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      多聞(788.3m)

林道から望む多聞岳

  /25000地形図  「奥芦別」

多聞川の林道は約2.5km進むことが出来る
多聞岳を見ながら沢沿いに進んで行く

 「多聞岳」、北海道に在っては珍しく信仰色の濃い山名と思える響きである。道南の蟹缶岳(カニカン岳)と共に酒飲みには涎の出そうな山名で、以前から機会があれば一度は登ってみたい山であったが、標高は788mと低く、国道452号線(現在夕張〜芦別)が開通するまでは札幌からも遠いため、この山だけを目指す気にはなれなかったというのが正直なところである。

  ルートは多聞川沿いの林道を使うことにする。国道452号線から富良野へ向う道道135号線(美唄〜富良野)へ入り直ぐに現れる橋の手前がこの林道の入口である。この林道の入口にはゲートはあるが、施錠はされていない。意外にしっかりとした林道であるが、約2.5kmも進むと崩壊地点となり、この先にも崩壊地点があるため、車はここまでである。この時期、林道周辺の沢沿いにはエゾノリュウキンカが比較的多く見られ、心を和ませてくれる。この林道は.361m付近からは造材路となるが、随所で崖崩れのため通行出来ず、沢に降りて先を進む。

作業道もまだ雪渓に覆われていた

正面が頂上  最後のひと登り

多聞岳頂上は樹木に覆われていた 頂上からの眺め

 コンタ460m付近で多聞岳北東の肩へ向う尾根に取り付くことにする。取付きはかなりの急傾斜となっていて、木々を伝わり何とか攀じ登る。尾根末端部が地形図では表現されていない急斜面、あるいは崖となっていることは多いが、尾根全体で考えると地図上の等高線の込み具合と必ず一致するので、その後の薮漕ぎさえ我慢すれば、あとはどうにか登れるものである。ただし下降時の藪中でのルート取りは難しく、進行方向を少しでも間違えると最後の詰めで崖や草付が現れることもあり、場合によっては登り返さなければならなくなる。この時期でも最低限の装備として、ザイルは持って歩くべきであったと反省する。

尾根上には作業道が何本も入っていてこれを利用するが、作業道上に残る雪渓は硬く、今回は長靴山行としたが、長靴ではキックステップも利かない。やはり靴底の硬い登山靴、もしくはピッケルが必要である。作業道も雪渓のために所々で通過困難となり、雪渓も急傾斜であるため、出来るだけ笹や潅木を伝って上部へ登って行くことにする。結局、作業道は頂上直下まで続いており、南西に延びる稜線まで出てから少しの薮を漕いで頂上へ到達する。

低山であり樹木も多く展望はあまり利かないが、木々の間から夕張山地の中天狗、中岳、芦別岳などの鋭峰を違った角度から眺めることが出来る。三角点はまだ雪渓の下のようで見つけることは出来ない。ザイル無しで沢筋へ下降出来る地点は限られているため、下山は最初に取付いた尾根の頭まで移動し、尾根筋を忠実に辿ることにする。

それにしても、この山の命名は興味のあるところだ。それこそ清酒「多聞」が好きな測量官が付けたのか、本来の意味である毘沙門天に因んで、何かの守り神としての願いを込めたものなのか… 後日、芦別市の「星の降る里百年記念館」を訪ねて聞いてみたが、さすがに標石の命名の経緯についてまでは調べがつかなかった。

 この山域はおよそ登山や観光の対象となる登高慾をそそられるほどの山は無く、ほとんどが林業の山である。頂上まで作業道があり樹木に覆われているが、林業が衰退の一途を辿っている現在、意外に自然が復活し残されて行く山域であるのかもしれない。 (2003.5.11)

【参考コースタイム】林道(車止め) 9:58 → 尾根取付 10:46 → 多聞岳頂上 12:08、〃発 12:33 → 尾根取付 13:27 → 林道(車止め) 14:04

メンバーsaijyo、チロロ2

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