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   天幕(1052.3m)

    1/25000地形図「上 川」「中 越」

石北本線踏み切り手前の林道入口に車を停める
シビナイ川林道の様子(Oginoさん提供)
858m標高点付近ではかなり視界が悪くなる(Oginoさん提供)
頂上まで200m地点から
さすがに、ここの通過は怖かった (シビナイ川林道)

上川町の国道沿いには手頃に登れる1000mクラスの山が三つ(天幕山、擂鉢山、突角山)あり、日帰りツアーには格好の場となっている。以前、私の友人があるガイドブックで余市三山(余市岳、朝里岳、白井岳)と表現されていたフレーズを捩って、この山々を上川三山と名づけ会話の中でもそう呼んでいた。確かに山の話をする際には便利な表現である。その後、この総称を意外なところからしばしば耳にすることがあり、経緯を知っている私としてはついふき出しそうになった。ゆっくりではあるが山仲間には確実に浸透していたようである。それはさておき、13年ぶりにその一角である天幕山へ行ってみることにした。以前は天幕駅側からスキーを持って鉄橋を渡り、南西に伸びる長い尾根に取り付いたが、この時の記憶といえばこの鉄橋を渡った時の突然カーブから現われそうな特急オホーツクへの恐怖心ばかりである。

天幕の名は天幕駅に由来するが、駅名が地区名となりそのまま沢名となっている。その天幕沢の水源の山ということで天幕山の山名となった。天幕駅は廃止となり現在は記念碑のみが残っているが、それには「明治29年8月、当時の北海道庁 鉄道建設部長 田辺朔郎氏が全道の鉄道線路踏査のため当地に入った際、天幕三次郎なる人物に世話になった思い出から駅名を「天幕」とした。(北海道旅客鉄道株式会社旭川支社)」と記されている。また、この景勝の地を三次郎自身が「天の幕が垂れるように見える」と自ら命名したという説(札幌学院大学鉄道研究会)もある。いずれにしても出所不明な和地名が多い道内にあっては珍しく出どころのはっきりとした地名である。

低気圧がサハリンを通過してオホーツク海で発達、それにともなった寒冷前線が北海道を通過して各地に警報、注意報が発令する不安定な天候の中、不思議と上川地方だけが警報なし。先行き不透明だが現地へと向かう。途中、荒天時の代案として考えていた深川・常磐山付近を通過するが、地吹雪状態で何も見えず、とても山に登ろうといった雰囲気ではなかった。今回は高速道の終点となる天幕ICが登山口であるため、とりあえずはそこまで行ってみようとのこと。もっとも旭川在住のOginoさんによれば、冬型の気圧配置の日は西からの強風がまともに叩きつける常磐山付近は特に悪いとのことであった。

天幕ICまで来ると地吹雪模様ではあるが、少なくとも林道を歩く分にはなんとかなりそうである。入山口となるシビナイ川沿いの林道入口に車を置き、雪が飛ばされてカリカリ状態の林道へと進んで行く。デブリのために林道が斜面と一体化しているところをトラバースで通過、強風で時折雪煙が舞っているがとりあえず行けるところまでは行ってみよう。この状況では皆も同じ考えだと思う。沢沿いの林道は平だが両岸の斜面は急角度で落ちていて、ちょうどV字の底を通過している状態である。斜面は頭上遥か見上げる感じで、針葉樹林帯がズリ落ちる雪面をかろうじて支えている感じである。例えて言えば、交通量の少ない高速道路を皆で渡っているとでも表現すればぴったりかもしれない。さすがに樹林のない大斜面下の通過では、皆が同時に埋まってしまっては万事休すとなるため、メンバー間の間隔を思いきり大きく取る。(右写真)とはいえ、雪のブロック1つが転がってきて運悪く追突でもしようものなら決して無事にはすまないところだ。

天幕山頂上に到着 雪煙を上げて

734m標高点のある尾根の末端で斜面に取り付く。カリカリの雪面に10〜20cmくらいの新雪が積もっているようだが、新雪がズリ落ちるほどの弱層ではなさそうだ。キックターンを繰り返しながらも除々に標高を上げ、標高差にして50mほど登ったところで平になる。頂上台地へ東側から近づく尾根上で、地形図を見る限りここから先のアップダウンは割と少なそうだ。ただし、左方向から常時吹き付ける強風のために顔が冷たく、時折顔の方向を変えながらの前進である。しばらく進んだところで林道を1本通過する。先ほどの林道で、そのまま進んでいてもここで合流することになる。この林道を過ぎる辺りからは尾根も細くなり、858m標高点付近に到着する頃には視界がかなり悪くなる。目出帽を用意、いよいよクライマックスである。

地形図上から察するに、頂上へは広い急斜面となっていて雪の状態が判らない以上は不用意な立ち入りをすべきでない。西高東低では西風と思っていたが、この日の強風は南西もしくは西南西のようである。とりあえずは風の影響が少ないと思われる一本北側の尾根から回り込む形で頂上へと向かうことにする。ところがラッキーなことに、コルへ下った辺りから視界が利き始め、樹林の様子も見えてくる。まずは樹林帯へと逃げながらのルート工作である。雪崩を気にしながら斜面を横切る形で進み、北側の尾根上へと上手く乗ることができた。風も信じられないほど弱まり、あとは緩い雪面を頂上まで真っ直ぐに進むだけである。GPSで距離を見たところ約200m、登り詰めた先が頂上だ。

平らな頂上に到着すると再び横殴りの強風で、視界はまるで利かない。13年前の時もそうだったが、山は今回もまた笑ってはくれなかった。ただし、ひょっとしたらダメかな…と思っていただけに、儲けものの一山であり、達成感100%であることには違いない。「このメンバーだから登ってきたんだ!」との声。確かにその通りである。今回初参加のYokさんには我々のこの拘りがどう映ったことか…あまり一般的には耳にすることがない天幕山、しかもこの日の荒天での登山ともなればなおさらである。しかし、下りでは意外なご褒美が我々を待っていた。頂上が強風のため、少し下ってからシールを外そうということになる。シールを付けたままにもかかわらずアザラシシールを取り付けたときのあの滑らかな感覚。風は再び鳴りを潜める。シールを外しての滑りについては言うまでもない。メンバーのだれもがこの冬一番と絶賛するほどの雪煙を上げての流れるような滑走の瞬間であった。(2010.3.14)  

■LuckyさんのBlog「天幕山」へ

下山後のラーメンは心身共にホットさせてくれる

【参考コースタイム】

石北本線踏切(シビナイ川林道入口) P 8:55 尾根取付き 10:10 天幕山頂上 12:00 、休憩地点発 12:25 石北本線踏切(シビナイ川林道入口) P 13:40   

 (登り3時間5分、下り1時間15分)

メンバー】Oginoさん、Yokさん、Luckyさん、saijyoチロロ2

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