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      峰古峰(661.0m)

 

歩いて10分ほどで姿を現した多峰古峰山

    1/25000地形図「不風死岳」 

歩道に車を半分乗り上げた形で路上に駐車する
小尾根は細かなキックターンで登りきる
実際は、写真よりは登りがきつい

 

急斜面をトラバース気味に稜線上へと向う

 多峰古峰 (タップコップ) 山は、支笏湖の外輪山の一角であり、アイヌ語が示す通りにコブのような感じの小山である。湖面からの標高差は400mと、それなりに登山の対象としての登り応えは保っているが、低山であることに変わりはない。八谷和彦氏の著書「ガイドブックにない北海道の山50」で紹介されて以来、手軽なスノーシュー人気も加わって、かなりの賑わいを見せるようになった。苔の洞門への駐車場から約1kmほど先、シシャモナイ沢へ向う林道の入口付近がこの山への大方の登山口となる。到着してみて困ったのが、駐車するスペースが全く無いことである。支笏湖南岸を通る国道276号は美笛峠の通年通行化によって利用する車両が増え、特にニセコ方面への大型バスの通過が目立つ。我々も交通障害になることは重々承知していたが、歩道に車を半分乗り上げる形で路上に駐車する。この日は我々以外にも数パーティが入山しており、今後もさらなる登山者の増加が考えられる。付近には適当なパーキングエリアはなく、「健康日本21」を謳っている国の政策上、ぜひその一翼を担う登山文化の振興のためにも駐車スペースの確保を願うものである。

 林道から、岬のように飛び出す445m標高点のある尾根を巻いて、多峰古峰山の直ぐ北側の大きな谷地形を目指す。今回のメンバーの1人であるTakaさんが14:30分の新千歳空港発の便で山口県へ帰るため、出発時間に間に合うようにと考えた最短ルートである。大きく見れば谷地形だが、その中にも小尾根が何本か走っている。地形図を見ると、その一つが頂上から北へ伸びる稜線へと微妙につながっており、これを使って稜線上へ抜けようと考える。この日までの降雪状態を考えれば雪崩れるリスクは少なく、無理なく抜けられそうな感じである。

 谷地形へ入ると小尾根はさらに細かく入込んでいて、概ね急傾斜ではあるが、細かなキックターンを繰り返せばどうってことはない。今回は10年ほど前に解散した山岳会の面々との久々の山行である。即席パーティとはいえ、以前は共に山へ向かったメンバーとあって、足並みはバッチリである。余談ではあるが、久々の旧メンバーとの山行であるにも関わらず、我が地図がガイドチームは行動食を湖畔に停めた車の中に忘れて来てしまった。 物乞い状態となり、メンバーの皆に余計な気遣いをさせてしまったことは反省材料である。いつもであれば、こんなことは絶対にないところなのだが… 

多峰古峰山頂上まであとわずか・・・ 頂上へと飛び出す「地図がガイドチーム」
「童人チロロの風」メンバーが集う多峰古峰山頂上 思いっきりが今一足りないのでへっぴり腰 (管理人)

 小尾根の詰めは、Yagさんを先頭に尾根の頭を巻いて、急斜面をトラバース気味に稜線上へと抜ける。稜線上はさすがに雪面も硬く、シールの効きが今ひとつである。約10分ほどで多峰古峰山頂上に到着する。展望が良い山とは聞いていたが、冬型の気圧配置の影響か西風が冷たく、遠い山は雪雲に霞んでいる。真正面には樽前山の大きな姿が見える。頂上のひと時、風下側へ少し下って風を避けるが、それだけでも日差しが暖かく感じられるところはやはり春山である。

 さて、いよいよ下降である。頂上の直ぐ北側の沢形が面白そうなことは、小尾根の登りの時に既に確認済みだ。場所によってはデブリも見られるが、この日の状態では雪崩れる危険性は感じられない。厳冬期の降雪後であれば間違いなく表層雪崩の巣となるであろう斜面も、スキーで下る分には何とも魅力的に見えるから不思議である。稜線からは雪庇を崩して斜面へ入る。硬い雪面に5〜10cmほどの湿雪がくっ付いたような状態で、見かけに反して硬い雪面となっている。この急傾斜の硬雪斜面ではどうしても気分的に守りの姿勢となり、中途半端にエッヂを立てようものなら思いっきり転倒してしまう。ここを上手に滑るには、やはり今一歩の思いっきりの良さと確かなスキー技術が必要となるが、なかなかそう行かないところが今の私の実力である。

  何度も中途半端な転倒を繰り返しながらも下って行き、多少斜面が緩くなった辺りで、やっとまずまずの深雪となる。しかし、楽しい斜面を求めて止まないYagさんには格好の斜面で、正に水を得た魚状態であり、また、テレマークを楽しみに遠く山口県からやってきたTakaさんも、帰り際のこの時になって、やっとエンジン全開といったところだ。斜面がさらに緩くなった辺りで、上部から転がり落ちてきた大きな雪塊で埋め尽くされた沢形となり、登りで使った尾根上へと逃げて往路と合流する。

 山行を終え、山としてはコンパクトな多峰古峰山ではあるが、ルートの選びようでは十分にスキー登山の魅力を味わうことができた。今回のように、ツアースキーを目当てに本州方面から北海道にやってきた岳人にとって、たとえ滞在中の天候に恵まれずとも、まだまだ“北海道ならではの滑り”を諦めるには早いようである。新千歳空港からのアクセスであれば、出発時間ぎりぎりまで楽しむことができる山、これが多峰古峰山の最大の魅力といえる。(2009.3.15)

【参考コースタイム】国道276号P 8:55 多峰古峰山頂上 10:25、〃発 10:45 国道276号P 11:45
(登り 1時間30分、下り 1時間)

メンバーYagさん、Takaさん(山口県人会なのだが、なぜか道産子?…)、nakayamaさん、saijyo、チロロ2

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