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  天望山(1173.9m)

「くちびる山」とも言われている天望山  然別湖畔温泉から

1/25000地形図   然別湖」「勢多山」

途中、白雲山が迫力を増して行く 天望山頂上の三等三角点「沼ノ上」と金麦
旧白雲橋近くの登山口に車を止める
北海道電力の旧宿舎  なかなか趣のある建物だ
途中の湖畔から見た然別湖
途中の湖畔から見た然別湖
獣道のように笹が被った登山道

 天望山は然別湖の景観を形作る上で1つのポイントとなる山である。然別湖畔温泉開発の祖と言われている清野正次翁(1880年〜1946)による命名だが、誤記かどうかは判らないが、地形図上ではしばらくの間“展望山”と記載されていた。そんな事情からか、町史その他でも展望山となっている。湖を隔てて温泉側から見る天望山は「くちびる山」とも呼ばれているようで、そんな見方で見れば、確かにそのようにも見え、格好の良い山とは思えない。もう1つ、夕影山というのもあるらしいが、こちらであれば格好が良い。あまいものこさんのサイトにある「地質学者の残したアイヌ語山名」ではオプチシュサツペツがこの山の山名とある。私個人としては和名の山名よりはこのアイヌ語名の方が北海道の山らしくて親しみを感じる。この山は昨年の白雲山へ行った折に登り残していたので、時期を見て一度は頂上を踏みに行こうと思っていた。楽しみは何と言っても東側の東雲湖で、今回は白雲山をパスして天望山のみを目指すことにした。  

天望山へ

ヨツバヒヨドリはこの時期の主役

 スタートは昨年同様で白雲橋からである。準備OK、いよいよスタートである。ところが、昨年も訪れたはずなのに誤って閉鎖中の建物の前へと進んでしまった。登山道は駐車地点の入山ポストのすぐ横であった。さすがに還暦が近づくと記憶力の方も少し怪しくなってきたようだ。この建物だが、なかなか趣きのある建物で、放置しておくのがもったいない感じである。改装でもすれば立派に洒落た宿泊施設となるだろう。後日、調べたところでは北海道電力の宿舎だったらしい。再度の電気料金の値上げ申請が取沙汰されている昨今だが、利用者である我々登山者に開放というのも良い方法だと思う。遊歩道はこの建物のすぐ横を通過、然別湖の湖面に沿って続いている。途中、休憩がてら湖畔に出てみたが、然別湖の静かな風景を楽しむことが出来て、なかなか良かった。

 約30分でコルへの分岐に到着となる。ここからコルまではこの日初めての本格的な登りとなり、ここで白雲山を下山してきた一足速い登山者とすれ違う。昨年は紅葉が終わりに近い時期であったため、この辺りでは色づいた木々の葉を楽しむことが出来た。今回は紅葉には早く、時期的なものを考えれば少し中途半端だったようだ。コルまでは約1時間、コルからはいよいよ昨年来のリスタートとなる。背の低い笹が被っているが、概ね登山道はしっかりとしている。南ペトウトル山や西ヌプカウシヌプリもそうだったが、然別湖周辺の山々は見た感じでは笹が被った不明瞭な登山道が多い。一見獣道のように見えるこの登山道は斜面を巻くように標高を上げて行く。振り返れば白雲山が鋭角的に見え、標高を上げるごとにその迫力を増して行く。ここのところ低山歩きが多かった私としては、山に登っていることが実感できて実に楽しい。途中、ピンクテープで通行止めとなった分岐が現れるが、登山道のみを見て行動していれば確かに間違えてしまうだろう。

天望山頂上から望む、然別湖畔温泉街と南ペトウトル山 頂上から望むナイタイ山
下山途中、東雲湖が見えてくる 東雲湖の湖面には湿原植物が顔を出す

 分岐から方向を変えて登って行くと笹原と白樺の広い斜面となり、いかにも開放的な道東らしい光景となる。花の時期ではないので、あまり期待してはいなかったが、ヨツバヒヨドリやリンドウなど、この時期にはこの時期ならではの花たちが目を楽しませてくれる。そうこうしているうちに笹原の中に頂上の高みが見えてくる。頂上には先客の二人連れが休憩中で、頂上のひと時を楽しんでいる様子。聞けば奥さんも一緒に登れる山ということでこの天望山を選んだらしい。確かに手頃な山ではある。つい先ほどまでは正面にウペペサンケ山がその大きな姿を現していたらしいが、すっかり雲の中に隠れてしまったようだ。それ以外の遠望山や南・北ペトウトル山、ナイタイ山など、然別湖を取巻く山々は概ね見えている。誤ったネーミングで呼ばれていたが、確かに展望が良く、それはそれで納得できる山名だったと言える。

東雲湖へ

 さて、次は東雲湖である。しばらくは緩い下りが続き、急斜面に入ると木々の間から鏡のような東雲湖が見えてくる。湖面まではけっこうな下り。つづらを繰り返しながらゆっくりと高度を落として行く。笹薮の下降を想像していたが、それなりに登山道は明瞭だ。登りの西面とは異なり、こちらは既に秋の様相。咲き乱れるリンドウもつぼみのままの状態で枯れ始めている。東雲湖に近づくと何やら賑やかな様子。ナキウサギの生息地とされる東雲湖付近で自然観察会が行われているようだ。天望山へは登らずに東雲湖のみを目指すハイカーも多いと聞く。

 東雲湖が見下ろせる展望台とも言えるところへと出る。団体さんは去ったようだが、まだまだ多くのハイカーが大きく広がる湖面を楽しんでいる。時折、ナキウサギの「キィッ」という鳴き声が聞こえるが、その姿を見るには腰を据えて視覚がナキウサギモードに変わるのを待つしかない。 タケノコを見つける時と一緒で、一匹見ることができれば後は自然に見えてくるものである。湖畔へは踏み跡をたどることになるが、途中からは背丈以上の笹薮が邪魔して踏み跡そのものが明瞭ではない。もっとも、足下の笹は刈り払われているので、藪漕ぎというには少々おおげさかもしれない。我々は湖面に降りてみたが、湖面には湿地性の植物が頭を出し始めており、湖全体の乾燥化が着実に進んでいるようだ。(2014.9.14)  

【参考コースタイム】 白雲山登山口 825 コルへの分岐 855 →  コル 925 天望山頂上 10:20、〃発 10:55 東雲湖 1155、〃発 12:35 コルへの分岐 1335 白雲山登山口 1410 (山行時間 5時間45分)

メンバーsaijyo、チロロ2

 

 

 
森のキッチン     

「森のキッチン」でのランチ

今回の山行時間はかなりゆっくりで6時間。手頃な割には見所の多い山旅であった。帰路は鹿追町の「森のキッチン」へと立寄る。チロロ2さんが、然別湖周辺の山へ向かう時にはいつもこの看板を見ていたらしい。量的には少々物足りない感じだが、味はなかなか、登山の帰り道でもなければ十分かもしれない。無農薬有機肥料牧草で育てた牛肉「草原黒牛」が売りとのこと。こんなちょっとした余裕だが、然別湖周辺の山々を訪れる楽しみ方の1つとも思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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