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    丹沢山(1567.0m) ・・・ 首都圏の有名どころを歩いてきた、が…

     

高尾山(東京)から丹沢山をズーム

  

1/25000地形図 大 山」「秦 野

登山口となる大倉バス停
塔の岳・丹沢山へは左側
土木機械で地固めされた尾根道 ・・・ここまでやるか
途中で枯れ草を食べていたシカ

 年二回目の本州遠征は、その名を耳にすることが多い丹沢山とした。首都圏の有名どころで、深田久弥の「日本百名山」にも入っている最もメジャーな山といった印象でこの計画としてみた。退職していつでも時間が使える身分ともなると格安航空運賃が簡単に利用出来ることもあり、2万円以内で東京まで往復出来るのが大きい。その分、道内の山のようにどこでもテントを張る訳にも行かないようなので、ホテル並みの料金を支払って営業小屋に1泊することにした。ちなみにこの山には多くの山小屋が点在しているようなので、頂上に建つ「み○ま山荘」に予約を入れておいた。

 事情を調べるのは面倒なので、とりあえずは出発地点となる秦野駅前に宿を取る。フロントに聞いたところ、となりの渋沢駅から大倉行きのバスに乗ると良いとのこと。小田急線で一駅、私鉄沿線とは言え、駅周辺は何となく田舎くさい。リュックを背負った人が並んでいたので、私も並んでバスを待っていると何やら奇声が聞こえてくる。変だ、・・・まあこんな人もいるんだろうと思って立っていたら、周りはそんな人ばかり。到着したバスは小田急のものではなく、どこかの施設行のものだった。大倉行きのバス停は隣りである。

 大倉というところには山岳スポーツセンター等の登山に関する施設が集まっている。丹沢山登山道へはレストハウスの横の舗装道路をそのまま進んで行けば良いとバス停にいた老人夫婦に教えてもらった。移動用にと巻いてコンパクトにしてきたスパイク長靴を解いてそれに履き替える。今一の天候だが、ここまで来たら行くしかない。舗装道路は徐々に傾斜が増し、やがて登山道となる。スパイク長靴はプロノで新調したものだが、なぜか重い。途中で石畳風の手の込んだ登山道が現れるが、これが何とも歩き辛く、横の踏み後を辿る方がずっと楽と思えた。内地の山は階段が多いようなので、雨の日にはスパイク長靴が滑らず威力を発揮する。特に泥道となった場合には効果的で、普通の登山道ではこれに勝るものはない。ただし、履き慣れていることが絶対条件ではある。

秦野の市街地が見える 本州の山はやはり宗教色が濃い
一等三角点「丹沢山」と金麦 私の泊まったみ○ま山荘 ・・・建物と食事とトイレは良い

 観音茶屋、見晴茶屋、駒止小屋、堀山の家、花立山荘、尊仏山荘と、営業茶屋や山小屋が次々と現れたのは変な意味で新鮮に感じられた。北海道では無人の避難小屋が一つあるだけでもメジャーな山をイメージさせるからだ。登山者が多ければ、さすが内地の有名どころと思えるのだが、雨のためか滅多に登山者と会わない状況では北海道の山と変わらない。にも関わらずこの営業小屋の数多さは何とも妙な感じがする。さらに妙だったのが登山道で、階段の多さは今年の屋久島・宮之浦岳で経験済みだったが、痩せ尾根上の綺麗に整地された平坦部分はあまりに出来過ぎで奇異な感じがした。道路工事でよく見かけるタンビングランマーで地固めしたのか、真平で見事と言うほかないくらいに整地されている。ここまでやるのなら、いっそのこと手摺でも付けてバリアフリーにでもした方が良いくらいだ。両側がシカ柵に覆われており、ガスって眺望のないこんな日は、とても山の中とは思えない感じである。崩壊部分には親切丁寧な迂回路が築かれており、山全体が完璧に整備された営業用の山といった印象である。

 塔の岳の頂上広場は数え切れないほどのベンチで覆われており、天気の良い週末等にはきっと多くの登山者で埋まるのだろう。私も日本人なので期待していた富士山が見えないのが残念なところ。雨脚が強まり、ここで止めたくなったが、予約を入れてしまった以上は丹沢山までは行かなければならない。丹沢山へは長い階段を下り、コル付近からは徐々に現れる階段を再び登り返す。雨さえなければ運動靴で十分だ。丹沢山頂上が近づくとソーラーシステムが忽然と現れる。その少し先が丹沢山頂上だった。一等三角点「丹沢山」に金麦を置いて記念の1枚。正に丹沢旅行の証の1枚である。終着地点である頂上に山小屋が建っているというのも見慣れぬ光景だった。

