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      東内大部山(788.2m)  

道道61号線(士別滝上線)から見た東内大部山

1/25000地形図 「日 進」  「中 央」

除雪終点に飼われていた道産子  この朝は寒かった・・・

除雪終点。ここであれば邪魔にはならない
754mピークを左に見ながらコルへと向う

東内大部山(とないだいぶやま)は士別市北東部に位置する頂上部が平らなどこにでもある山である。標高は788mと低山であり、およそ登山の対象とはならないが、この山に登ろうとすれば意外に奥深く、それなりの体力と時間を要する。山名由来は網走・I氏によると、アイヌ語の「ナイ・タイ・ユペ」、つまり川にいる鮫とのことで、訛って「ナイタイベ」となり、「内大部」の字を当てたとのことである。川にいる鮫と言えばチョウザメであり、天塩川水系にも明治から昭和初期にかけては遡上の記録が残っているそうである。下流に位置する美深町では現在チョウザメの養殖が行われており、将来的にはキャビアの商品化を目指しているとのこと。イメージ的にはキャビア=ロシアの大河と想像されがちであるが、意外に身近な存在であったことには驚かされる思いがした。

雪庇の風下側にルートをとる

この山は「山の時計」EIZI@名寄氏が一昨年の12月に登頂を果たし、Web上に初めて紹介している。山行記の中では氏のルートよりもさらに東側のルートを勧めており、我々も昨年の12月にそのルートからの登頂を試みた。今回同行のKo玉氏のRV車はコンタ430m付近までの林道乗り入れが可能であったため、登頂は意外に簡単と思われたが、754mピークより先で腰まで埋まる積雪に行く手を阻まれている。

今回はスキー登山の計画であるため、林道は最初からの深雪ラッセルを覚悟しての入山である。ところがこの時期に問題となったのは、林道に入ることよりも駐車場所を確保することであった。旧朝日町市街手前のヌプリシロマナイ川沿いに走る市道を前回車を乗り入れた林道入口へ向うが、入口付近は除雪した際の硬雪が1m以上も積まれており、そのまま路上に駐車するしかないようである。登山者として地元に迷惑をかけてはならないのは当然であり、しばし思案に暮れる。いよいよ困ったあげく、さらに車を走らせ除雪終了地点まで行き、別ルートからのアタックに予定を変更する。変更案は一番緩そうな尾根を使って標高を稼ぎ、754mピーク東側のコンタ650mのコルまで登り、同ピークをできるだけ低く巻いてコンタ690mコルまで向い、そこから頂上へ一直線に向うルートである。

除雪終点付近は小さな牧場となっていて、5〜6頭ほどの道産子が野ざらし状態で飼われている。この日は氷点下20°を軽く下回る気温で、あまり動かない馬に薄っすらと被った雪と吐き出す白い息が凍て付く寒さを実感させる。車から外へ飛び出す踏ん切りがなかなかつかないまま、山支度も車の中で始めるが埒があかず、意を決して何とか外に飛び出す。除雪されていない道路上の深雪ラッセルを開始し、約50分で目的の尾根取付きに到着するが、さすがにこの頃にはオーバーヤッケさえ暑くて邪魔になってくる。

取付地点は多少の傾斜があり、取り付きやすそうなルートを探す。いったん取り付いてしまうとそれより先はほとんど平と言ってもよいような緩い登りとなるが、予想外の深雪では下りも上りのトレースを使わなければとても滑りそうにない。できるだけ登り返しが少なく、帰路ではフルにスキーが滑走できるよう慎重にルートを選ぶ。754mピークを気にしながらコンタ650mコルへ向って沢形沿いに進んでゆくと、疎林となった目標地点が見えてくる。Ko玉氏曰くは、沢をそのまま進むとコルへの最後の登りがきつくなる。できるだけ手前からトラバース気味に標高を上げていった方が良いとのこと。とはいえスキーの舳先が深雪に埋まってしまい、それを持ち上げながら標高を上げて行くのは容易ではない。細目にラッセルを交代しながらここを乗切る。トラバースは雪崩る危険性が高いが、今年はシーズン始めからずっと低温が続き、この日も顕著な弱層は見当たらなかった。

754mピークを巻くと頂上が見えてくる

東内大部山頂上はこんなところだった

コルからは754mピークから北東へ伸びる尾根を大きく巻く。標高を上げ過ぎても帰路では上り返しとなるため、ここは慎重に進路を取る。尾根上を乗り越すと、目的の東内大部山と予定のルートが見えてくる。対岸の通過予定の斜面が地形図からの想像よりも立って見えるが、これは錯覚で、近づくと地形図通りに傾斜は緩くなる。自分の目よりも地形図が信用できるところである。結局、難なくトラバースは完了するが、予定以上に標高を上げてしまい、帰りにシールを外す場所は必然的にこのコルとのギャップの地点となる。ピークに続く尾根上には雪庇が張り出している。

突き刺さるような寒風を避け雪庇の風下側にルートをとり、最後は広い斜面を上り詰めて頂上の平地へ飛び出す。辺りは樹林に覆われ、どこが頂上なのかよく判らない。GPSによって頂上を特定するが、もっと高い地点が他にもあり、そこを頂上とする。三角点が埋まっていると思われる地点付近の木々にはピンクテープや赤布はなく、夏場を含めてこの山を目指す登山者がほとんどいないことを感じさせる。頂上の展望は樹林が邪魔して期待はずれであるが、士別側と日進側の両方の平野が樹林の間に広がっている。 下りはトレース跡を予定通り快適に滑ることができたが、ルート自体はトラバースが多く、弱層がありそうな時には選択すべきルートではないと感じた。ともあれ、二度目にして手に入れた頂上はルート判断その他も含め十分に満足できるものであった。(2006.1.22)

【参考コースタイム】除雪終点P 8:25 → 650mコル 11:05 → 東内大部山頂上 12:35、〃発 12:40 → 雪庇下で休憩 12:50 、〃発 13:05 → 650mコル 13:20 → 除雪終点P 14:15  

メンバーko玉氏、saijyo、チロロ2チロロ3(旧姓naga)

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