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 当別丸山(482.4m)

木古内湾を挟んで望む当別丸山

1/25000地形図   「当 別 」

トラピスト修道院の整備された敷地内から当別丸山を望む
ルルドの聖母マリア像
旧ルルド、ここから登山道は折り返しとなる
展望台からは函館やトラピスト修道院の全景が見える

 Web上、当別丸山で検索すると当別町四番川の丸山と、こちら北斗市の丸山が引っかかる。北斗市の当別丸山の存在を知ったのは四番川の丸山に登った時からである。しっかりと登山道があって有名なトラピスト修道院から登るというところが印象的で、当別町の方とはだいぶ人気の度合いが違うように感じられた。ただし、札幌からはこの山一山を目指すには遠すぎるため、まとまった休暇を利用する以外に手はなかった。今回は夏休みを利用しての2泊3日の道南旅行、早速二日目にこの山に登ることになる。この日の予定は知内の丸山だったが、登山口の小谷石を訪れた時には朝から低い雲が垂れ込み、山は濃いガスの中。さすがにこんな日に登る山ではない。携帯で雨雲レーダーを覗いたところ、知内付近から函館の北部を雨雲が通り抜けて行く予報となっている。見たところでは当別丸山の方角はまだ明るく、登山時間の短さを考えればこの山であれば登れるだろうとの判断、すぐに函館方向へと車を走らせる。

 トラピスト修道院一帯は異国情緒が感じられ、道内の登山口としては異色の雰囲気である。道南といえば日本的な神社や石仏がらみの山が多いが、ここは何たってカトリック、さすがエキゾチックな函館の山である。準備を終えて修道院裏の駐車場から一歩踏み出すが、突然雷光が光る。そのうち雷鳴も轟き始め、いきなり強い雨も降り出した。すぐに車に戻り、少し待つことにした。トラピスト修道院について少し触れるが、設立は明治29年で、函館教区のベルリオーズ司教によって始められ、フランス人フランソワ・プリエによって整備されたとのこと。「祈祷と労働とをもって直接、神に奉仕し、自己の生聖と社会の幸福の追及」を理念とし、第一に孤児収容教育事業、第二に開拓および酪農業、第三に後継の修道士の養成事業を目的とした。その祈祷と労働を実践する姿は地元にも敬意を持って受け入れられたようである。恥ずかしながら私としてはトラピストバターとクッキーのみの知識しか持ち得なかったが、今回を機に認識を新にしたい。

見事な杉林の中に登山道は続く
当別丸山の頂上、右側には天測点もある

 約1時間待ったが、天候は一向に回復しそうもない。加えて竜巻注意報も発令、大粒の雨も落ちてくる。さらに待つこと30分、空が明るくなるがスタートするかどうかが難しい。携帯で1時間後、2時間後の雨雲の動きを調べGoサイン、約2時間遅れで車を出る。山は逃げないとは言われているが、函館方面までこの山を目指してやって来る機会はそうそう有るものではなく、少々雨が落ちてくるかもしれないが登ることにした。綺麗に整備された修道院構内は美しく、人造の光景とはいえ俗人の私ですら厳粛な気持にさせられた。道央以北の景色が日常的になり過ぎたようで、杉林ですら感動ものだ。墓所を通過、実質の登山口となるルルドへと向かう。

 ヨーロッパの庭園の一角のようなルルドだが、ここは神聖な祈りの場とのこと。その名の発祥はフランスの小さな町だが、そこで起こった聖母マリアの出現と奇跡が、このような祈りの場となった起源のようだ。大きな洞窟と小さな岩の窪み、そこにたたずむ聖母マリア像、ルルドのスタイルである。登山道入口のルルドは明るくて、ゆっくりと過ごして行きたい気分になるような場所であった。そこには「展望台へ」の小さな標識が一つ、丸山への表示は全く無く、少々考えさせられた。そこまでのアプローチが整備され過ぎていたこともあり、そこから先とのギャップに頭が追いついて行かなかったのかもしれない。

 半信半疑で小道を進んで行くと旧ルルドとなる。登山道はその少し手前で折り返す。旧ルルドにも洞窟があり、雨降り後ということもあって泉のように雨水が滴っていた。夏のこの時期であれば虫がうるさくてゆっくりとはしていられない。登山道は見事な杉林の斜面を横切りながら標高を上げて右側へと大きく回り込む。程なく展望台との分岐となるが、天候を考えればまずは頂上である。ここまで登ると感覚的にも登山道といった感覚が戻って来る。ブナ林の中の登山道はなかなか雰囲気があり、一級国道といった感じである。

 ルルドから約40分で空が明るくなり、当別丸山の頂上となる。樹林帯の中を切り開いたようで、その真ん中に一等三角点の「当別丸山」と、少し離れて道内に8ヶ所設置されたと言われている天測点が現れる。盛夏のこの時期でなければ木々の隙間からでも展望が得られるのかもしれないが、さすがに何も見えないのは残念なところ。不安定な天候を考えて、すぐに下山とする。頂上に立つことのみが目的と思われるようなこの日の登山だが、アプローチも含め全てが登山の醍醐味である。この山に関して言えば、異国情緒の漂うトラピスト修道院の構内も当別丸山の一部であり、そんな意味では十分に満足できる一山と言える。帰路、余裕も出てきたことから、展望台へと回ってみることにした。ベンチが一つ置かれた簡素な場所だが、180°の視界が開け見事なパノラマが広がっていた。函館との位置関係、修道院全体の様子など、頂上展望は得られなくてもこれで十分と思えた。 (2013.8.16)

【参考コースタイム】 トラピスト修道院裏 950 新ルルド 10:10 当別丸山頂上 10:50、〃 発 11:05  新ルルド 11:35 トラピスト修道院裏 1150  (登り 1時間、下り 45分)

メンバーsaijyo

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