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      ウコタキヌプリ(727m) 

 

   

南峰とのコルから望むウコタキヌプリ本峰

南峰とのコルから望むウコタキヌプリ本峰

    1/25000地形図「ウコタキヌプリ」

解説付きの立派な看板、狩猟解禁のおりには命がけの登山と脅かしている
林道終点には案内板も何もない
なんだか不安になる沢ルート。ここも立派に登山コースとなっている
この時期の花としてアザミが妙に目を引いた
トリカブトも目立つ
南峰への最後の登りは、登ることの喜びが実感できる

ウコタキヌプリは本峰(727m)と、一等三角点「雨後滝山」が設置されている南峰(725m)からなる少々マニアックな山域の山である。山名はsakag氏の「北海道の山名の由来」には「アイヌ語で“二つの山がくっついて立っている山”、足寄町史では“互いに付いた玉石”の意とし、どちらも頂上の形態を示していると思われる」とある。いずれにしても、下界から見れば双耳峰に見えるのであろうが、この山がしっかりと見えそうな場所は白糠側の山間部の牧草地であり、そこまで行って確かめる時間も余裕もなかった。現地の案内板には「本別、足寄、白糠の三町にまたがる白糠丘陵の最高峰」とあり、本別町や地元の観光協会、旧営林署、山岳会などが集材路を利用してこの山に登山道を開削したようだ。

白糠本別川に沿って開放されたシカ柵を開けて進んで行くと景勝地・幽仙峡となる。南宋画にでも描かれそうな「わび」「さび」を感じさせる神秘的な世界である。紅葉シーズン本番にはまだ少し早いようだが、こんな渋い景勝地が道内にもあったことには驚かされる。一般的に考えれば林道の奥であるが、こんな奥深いところにも公衆トイレや東家までもが設置されており、地元での人気の高さがうかがえる。紅葉真っ盛りのここの光景は一見の価値がありそうだ。

さらに進むと目指すウコタキヌプリ登山口の案内板のある分岐となる。新しいバラスが敷かれた林道を少し進むとすぐに広い駐車スペースのある終点であるが、ここで悩んだのが登山口である。少なくてもネット情報を調べていればこんな余計な悩みはなかったのだが、何も見ずに出かけてきてしまったために右往左往する破目に陥った。分岐の案内板とは対照的に登山道を示す標識も何もない。あるのは枯れた夏草の被る河原のみである。踏跡があるのではないかとじっくりと観察するが、あの丁寧な案内板があるのだから登山道入口と標識くらいはあるのだろうとの結論となり、看板のある分岐まで戻って林道沿線をしらみ潰しに観察する。結局一ヶ所、右岸側のシカ道?が有力であったが、これもすぐに途切れてしまった。登山道登山という気楽さからの予測もしなかった迷いである。

頭を薮山モードに切り替え、場合によっては藪を漕いででも頂上へ、と考えると意外に気持が楽になる。とりあえずは沢中を進んで行くことにする。途中でかなり狭くなったゴルジュ状となるが、ピンクテープだけは次のものが見える間隔で点々と続いている。釣り人が残したものとも考えられるが、こんな水量のない川に入る釣り人もいないだろう。よく見れば踏跡も所々に薄っすらと見え、これが正解であったと気付く。こんな状態ではきっと登山道も不明瞭なのだろうと思ったが、意外なことに、沢からの入口には立派な標識が立っていた。ここからの登山道は集材路を利用しているため、かなりしっかりとしている。間違えやすい分岐にも迷い込まぬように標識が立てられ、コンタ550m付近までは正に一級国道といえる。集材路利用の部分を登り終えると、登山のために新たに開削された踏跡となるが、それでも要所々のピンクテープが方向を指し示してくれる。

この山の笹薮は背の低いミヤコザサで、樹林とのコントラストがまるで公園の中にでもいるかのような整然とした光景を作り出している。南峰への最後の登りは、高みへと登っていることが実感でき、登ることの喜びや感動を味わうことのできる最高の場面である。一等三角点が埋まった狭い頂上からは、阿寒の山々や白糠丘陵全体の様子が見られ、太平洋をも望むことができる。展望を示す標識にはニペソツ山や雌阿寒岳と共に喜登牛山が3つ目の山として表示されていたのにはつい笑ってしまった。マニアックな山同士、気の合う友人もちゃっかりと紹介しているかのようである。さて、次は標高で2mほど高い本峰である。藪漕ぎと急な登りを覚悟して「雨後滝山」を後にする。

ミヤコザサの下りは快適で、道があろうがなかろうが全く関係なしだ。コルを目指して下って行くと樹林の間からいきなり建造物が目に飛び込んできたのには驚いた。2基の反射板である。北海道電力が業務用に建てたもので、ここを経由して釧路方面と十勝方面とをつないでいるようである。辺り一帯は公園の一角のようで、山の中とは思えない様子で開けている。違うところといえば歩道にシカの糞が転がっているところぐらいだ。釧路側には道路終点も見えるが、竣工が昭和62年となっているので、工事用の道路があったとしても20年経った現在ではかなり荒れていることだろう。

南峰の案内標識。喜登牛山が異色であった
夕張山地南部・クオーベツ山以来久々のNew「大切にしょう三角点」
コルに設置されたマィクロウェイブの反射板   公園の一角にでも居るような感じがする
ウコタキヌプリ本峰はあとわずか ウコタキヌプリ頂上に到着 頂上から望む雌阿寒岳と阿寒富士

本峰への登りも南峰から見た程ではない。牧場内の緩い丘にでも登っているくらいの感じである。 南北に長い頂稜部、どこが一番高いかは行って見なければ判らないので、まずは最南端から足を踏み入れる。相変わらずの低い植生で、シカの寝床とおもわれる妙に開けた場所を幾つか通過する。最後は少し登って地形図上の727m標高点到着となる。見たところ、やはりここが一番高い。こだわりの登山者が設置したものなのか「ウコタキヌプリ 727m」と書かれた小さな頂上標識が樹木にネジ釘でしっかりと貼り付けられていた。やはりマニアックなこの山、ここまで登ってくるのは自分も含め、こだわり派以外の何者でもないようだ。秋の一日、ついひいき目に見てしまう感情を差し引いたとしても、南峰以上の展望が広がっていると感じる“ウコタキヌプリ頂上”が足許にあった。(2009.09.21)

 【参考コースタイム】登山口P 8:45 → 登山道取り付き 9:00 ウコタキヌプリ南峰 9:55 ウコタキヌプリ頂上 10:35、〃発 11:10 ウコタキヌプリ南峰 11:30→ 登山道取り付き 12:25 登山口P 12:40   (登り1時間50分、下り 1時間30分 休憩時間を含む)

メンバーsaijyo、チロロ2

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