 正直に言わせてもらえば、この山小屋が疲れた。到着した時の会話で「料金は先払いですか?」との問いに対して、「山小屋はどこも先払いに決まっているだろ」との山小屋主人の無愛想な返事。「私は営業小屋に泊まるのは始めてなもので・・・」北海道の山しか知らない私としては内地の営業小屋の事情など知るわけもない。それ以後、会話は途絶える。雨のため他に登山者はゼロ。山小屋内にはこの主人の経歴について掲示されていたが、海外の良く判らない山に○○年登頂と、海外登山の経歴がずらりと並べられていた。これを見て凄いとは思わなかった。そんな外国の山など知らないし、どんなに凄いのかも知らない。私としては全く興味の無いどうでもよい話し。それよりも、9000円もの宿泊料金を支払っているのだから普通の対応くらいは出来ないものかと思った。なんせこの男とは会話がまるでかみあわない。どうせ北海道からやってきた百名山巡りの素人と色眼鏡で見ているのだろうが、まともな会話が本当に出来ない可能性もある。山のプロと称する連中には寡黙な山男といった印象で世の中に甘えているやつらは多い。余計な会話などこちらから願い下げだが、必要な言葉すら伝わらないのでは迷惑千万。少なくても商売でやっている以上、山小屋の主人としては会話のイロハくらい勉強すべきだ。一泊装備は背負ってきているのでテン泊という選択肢もあったが、金を払ってしまっては後の祭り。こりゃあ〜適わない。こんな時は寝るのが一番と、午後6時の晩飯まで客室で寝ることする。今日はバス停をまたまた間違えてしまったようだ。

途中から見た塔の岳 塔の岳頂上のニャンコ

 夕食とのことで起こされたが、この小屋にはもう一人居た。調理人である。木訥な感じだが、普通に会話が成り立つ。ネットを調べて予約を入れただけにさすがに凄い夕食。焼肉や野菜が実に美味い。とても山小屋で味わう夕食とは思えなかった。壁の情報から、この調理人は山のプロではないようなので一安心。調理人の労に感謝する意味で、3缶ほどの手持ちの金麦は残っていたが500円(350mℓ)のラガービールを購入する。夜通しの雨、屋根に雨が叩きつけているが、いつの間にか熟睡してしまった。

 翌朝は雨も小降りとなる。外でタバコをふかしていると、例の主人(登山家と表示)が寒暖計を見て「氷点下か・・・」(見たところ氷点下0)と大きな声でぼそっと独り言。ひょっとしてこれって客サービスのつもり? が、やはり会話にはなっていない。札幌に住む私としてはこの時期の氷点下0℃は当たり前。むしろ暖かくさえ感じられる。朝食を頂き、さっさと退散とする。

 塔の岳頂上で、残っていた金麦をやっつける。座っていたベンチの下から毛並みの良いニャンコが顔を出す。「おっ、こんなところで何してるんだ」 標高1491mと言えば、暑寒別岳の標高だ。しかも12月。ニャンコをかまっていると、下からここの山小屋「尊仏山荘」の主人が上がってきた。どうやらこの小屋で飼われている猫のようで、おやつをもらいに主人に駆け寄っていった。動物好きに悪人は無し、この小屋に泊まった方がよっぽど良かった。

 塔の岳からの下山途中、後ろから例の会話のかみ合わない男が下ってきた。そうとは知らず除けてやると「待たなくてもいい」と一言。素人に待ってもらっては彼のプライドに傷が付くのだろう。そうだ! 少し煽ってやろう。距離を少し空けて追いつかぬようにこっちも本気で下る。一度振り返り「速いな」と一言。彼の速度はさらにぐんぐん上がって行き、平坦になったとたん走り出した。さすがにこれ以上は追っかける気にもならなかった。プロノのスパイク長靴が妙に重かったことと、すっかり酔いがさめてしまったからだ。後になって気が付いたことだが、この長靴は鉄芯入りの安全靴仕様で、丈夫だが重すぎて百名山めぐりには無用の長物だった。何はともあれ、丹沢山は無事終了である。計らずも百名山は、我が北海道の9山と屋久島・宮之浦岳、ここ丹沢山の11山を立派に踏破したことになる。ビールのせいかゲップが出てきた。百名山めぐり、もういいか・・・ (2016.12.13)

【参考コースタイム】12/13 大倉バス停 P 8:55 塔の岳頂上 12:40 丹沢山頂上 13:50 12/14 丹沢山頂上 7:25 塔の岳頂上 8:30 大倉バス停 P 10:40 (登り4時間55分、下り3時間30分  休憩時間を含む)    

メンバーsaijyo

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