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      旭 岳(1334.9m) ・・・もう一つの旭岳

旭岳は十勝連峰末端の山

1/25000地形図

秋雲橋付近に車を停める
ベベルイ林道を辿ることにする
林道にはヒグマの足跡が点々と・・・

旭岳といえばだれもが北海道の最高峰をイメージしてしまうであろうが、同姓同名の山が十勝連峰の中にもある。前富良野岳の派生尾根上の旭岳(1335m)で、2000m級の山々が連なる同連峰の中にあっては少々標高が低い小さな山である。この山の面白さを強いて挙げれば、そのアプローチをいかに克服するかにあるように思う。自衛隊の演習地が山麓に広がり、夏場の砲弾が轟く現地の様子を考えると、演習地の中の通過はありえない。冬場、ここを通過して山裾に取り付いた話をしばしば耳にするが、我々のような素人考えでは冬場であっても避けたい選択である。この演習地の歴史は古く、昭和27年に警察予備隊から保安隊に改称した当時に始まる。道内の山にあっては、人為的にアプローチが規制された珍しい山の一つである。そこで考えた選択は、原始ヶ原への登山口である秋雲橋から、山麓を巻くように付けられているべべルイ林道を辿るルートで、これであれば演習地とは無縁の林野庁の管轄であり、砲弾は決して飛んでこない。45qの林道歩きとなるが、遠回りとさえ考えなければ普通のアプローチといえる。とはいえ、秋雲橋くらいまでは車で入りたいものと、車道の雪が解けるこの時期を待っての計画である。

途中、多少の積雪は残るが、無事に秋雲橋まで車を乗り入れる。このところの週末ごとの荒天、この日もみぞれ混じりの空模様である。山のベストシーズンといえるこの時期、皮肉なことに悪い周期に入ってしまったようで、山への距離が少々開いてしまったようにも感じられる。前線の通過で、天候は下り坂とのこと。何度も止めようかと考えるが、とりあえずはスキーを履き、鈍った体を動かすことだけを目的に林道を歩いてみることにする。スキーを履くとやはりモードは変わってくる。体が温まってくると眠っていた山への情熱が目を覚まし、気分も直ぐに高揚してくる。アップダウンの少ない林道は距離を稼ぐにも山へのウォーミングアップにも好条件といえるのかもしれない。途中、すでに目覚めたヒグマの足跡が林道上に点々と続いている。かなり大きい成体のようで、餌探しの最中のようだ。こんなに演習場が近いにも関わらず、我関せずといったところであろう。ひょっとしたら演習地にも堂々と出張しているのかもしれない。ヒグマの動向を気にしながらも、約2時間で尾根の取り付き地点に到着する。

樹林帯を抜けると展望が広がった

旭岳頂上に到着

取り付きからは広い樹林帯の平凡な尾根歩きとなる。山頂付近はガスがかかって何も見えず、ときおり、湧き起こるような雪風の音が鳴り響く。稜線上では吹かれるだろうと覚悟しながらも、順調に標高を稼ぎ、ウォーミングアップのつもりが、いつしか本番の登頂へと気持が変化してしまう。900m付近からは樹林が消え、振り返ると富良野盆地のパノラマが広がるが、天候不良で芦別山群が見えないのが残念だ。前富良野岳の派生尾根とはいえ、やはりここは大雪山の領域で、春山歩きにしても山スキーにしても格好なゲレンデである。森林限界を越えてからは頂上が間近に感じられるが、どうしてどうして頂上への雪稜は延々と続く。単純といえば単純なルートであるが、単純であるがために距離感を余計に感じているのかもしれない。ニセピークが幾つか現れ、頂上到着と確信しながらもさらに次々と高みが現れうんざりさせられる。天候回復の見込みがない状況では、いくらモードが変わっても心のあせりは隠せない。

幸運なことに、稜線上の風はほとんどないようだ。最後のコブを越えると、対峙する尾根と合流する真っ白な高みが姿を現す。今度こそは本当に本峰到着である。頂上は樹林もなくすっきりと開けているが、あいにくのガス模様で展望は富良野側の一方向だけである。期待していた前富良野岳への展望は肝心の頂上付近がガスの中にすっぽりと隠されている。晴天であればきっと素晴らしい眺望が展開することであろう。帰路の稜線上にも雪雲がかかり始めている。思いは旭岳頂上に置くこととして、頂上ビールを飲んで直ぐに下降の開始とする。見えない壁を取り除くことに成功した今回の山行、来週からは再び山の週末の開始である。 (2007.4.8)

【参考コースタイム】 秋雲橋P 8:20 → 尾根取付き 10:15 → 旭岳頂上 12:25 、〃発 12:35 → 尾根取付き 13:15 → 秋雲橋P 14:20

  【メンバーsaijyoチロロ2

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