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      樽前山(1041m)

風不死岳から望む樽前山

/25000地形図樽前

7合目には広い駐車場があり、道も整備されている
登山道周辺にはにコメバツガザクラが咲いている
今はこれを登って頂上とされる東山ピーク
今は近寄ることもできなくなった頂上溶岩ドーム

樽前山は北海道を代表する活火山の1つで、世界的にも珍しいといわれる三重式活火山である。有史以来、頻繁に噴火を繰り返し、中央の溶岩円頂丘も形成と崩壊が繰り返されてきたとのこと。現在のドームの誕生は1909年(明治42年)というから、かなり新しい。一般的に山は、一人の人間という短いスパンで考えれば“動かざること山のごとし”そのものであるが、地球の長い歴史で考えれば、この山への登山は揺れ動く船の帆先に登っているようなものである。最高地点は残念なことにドーム(1041m)で、噴出する火山性ガスのために登るどころか近寄ることもできない。1999年の噴煙活動以来、内輪山への立入りが禁止となり、以前のようにドームを間近で見ることができなくなった。その代わりとしてか、外輪山の東山ピーク(1022m)には立派な「樽前山頂上」の標識が立てられていて、これを以って登頂という認識が一般的である。

 30年以上も前の話になるが、一度だけドーム頂上を踏んだことがある。当時は現在ほど火山活動が活発でなかったこともあってか、立入り規制が緩かったのかもしれない。遊歩道を辿って西山ピークを目指したおり、途中で別方向へと踏跡が続いていた。足もとは脆かったが、好奇心からそれを辿って見ると、意外にもドーム頂上であった。頂上のすぐ近くには大きな火口があり、噴煙はなかったが、何か吸い込まれでもしそうな感じがして、覗き込むどころか近寄ることすらできなかった。屹立した溶岩塊が点在、まるでSF映画で見る火星の表面にでも立っているかのような荒涼とした光景が広がっていたという記憶が残っている。

 久々の樽前山、ドームの現在の姿を見てみたくて外輪南側の樽前神社奥宮を目指す。あいにくの雨模様だが、予報では午後から曇りとのこと。外輪山に出てもガスがかかっていれば無駄足となりかねないので、七合目の登山口にて昼までは待機することにする。登っても1時間、そう考えれば少々遅い出発であっても気楽である。ここ七合目ヒュッテの管理人・O氏は以前からの山の知り合いで、他の山は雨天のために登れないのでここに来たと言ったところ、ここも雨だよ…との返答。全くその通りだが、苫小牧のポイント予報はちゃんと見てから出てきている。ただし、話によると樽前山の北側はむしろ札幌の予報に順ずるそうだ。こんな狭い地域の天候特性はここの人間でもなければ知り得ない情報である。天候の回復を待つこと1時間、結局しびれをきらし小雨の中を出発する。遠くで雷鳴…と思いきや、それにしては長すぎる。聞き耳を立てたところ島松演習地の砲弾のようである。いくら注意をしても、し過ぎではないと自分に言い聞かせるが、やはり頭の中のどこかで悪天候に対する臆病風が吹いているのかもしれない。

唯一の緊急避難場所でもある樽前神社奥宮

山としては観光の延長線上にある山、さすがに登山道はしっかりと整備されている。ただし、登山道の木製の階段だけはどうしてもいただけない。第一、歩幅がまるで合わない。O氏によると、たまにハイヒールを履いた観光客もこのルートに現れるとのこと。この日も雨にもかかわらず、何組もの登山者と途中ですれ違っている。それだけ登山客が多く、登山道自体が広がって雨裂によって流される可能性も考えられる。一端の登山者であれば、このくらいの障害物は気にならないくらいでなければいけないのかもしれないが、やはり邪魔くさいものは邪魔くさい。だがしかし、我々も一般登山道を利用するからには道幅を広げぬよう、微力ではあるが“障害物”を忠実に辿る。

七合目からのスタートであり、駐車場からは直ぐに高山的な景観となり、20分も歩かぬうちに森林限界となる。辺りは敷き詰めたようにコメバツガザクラが花開き、斜面に付けられた歩道はその中をゆっくり外輪山へと続いている。外輪へ出るとドームが姿を現す。以前には通行できた内輪の遊歩道だが、立ち入ることが出来なくなった現在も未だに明瞭である。我々は外輪上の登山道を樽前神社奥宮へと向う。山の平穏、登山者の安全を祈願して立てられた奥宮、この石室は外輪南側、地元・苫小牧市を見下ろすように鎮座している。気になったのがここのお賽銭である。石室に覆われているにもかかわらず、火山性ガスによるものなのか、かなり腐食していた。風向きによっては外輪上であっても注意が必要ということであろう。

 さて、今年4月で誕生からちょうど100年目を迎えたドームであるが、以前よりも迫力が増したような気がする。雨天模様でガスがかかっていることによるものかもしれないが、噴煙自体も増したように感じられる。驚いたことに、頂上火口からも噴煙が上がっている。以前、ドーム頂上を踏んだ折に噴煙は無かった。これは間近で見ており、はっきりと覚えていている。さらに、向って左上の硫黄で変色した部分や、そこからの噴煙も無かったように思う。樽前山は少しずつ活動期に入っているのかもしれない。ともあれ、静寂な支笏湖と動く樽前山、国立公園制定から60年の還暦を迎えた支笏洞爺国立公園の魅力を満喫させてもらう雨の日ならではの樽前山・登山であった。(2009.5.31)
    

【参考コースタイム】七合目登山口 12:20 樽前神社奥宮 13:45 → 頂上 14:10、〃発 14:25 → 七合目登山口 14:45

メンバー】Ko玉氏、saijyo、m.saijyo

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