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 筑紫岳(581.3m)

麓郷への入口から見る筑紫岳

1/25000地形図 「布 部

時にはこんな段差も                                        〜スノーシューでは容易ではない (Ikkoさん提供)
道道の歩道に半分乗り上げて車を止める
取付きから急俊な感じ …苦労しそうだ
思いのほか時間を要する登りとなる (Ikkoさん提供)

  テレビドラマ「北の国から」で有名な麓郷への入口に、あまり目立たないが筑紫岳という山がある。「筑紫」と言えば、つい九州を想像するが、この筑紫岳は立派に北海道の山だ。なぜ、ここに筑紫岳という名の山があるのかは判らないが、麓郷が当時の東大総長の名前からの命名であることを考えれば、ひょっとしたら筑紫も人名かもしれないし、あるいは適当な旧国名を演習林内にふって地区分けしたとも考えられる。筑紫岳頂上の点名は三等三角点「筑紫森」である。

  この山は東大演習林の丸山に続いてこの日の二山目、標高差もたかだか380mと、スタート前からなめてかかっていた。ところが、現地に到着して驚いたが、適当な取り付き地点が見当たらない。Ikkoさんの昨日の偵察では既に薄暗く、車を止める場所は決めてきたが山は見えなかったらしい。真北から攻めようと思ってはいたが、思いの外急俊で簡単には取付けそうにない。結局、採石場の一つ東側の少し緩そうな派生尾根から541m標高点を目指すことにする。駐車スペースの確保が出来ず、道道の歩道に車を半分乗せて止めることにする。道路沿いの雪の段差を乗越えて、道路脇の側溝へと降りて、やっとルートと真正面から向き合うことが出来た。こんな所で山登りに向かうとは一般感覚からは考えられず、いい大人が車を路上に止めて雪遊びでもしているようにしか見えないだろう。気にはしないぞ… と思いつつも、通過車両からの視線が気になるあたりは、やはり私も常識人の一員ということかもしれない。

 この尾根も末端付近は崖のようでもあり、取り付き不可と思えるような急斜面に取っ掛かりを求めて小沢沿いに進んで行く。目の前の急斜面をスノーシューで果敢に攻めても、積雪ごと斜面をずり落ちるのが関の山。こんな時に頼りとなるのはやはり野生動物たちの足取りである。沢形の脇からシカが斜面に上っている。しめた! ついそう思った。彼らの足跡は細いながらも重量がかかっている分だけ、かなりしっかりと踏み固められていて、安定感は抜群である。Ikkoさんに言わせれば、山へ入れば人間も野生動物も同じ存在。その中でも一番へぼい生き物が我々人間だそうな。確かにそうかもしれない。三万円もする高価なスノーシューを履いてさえシカの足跡に頼っているのだから。このあたりは自分達の文明への甘えがある人間の弱さかもしれない。斜面の途中にはシカの寝床も見られる。

 尾根へ上るのに一苦労、体力を思いのほか消耗させられる。特に作業道跡から次の斜面への取り付きの段差は、木にしがみ付きながら腕力で辛うじて登る。体が消耗してくると気力も低下気味で、地形図で見る実際の距離以上に頂上が遠い。下山時に判ったことだが、尾根上に飛び出したところはスタート地点からはあまり距離の無いあたりで、時計を持たない私としては体力の消耗度と時間が連動していたようだ。疲労度=進んだ距離の方程式は成り立たないのかもしれない。次回からは時計を見ながら客観的な目で自分の行動を見る習慣も必要のようである。稜線上に出てからも彼らの足跡を頼るが、541m標高点が何とも遠い。対岸には一見頂上かと思わせる険しそうな斜面が見えるが、Ikkoさん曰くは頂上ではなく、その下の方の尾根とのこと。確かに地形図を見れば人間の手では描くことのできない密集したコンタが描かれている。そうこうしているうちにIkkoさんの足跡を辿りながら541mを交わして筑紫岳への稜線へと入る。

頂上と金麦 地元「山部」のセブンイレブンで購入 帰路は地吹雪模様の中の下降となる。 55分で下山

 Ikkoさんは次の分岐からなぜか左側へと入る。しばらく進んで、そこで立ち止まる。どうしたのかと思い、地形図を広げてみると明らかに違っている様子。Ikkoさんに尋ねたところ、彼も自分のGPSに不具合を感じているようだ。確かにGPSの示している筑紫岳頂上は違っていた。聞けばひと時代前の機種ではGPSに入っている地形図の不具合が稀にあるそうだ。現在のものはその点で改善されているかどうかは判らないが、私の購入したGPSはつい先日買ったばかり。とりあえずスイッチを入れてみると、地形図とは完全に一致しており、頂上は右側を表示している。GPS対読図の論議はよくなされているが、読図派が我が意を得たりと勢いを増しそうな事例と言える。とはいえ、やはりGPSは優れもの、誰だって読図を間違えることだってあるし、滅多にないケースを取り沙汰したところでしょうがない。やはり、経験による読図力にGPSが加われば鬼に金棒であるということだけは確かである。

 取り付き地点から稜線上までの距離感で言えばまだまだだが、私の感覚も稜線上を進んでいるうちに修正されたのか、距離感をあまり意識せぬうちに頂上丘が姿を現す。最後は一番緩そうな左側の尾根末端から頂上へと登る。途中、かなり遠く感じた頂上も最後はあっけなく陥れることが出来た。終わってみれば結局2時間30分、この規模の山としては登りに少々時間を要したが、まずまずの登頂。樹林帯とあいにくの天候で、楽しみにしていた頂上展望はない。

  例によって山部のセブンイレブンで買ってきた金麦を雪面に置くが、工夫を凝らすには少々疲れてしまった。まあ、今回は到着しただけで良しとしよう。つい、そんな気分になる。それよりも下山である。途中では浪費した時間と疲労度を考えて、当初予定の北側のルートを下ることを考えていた。だが、登ってきたルートを下ったところで大差はないし、日没までにはまだ余裕もある。そんな判断で、往路を戻ることにした。実際、腕の力で乗越えた作業道ののり面も、下りではストンと落ちるだけのわずか数秒程度のもの。やはり下りは速い。積雪期であればなおさらである。ともあれ、かなりなめてかかったこの日の二山目だが、終わってみれば登り応えのある立派に一山にカウントできる山であった。私としては、この日の大きな収穫と感じた。(2014.2.2)

  【参考コースタイム】 筑紫岳取付き地点 P 11:25 →  筑紫岳頂上 14:00、〃 発 14:10 筑紫岳取付き地点  P 15:05  (登り 2時間35分、下り 55分 )

メンバーIkkoさん、saijyo

      

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