ウエンシリ岳(1142.3m)
1/25000地形図「一の橋」「西興部」「名寄川上流」「上札久留」
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西興部・道の駅「花夢」 | 芝桜が真っ盛り |
私がウエンシリ岳の名を始めて知ったのは「北海道の山と谷」
(北海道撮影社刊)が最初で、昭和50年代前半だったと思う。このガイドブックに載っている山といえば、そのほとんどが簡単には登れそうもない山ばかりで、夏尾根登山しか知らなかった当時の私としてはかなり衝撃的だった。沢を中心に積雪期とかバリエーションルートとか、レベルの違いをつくづく思い知らされたのを覚えている。私のような一般登山者に関係あるのはほんの一部分【一般向】のみで、それすらもさらりとしか載っていない。そんな中で新鮮味を感じたのがピッシリ山とこのウエンシリ岳だった。以来、この両山はいつも気になる未知の山だったが、なかなか機会がないまま30年もの歳月が流れてしまった。ちなみに私の頭の中にあるウエンシリ情報はこのときの【一般向】の記述だけで、ピッシリ山も未だに登っていない。
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途中、雪渓に覆われているところも |
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稜線上は雪渓で完全に覆われている |
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チロロ2さん、21年ぶりのウエンシリ岳頂上に到着 |
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下山後、麓は花盛りだった |
計画していた拳骨山を目指し西興部村までやってきた。高速道路無料化の社会実験もそろそろ幕を閉じることとなり、有料化ともなればおよそ訪れることのなさそうな山の1つが拳骨山であった。ところが西興部は雨、こんな日の籔漕ぎなどさすがに願い下げだ。西興部の温泉施設「森夢」で一風呂浴びて山菜でも採りながらゆっくりと札幌へ戻ろうかとも考えたが、温泉は11時からの営業で少し時間がある。しばらくは道の駅「花夢」で待つが、待つことの嫌いな私は結局帰路に着く。ここで頭に浮かんだのがウエンシリ岳だった。山菜を探しながら登山口でも見て帰ろうということになる。
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ウエンシリ岳中央登山口 | 登山口に立つ案内板、よく見ておくべきだった… |
林道は舗装されていてどこまでも続いていた。ところが、峠を越えたあたりから何か違うのでは?
という話しになる。地形図は半分欠けたものしかなく、そんなこんなで道路地図すら見ていなかった。GPSを取り出して確認してみたところ、山がどんどん遠ざかっていることが判明。考えてみれば、舗装道路がどこまでも続いている分けがない。車を停め、道路脇の看板に書かれた周辺図を見てみると下川町へと向かっていることが判る。少し離れ「中央登山口」という聞いたことのない入山口も載っており、既に時計は10時を回っているが、とりあえずはそこまで戻ることにする。峠へ戻り少し進んだところが中央登山口だった。
登山口にはかなり古い棒杭が建っていて、頂上…2時間とある。少し体を動かすつもりで歩いてみることにし、行けるところまで行って適当なところで引き返そうと登山口を出る。でも、2時間であれば意外に簡単に頂上に着いたりして…とも。しっかりとした登山道だが、途中で斜面を横切るように続く刈り分け道にやっぱり怪しい…と感じる。だが、怪しいのはそこだけで、再びしっかりと続く小道はさらに上へと続いていた。進んで行くうちに気持もどんどん前へ前へと進んで行くから不思議なものだ。大まかにでも所要時間
や距離を知っていれば山行など当に止めていたところだが、登山口で見た“2時間”がどうしても頭から離れず、とにかく2時間だけは進んでみようと考えた。良い山菜もあるかもしれないし…
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しっかりとした登山道は続く |
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登山道脇にはショウジョウバカマが数多く見られた |
尾根が狭まりロープが垂れ下がる細い急斜面の登りとなる。見ればこの細尾根を迂回するトラパース・ルートもあるが、ピンクテープで立入らぬよう規制している。なぜ規制が必要なのか見てみたくなり下山時に確認してみたが、どうやら崖斜面のトラバースが危険との判断でそのようになったようだ。ただし、岩は順層で、慎重に進む分には何ら問題となる状態ではない。少々過剰な気はしたが管理する側から見ればそのくらいの気遣いは必要と考えたのだろう。さらに登り詰めると雪渓が現れる。標高を上げるごとに季節が少しずつ逆戻りしている感じがする。雪渓は稜線に沿って続き、場所によっては崩れそうになっている。地形的に不安定な場所の雪渓はさすがに気持が悪く、思いっきり潅木帯へと逃げる。完全にガスの中となってしまい視界が全く利かなくなる。
約2時間が過ぎてそろそろ頂上到着かと思えた頃、登り詰める先に標識らしきものを発見、頂上か!と、つい期待したが、同行のチロロ2さんに言わせれば「まだまだ」と。確かにその通りだった。頂上まで2.3km、と書かれた標識だった。最初から登山口の棒杭にはそう書かれていたとのことだが、私の記憶では2時間だったはず。すでに正午近くで、登山道も雪渓に隠れた状態。おまけに視界不良とあっては止めるのが良いのかもしれない。しかし、ここで止めてしまえば残るのは後悔のみ、さらに行けるところまで行って潔く引き返そうと考える。チロロ2さんは徐々に無口に…私の性格を知っていて「こいつは絶対に止めない」とふんでいたようだ。そのくせ取って付けたように「いつでも止める」と顔色を窺いに行ったことが男気性の彼女のイライラ度を増幅させたようだ。
稜線上は完全に春山状態で、雪渓に登山道は覆い隠されている。所々で登山道が現われるが、そんなのをいちいち拾っていたのでは効率が悪い。ポロナイ岳2kmの標識を見る。今度こそは本当に頂上だ。2時間と思っていただけに随分遠く感じたが到着してみれば2時間35分、妥当なところである。まるで4月の山のような雪渓歩きとなったため、中途半端なわりには無駄なエネルギーを使わずに済んだのが良かったのかもしれない。もっとも、登山口から一度も休憩らしい休憩をしていないので当然といえば当然といえる。相変わらずガスって何も見えないが、頂上は頂上。立派な一等三角点が埋まっており、晴れていれば展望はすこぶる良いのだろう。20数年前にチロロ2さんも参加したという道岳連交流登山会を記念する看板が朽ちて三角点に覆い被さっている。時間の流れというものを如実に物語る光景といえる。出来ればポロナイ岳も訪れてみたいところだが、時間的には限界である。次回は山菜採りのついでにではなく、しっかりと晴れた日の計画で再訪したいものだ。ひょっとしたら10年、20年先の話になるかもしれないが…(2011.5.29)
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【参考コースタイム】 中央登山口 P 10:20 → ウエンシリ岳頂上 12:55 、〃発 13:20 → 中央登山口 P 15:40 (登り 2時間35分、下り 2時間20分 )
【メンバー】saijyo、チロロ2