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      宇江内山(1187.1m) 

  
 

双耳峰となっている宇江内山

北峰から見る宇江内山本峰

  宇江内山(うえんないやま)は北見山地の南端付近に位置する山である。上川町の北側には突角山、摺鉢山、天幕山といった1000mを少し超える3つの山があり、いずれも日帰りのツアーには格好の山となっている。それらの山々の一つ奥に位置するのが今回登った宇江内山で、他の三山に比べて奥まっている分だけアプローチも難しい。今回は鉄道を挟んで国道と平行して走る旧天幕駅前の道路をそのまま詰めて、ウエンナイ川沿いの林道から東尾根に取付くルートで考える。

「ウエンナイ」の山名はもちろん留辺志部川支流・ウエンナイ川の水源の山ということでの命名である。ウエンナイというアイヌ語が、地名にでてくる場合は「ウエン・悪くある」から悪い川となるが、悪いは人間にとって何か不都合な状況を表しており、交通困難な場所・嶮岨な場所・飲用にならない水・何か不吉な事故のあった所・魚が溯らず役に立たない川、などとされているらしい。(枝幸町ホームページ)  おそらくここのウエンナイ川も、当時のアイヌの人々にとってこの川に何らかのマイナス要因が存在していたということだろう。

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1/25000地形図 「上 川」「宇江内山」

天幕小学校跡手前のキャンプ場?に車を止める
宇江内山への急斜面を登る
宇江内山頂上にて(背景は北峰)

 以前にあった天幕駅は時代の変遷からか平成13年に廃止となり、旧駅付近には廃棄物処理の会社が処理施設を設けている。にぎやかであったであろうこの周辺も人々が去り、自然への回帰は確実に進んでいるように感じる。途中で通過する天幕小学校跡も今は深い草木の中にあり、石碑を残すのみである。自然の力は想像以上に強く、人々の生活の痕跡など簡単に消し去ってしまうように感じる。八雲鉱山や稲倉石鉱山、さらには瀬戸瀬山で見られた同じ状況は、ここでも進行中である。

宇江内山頂上から天塩岳

旧天幕駅付近にテントを張っての前夜泊の日帰りで計画する。旧天幕駅前の道路を東へと進むが、直ぐに積雪のために車は入れなくなる。10分も歩くと分岐となり、分岐からは山側へ向う。すぐに送電線が現れ、さらに進むと上川町の旧ゴミ処理場の横を通過する。この処理場には“永久不使用”と“熊出没注意”の看板が立っている。不法投棄を厳に戒める目的であろう。この処理場を過ぎて最初の分岐からウエンナイ川沿いの林道へと入る。この林道には数日前のものと思われるスキーのトレース跡も見られるが、宇江内山を目指したものかどうかは判らない。わりと新しい「ウエンナイ川1号砂防ダム」の左岸に林道は続く。林道上に残る雪渓には動物の足跡が数多く残されている。右岸の斜面にはヒグマのものと思われる足跡も点々と残っている。この林道周辺は禁猟区域であるにもかかわらず、猟銃の薬きょうなども落ちており、ルールを守らないハンターによって狩猟は行われているようである。

予定している宇江内山の東尾根はアップダウンの繰り返しであり、大きく蛇行していて距離も長い。ざっと数えただけでも10回のアップダウンがある。林道は地形図上の終点よりも奥まで伸びているようではあるが、融雪により増水している川は渡れるかどうかの不安がある。結局、東尾根上の748m標高点からウエンナイ川へ下る急峻な枝尾根に取付くことにする。急な枝尾根上は鹿の糞だらけで、かなり堆積している状態である。さらに標高を上げて行くと真新しいヒグマの足跡が残る集材路に出て、直ぐに東尾根の尾根上となる。

摺鉢山は立体的に変化する 宇江内山頂上は丘となって姿を現す
宇江内山北峰から於鬼頭岳 宇江内山北峰から馬背山

尾根上は広く平らであり、ラッセルのないこの時期は思った以上に距離が稼げる843m標高点のある小ピークを過ぎると双耳峰である宇江内山が見えてくるが、かなり遠く感じる。このルートでは直ぐ向いに見える小ピークへ行くためには、隣の小ピークを越さなければならず、新雪の積もる厳冬期には相当な労力を強いられそうである。905mの小ピークを低く巻くと、コル付近からは右手に天塩岳が見えてくる。この付近から次の880m標高点まで、この日3回目のクマの足跡が点々と続く。時期的なものなのか、雪渓があるから判るのか、とにかくヒグマの痕跡が多い山である。二つの880m標高点を越えると尚も小さなアップダウンがあり、いよいよ主稜線への標高差約170mの急登となる。主稜線上は突角山方面から天塩岳までの間、スノーモビルの格好のコースとなっているようで、この日も何台かのスノーモビルの爆音を耳にしている。

急斜面をキックステップで慎重に高度を上げて行くが、背後に見える摺鉢山の立体的な変化は見ごたえがあり、その高度感と合わせ、なかなかの迫力で視覚を楽しませてくれる。急斜面を登りきると平らになり、宇江内本峰がすぐ近くに丘となって現れる。雪庇に注意しながら緩い斜面をさらに登り詰めると、平らな宇江内山頂上に到着である。すぐ先には頂上の尖った北峰が大きく見える。振り返ると遠く大雪山やニセイカウシュッペ山が白く輝いて見える。スノーモビルでも始めない限り、簡単には来ることができない山であるため、後々後悔しないよう、北峰にも足を伸ばすことにする。写真を撮って直ぐに北峰へ向けて斜面を下るが、この急斜面をスノーモビルも下っているから驚きである。

北峰への登りは斜面に入ってしまえば本峰から見て感じたほどの傾斜はなく、距離も想像していたよりはかなり短く感じる。約20分で1217mの最高点に到着である。枝にはピンクテープが結ばれており、頂上に拘る登山者の心意気が痛いほどに伝わってくる。本峰から見る北峰は高く感じたが、ここから見る本峰は標高こそ北峰には劣るものの風格は勝っているように感じる。天塩岳や周辺の於鬼頭岳、馬背山、渚滑岳、また北見峠付近にはチトカニウシ山など、それぞれに個性的な姿を見せてくれた。 (2004.5.2)  

【参考コースタイム】車止め 5:40 → 東尾根取付 7:10 → 東尾根上 8:00 → 急斜面直下 9:45 → 宇江内山頂上 11:15 → 宇江内山北峰頂上 11:35、〃発 12:00 → 東 尾根取付 14:45 → 車止め 15:55

【メンバー】saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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