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       天狗(375.9m)

 

   

朝日に映える天狗山と滝見橋
朝日に映える天狗山と滝見橋

 1/25000地形図「滝 下」

滝見橋の袂に車を停める
3年前にあったといわれる刈り分け道の入口
藪をかき分けて急斜面を登って行く

 また天狗に登ってきた。このサイトを始めてから14番目の天狗である。以前に登った小平町の大天狗の手前にある天狗山で、標高が376mとかなり低いにもかかわらず、断崖となった岩肌をむき出したこの山の姿は天狗の名に恥じない立派さを感じさせる。付近には以前に天塩鉄道の小規模炭鉱が点在、昭和10〜30年代には多くの人々が住み、それなりの賑わいがあったらしい。その後、昭和42年に炭鉱は閉山、過疎化が急に進んだようである。この山には期待された観光資源「天狗の滝」(二段30m)があり、神事もとり行われていたとのこと。小平ダム完成後への期待は大きかったようだが、期待したほどの成果は得られなかったのかもしれない。滝へと続く歩道も現在は立入禁止、滝に近づくどころか見ることすら出来ない状況となっている。

途中で見つけたボリボリ

 時代は移り、今やWeb情報というのが大きな宣伝効果を生み出す時代。車での移動や寝泊りは当り前で、特にダム公園には通年利用できる24時間のトイレも完備されており、秋の行楽シーズン等には間違いなく魅力ある観光スポットとなりうる。この素晴らしい滝を世に大きく紹介するためにも、せめてこの滝への歩道だけでも早急に再開させてほしいものだ。なお、天狗山のもともとの名はサンヌプリ(浜手にある・山)、大天狗山がホロサンヌプリだが、故・すがわら氏は棚(物を置く平らな台のようなところ)という解釈もしていた。遠くから見るこの山の形から言えば、後者の方がこの山にはふさわしいように感じた。

 この山を登るにあたり、Web上FT Wanderer + DXというBlogを参考にさせて頂いた。そもそも、この山へは南西側の尾根末端から取り付く予定で現地へと向かう。前述のサイトによれば3年前の時点では測量のための新しい刈り分けがあったとのこと。途中、滝見橋の袂へ立ち寄ってみたところ、確かに刈り分けらしき形跡が残っている。であればと、全ルート藪漕ぎ覚悟でこのルートをたどってみることにした。かなり怪しくなってはいるが、踏み跡らしき形跡は細々続いている。三角点?のあるダム湖の護岸よう壁の縁上に続き、急な藪斜面を登り詰めるが、登りきったあたりで見失ってしまった。途中、一旦平らになってからもピンクテープがところどころに見られ、基本的には3年前の測量時のルートをたどっているようだ。形跡が完全に消えてしまっても強烈といったほどの藪ではない。前方が再び急傾斜となって天狗山本峰の斜面に取り付く。季節柄、倒木にはボリボリが群生、帰路にでも採って行こうとの話となる。もちろん、こんな藪中で下山時も同じルートをたどれるといった保障などない。藪斜面の登りは単調できついだけだが、全身運動でそれなりにぐんぐん標高を稼げるのが良い。ある程度登ったところで、再び踏み跡が姿を現す。ルートについては我々も測量ヤも考えるところに大差はないということだろう。

途中から見るおびらしべ湖 三等三角点「小天狗」
天狗山頂上にて 頂上から見る天塩山地・主稜線の山々

 ふと気付くと足元にはケーブルが続いている。使用されているものなのかどうなのかが判らず、とりあえずは触らぬようにしたが、稜線上で樹木に巻かれており、上り下りのロープの代わりに使用していたものと判った。ちなみにこのケーブル、下降時に使用してみたが、ロープよりも滑りが良くて、快適だった。頂上への稜線上はしっかりとした刈り分け道が続いており、正に登山道そのものである。そのまま登り詰めるとほとんど藪を漕ぐことなく頂上(三等三角点「小天狗山」設置)となる。頂上手前には落とし穴ではないだろうが、真四角に深い穴が掘られて放置されていた。三角点でも移動するのかと考えたが、そうそう簡単に移動する類のものでもない。いずれにしても、何か標石でも埋め込むための準備途中だったのだろう。

 頂上は360度とまではいかないが、それなりの展望は得られる。特に天塩山地の山々が良い。少々マニアックかもしれないが、南の鷹泊・坊主山から北の小平蘂岳までの山々を指呼することができる。楽しみにしていた大天狗岳の見事な岩壁は、あいにくガスがかかって見ることが出来なかった。ここの眺望に彩りを添えるのがおびらしべ湖の湖面だが、こちらは如何せん茶色の湖面というのが残念なところだ。この日が偶然そうだったのか、流れ込む川自体がそうなのか、いずれにしても濃い青やエメラルドグリーンであれば言うことなしなのだが… 当初、ここから天狗の滝への下降も考えたが、次の山の予定もあり時間がかかりそうなので、それは次回の楽しみとして取って置くことにした。

 下降時、当初登路に考えていた稜線をそのまま下って尾根末端を目指す。ところが、測量ルート分岐より先に踏み跡は見られない。シカ道くらいはあるものと思っていたが、稜線上の踏み跡はやはり測量時のもののみのようである。取り置いて来たボリボリも残しているし、結局往路まで戻ってから下ることにする。ケーブルにつかまって下降、その先で往路を完全に見失ったが、偶然なのかボリボリのところへと飛び出る。視覚的には判らないが、藪の被った判然としない斜面でも潜在的にはルートが残っていて、何となく歩きやすくなっているのかもしれない。

 仮に、今回のルートの笹刈りを半日かけてでもやれば、直ぐにも登山道は出現するだろう。アウトドア目的としてこの周辺を考える場合、登山は今の時代には欠かすことの出来ない要素の一つといえる。低山が多いこの山域だが、逆を言えばそれだけ余裕のある日帰り登山を楽しむことの出来る山域でもある。さらに天狗の滝を経由する登山道でも開削されたなら、天狗山は人気の山となること間違いなしだ。札幌からでも高速道路を使えば日帰りのエリアであり、今後の的確な整備を期待したい。もっとも、私個人の気持としては、今の静かなままが良い。それこそが北海道の魅力ある藪山らしさそのものといえるからである。(2012.10.14)

【参考コースタイム】 滝見大橋 P 7:00 天狗山頂上 8:35、〃発 9:10 → 滝見大橋 P 10:15  (登り1時間35分、下り1時間5分)  

メンバー】yabuさん、Ko玉氏、saijyo、チロロ2

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