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       (625.8m)

中富良野付近の平野から眺める高峰

 1/25000地形図 「野花南」

作業道路入口に車を駐める
鉄塔付近までは作業道路を使う
鉄塔が見えたら高峰への取り付きとなる

富良野周辺の数ある高峰の中に、なぜかそのものずばり「高峰」と名付けられた標高600メートルほどの山がある。決して目立った山ではないが、注意して見れば富良野付近の平野からは丘陵の上にちょこっと頭を出したこの山の姿を見ることができる。開発局やNTTの電波塔がこのピークの北側の鞍部に建てられているため、一見してこの小さなピークが高峰であると判るが、十勝連峰や芦別山群などの見事な山々の中にあっては少々見劣りするピークであることには違いない。しかし、円錐形のその端正な山容には、見る者に実際以上に高い峰を連想させてしまう魅力がある。この山名は単に標高や周囲の山々との比較からではなく、この山の整った山容が持つ美しさをも加味された呼称だったのではないだろうか、ついそんなことを考えてしまった。

高峰までの登りは木々が密生した急斜面

この山を登りに行くにあたって一番苦労したのはマイカーの駐車場所だった。7年前の那英山の山行の時には今回利用した電波塔の保守道路を下ったが、この時は道路入口が完全に雪に埋まっていたため、付近の農家に頼んで軒先に車を置かせてもらった。今回は別のルートからの登頂を狙っていたが、この山の周囲にはシカの被害から農地を守るためのシカ柵がぐるりと張り巡らされており、結局、この道路を使う以外に手がなかった。道内全域で3000kmとも言われているこの“シカ柵”だが、今後もさらにその距離を伸ばしそうである。野生動物との共存の難しさを如実に感じさせる一例ともいえる。

道路の入口にはNTTの資材小屋?が建っていて、四輪駆動車が入ったと思われるタイヤ跡があった。ひょっとして、何かの用事で関係者がやってきたらどうしようか…だが、今日は日曜日、短時間での往復も可能と思われるので、悪いが入口に車を停めさせてもらう。道路は大きくカーブを描いて徐々に標高を上げて行く。除雪されているわけでもないので、特に道路に拘る必要もない。思いきりショートカットで登って行くことにする。スノーモビルの走行跡と犬の足跡、遥か遠く農家の納屋に繋がれている白黒のブチ犬が我々の姿を見つけて怒っている。おそらくこの足跡の主であろう。このワンコの目には、我々が敷地内に無断で立ち入った怪しげな連中と映ったのだろう。そのうち飽きたのか、あちらの方角を見て吠えていた。

湿った雪質ではシールがかなり効くこともあって、ほぼ真っ直ぐに次のカーブの地点へと進むことができる。稜線まで上がってしまっては横の移動でのアップダウンで余計なエネルギーを使わなければならず、電波塔付近まではやはり道路の利用が効率的だ。単調なる道路歩きとなるが、平野を挟んで十勝連峰の大パノラマが広がっているので退屈することはない。カーブを回ると電波塔が正面に見え、ここからは道路を離れて本来の山旅の開始となる。とはいえ、後は本峰へのわずかな急斜面を残すのみである。

高峰頂上に到着

植林された薄暗いトドマツ林の中を大きく左に巻きながら進み、南東側へと下る比較的緩い枝尾根上に乗る。高峰の急斜面が前方に迫り、やがてその斜面への急登となる。傾斜は概ね30°、大きくジグを切って徐々に標高を上げて行く。真っ白で迫力の増した十勝連峰が背後に浮かび上がると頂上は近い。四月とはいえ富良野の平野は白一色、そんな白銀の世界が視界いっぱいに広がった。頂上直下の開けた斜面で一息、この地点は下界からは白く輝いて見えるところで、頂上とは目と鼻の先だ。ひと登りで、すぐに頂上台地の一端へと飛び出す。少し先のちょっと高くなったところが今日の終着地点である。チロロ2さんを先頭に、誰が立っても頂上と判るほど明瞭な頂上に立つ。地形図を取り出して北側へと下って行く枝尾根も確認、間違いなしである。

北側から西側にかけては樹林が邪魔して展望は利かないが、北東側から南西側にかけてはこの山域の南東側180°を受持っているかのような見事な眺望が広がっていた。芦別周辺の鋭峰はあいにく薄らとしか見えないが、尻岸馬内山や野花南岳などの低山は迫力ある姿で迫ってくる。年々札幌から程近い私の登っていない高い山はかなり少なくなってきている。今では600m、500mの山までもが目標とする峰となっているが、山の眺望は決して高さに比例するものではない。そんな意味で、ここの眺望には高い山ならではのものがあり、この山が敢えて“高峰”と呼ばれている理由の1つと考えても良いのかもしれない。

下りは樹木が密生した急斜面、雪質も最悪とあっては下りの方が辛くさえ感じられる。キックターンと斜滑降の繰り返しで、何とか電波塔との分岐点へと下る。道路に出てからはスキーの機動力を一気に発揮、車を停めておいた道路入口は意外なほどに近い終了地点となった。コンパクト過ぎるこの日の一山だったが、それはそれなりに充実感が感じられる満足の一日であった。(2012.4.8)

頂上からの眺め

【参考コースタイム】NTT作業道路入口P 9:20 峰頂上 10:55、〃発 11:20 NTT作業道路入口P 12:05    (登り1時間35分、下り 45分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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