細長く、知床連山の基点の山としてどっしりと構えている。隣の斜里岳は言わずと知れた日本100名山の一山であり“全国区”の山であるが、海別岳はそれ程メジャーではない。ただし、冬から春にかけてはスキーツアーの山として、道内の登山者には根強い人気があるようである。緩やかな山容はどの尾根からも容易に登ることが可能であり、この山の人気の大きな要因と言えよう。

しかし、スノーモビルのコースとしても適しているのか、いつ登ってもけたたましい騒音には興ざめさせられる思いである。規制区域外とのことであるが、世界遺産を目指す知床国立公園に隣接する地域でもあり、今後はぜひ規制の対象区域をこの山にまで拡大してほしいものである。知床五湖へのマイカー乗り入れは規制して、何処でも走り回ることが可能なスノーモビルは規制区域外とはいえ野放し状態というのは、何とも片手落ちな話である。知床の自然が本当の意味での世界遺産であろうとするならば、知床半島の一部地域のみならず、もっと広範囲に考えるべきである。

眩しいほどの日差しは、正に春山の醍醐味と言える 斜里岳はさすがに日本100名山の風格を感じさせる
眩しいほどの日差しは、正に春山の醍醐味と言える 斜里岳はさすがに日本100名山の風格を感じさせる
青空に向って登る。あと一息で待望の頂上到着である。 突然に広がる標津山地の山並み
青空に向って登る。あと一息で待望の頂上到着である。 突然に広がる標津山地の山並み

雪解けが進むこの時期、海別岳へのアプローチとして、山から続く雪面の端はどこかと地図上で探す。上手い具合に雪面の端と思われる取付き地点を見つけるが、考えるところはどの登山者も同じなのか、先客がこのルートに目を付け、既に出発したようである。スタート地点から直ぐ先は畑へのシカの害を防ぐためにフェンスが張り巡らされている。道路上であるためにゲートは開放されているが、下手なところを下山した場合はシカと同じ条件となり、ゲートを探して歩き回らなければならないようだ。フェンスのある道路からは平な森林帯がしばらく続く。ほとんど平であるため、僅かな高みを目指して進んで行く。小さなコブへ登ると四方が低く見えるが、次の高みを探して行けば容易にルートが想像され、次の一手が見えてくる。

徐々に傾斜が増し、多少山らしくなってくる。樹林が疎らとなったところでは背後に藍錆色のオホーツク海が広がり、標高が上がっていることが実感できる。以前に登った時には右手に早々と斜里岳が迫力ある姿を現していたが、今回は晴天にも関わらず、いくら登っても見えてこない。以前は記録というものを一切とっていなかったこともあり、細かな部分の記憶はあまりない。同じような樹林帯の平地を歩いてはいるが、以前とは違った尾根を登っていることだけは確かなようである。766m標高点付近からは若干右寄りに曲がり、コタ880m付近で左寄りのルートとなる。さらにコンタ950m付近で突然森林限界となり、正面にはコンタ1310mの頂上の肩へと続く白く長い稜線が現れる。起き上がったハイマツが進路を塞ぐため、かなり雪庇に近いところを辿らなければならない。この時期の雪庇の崩壊はあまり考え難いが、雪庇の基部にあたるところでは細かな亀裂があるのか、スキーごと埋まりそうになる。むしろ亀裂から先の方が、横よりも下へ働く力の方が強く安定しているようである。

見た目には細かった雪渓は意外に広く、スキーの滑降にも十分である。頂上の肩まではあまり変化がなく単調さも手伝ってか、かなり長く感じられる。北側に見える1176m小ピークは何時までも高みとなって左前方にそそり立って見える。やがてその高さを越えるが、その背後にはそれまで隠されていた知床半島の全体像がパノラマとなって広がり始める。このHPの掲示板でも話題となったラサウヌプリ(奥遠音別岳)が端正な姿を見せて現れる。その先には遠音別岳、さらに奥には羅臼岳〜硫黄山の見慣れた山並みが展開している。正に知床半島の山々が一望の下である。

頂上からは知床半島が一望できる。右手前は話題のラウサヌプリ

頂上からは知床半島が一望できる。右手前は話題のラウサヌプリ

 肩への詰めは多少傾斜があり、スキーは肩の手前までとし、ツボ足で頂上を目指すことにする。昼も過ぎ、雪も腐り気味であるため、所々で落とし穴状態である。肩を越え、次の1390mのコブは一見頂上と間違えやすい。地形図をしっかりと見てさえいればこんな間違いはありえないところであるが、さすがに疲労感を感じ、細かく地形図を調べる気分にもならない。小ピークを上り詰めると、さらに大きな本峰が姿を現す。ここからは約10分の距離である。既に登頂を終えた2人パーティが快適に下ってくるところである。

 思ったよりは速く頂上に到着する。三角点はこの時期、既に雪面から顔を出している。斜里岳はもとより、登っている間は見ることができなかったサマッケヌプリ山や俣落岳をはじめとする標津山地の山並みが見事である。足元にはかなり大きな北海道地図が広がっているようにも感じられ、当たり前ではあるが、地図と同じ配置で実際の光景が展開する様は感動的でもあり奇妙でもある。下りの斜面は程よい傾斜があり、しかもロングコースである。スキーツアーの山として、人気の理由が頷ける思いであった。(2005.5.3)  

参考コースタイム】車道終点(海別岳取付き地点) 9:00 → 森林限界 10:45 → 海別岳頂上 13:35、〃発 14:05 → 車道終点(海別岳取付き地点) 15:45 

メンバーsaijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

<最初へ戻る