<戻る

       台ノ下山(736.8m)

  
冬期閉鎖中の国道452号から見た台ノ下山

 1/25000地形図 「瑠辺蕊山」

512m小ピークへの分岐から十勝岳が見える
急斜面から振り返ると大雪山が見える
冬期閉鎖中のゲート前に車を置く
大雪山〜十勝連峰にかけての山並が美しい
稜線上には雪庇が大きく残っている

イメージ的にはかなり地味な感じの台ノ下山、この山の地名度は限りなくゼロに近い。というのは、どんな山でもWeb上で検索してみると大抵一つや二つはその記録が出てくるものだが、この山に関しては何も出てこなかった。登られるとすれば、地元の岳人が留辺蘂山への通過地点としてこの山を踏む時くらいのものかもしれない。現に「道北やぶ山日記」のOgino氏がこの山を経由して留辺蕊山へ登ったという話は聞いた記憶がある。この山のみの登頂を考え、札幌からわざわざ出かけて行く物好きは私の知っているところでは盟友のKo玉氏くらいのものだろう。しっかり調べた訳ではないが、この山名の由来については、この幌内山地自体が広い台地状で、その下方にある小ピークの三角点と考えれば“台ノ下”は自然な点名といえる。仮にアイヌ語が絡む場合で、“岱”の転訛と考えても、大森林帯の下に位置するという意味では何ら不自然ではない。いずれにせよ背後の留辺蘂山との関連は確実なところだ。

今回は旭川で学生生活を送っている息子のところへ出かけた折、あまりに天候が良かったため、ついつい手短なところでこの山へ登ってみることにした。国道452号の不通区間のゲートがこの山への入山口となる。春の陽気に満ち溢れ、乾いた国道路面と白銀の世界が混在するこの時期、人生半ばをとうに過ぎている私でさえ胸躍るものがある。春遅い北海道にあっては、やはりこの時期こそが最高の登山シーズンといえるだろう。国道は行き止まりの表示が早くから出ていて、ひょっとしたら相当手前からの歩きかと覚悟したが、ゲートはかなり奥に設置されていて、印刷していった地形図の中までしっかりと入り込んだ地点だった。地形図に表示されている国道を示す二重線を実際に歩いたのはわずかに数百メートルくらいのもの、嬉しい誤算のスタートとなる。

ゲート前に車を置いて除雪のない広い国道にスキーを滑らす。単調といえば単調だが、この日は雲ひとつない晴天、周りの景色を見ているだけでも気持が良い。枝尾根を跨ぐ地点からのり面に上がって尾根上へと出る。樹木のない平坦地となっているが、傾斜が増す辺りからは樹木の密生した本格的な登りとなる。湿気の含んだ雪面は登りに関してはほぼ真っ直ぐに進むことが出来て快適だ。やせ尾根の左側には落ちることなく残った雪庇があるため、万一のことを考えてこれを避けて右寄りに通過するが、尾根上の雪面は冬場の北西風の影響で波打って歩き辛く、結局は雪庇の下の雪面を進むことにした。ここに取り残された雪庇は、おそらく崩れることなくそのまま解けるのを待っているだけだろう。

尾根はコンタ600m付近で右に方向を変え、そのまま台ノ下山への急斜面へと続く。この日の雪質は最悪で、ところによっては雪渓の中がスカスカ状態、バランスを崩して転倒させられること度々である。場所によっては雪渓が完全に消えているので、雪渓から逃げて藪の上を、スキーを付けたままで歩く方がずっと楽な感じである。丹念にスキーのメンテをする御仁にはとても考えられない蛮行と映るかもしれないが、小泉元首相ではないが、人生いろいろ、考え方もいろいろということだ。だましだましその尾根上を進み、台ノ下山への急斜面までたどり着く。わずかの距離だったが、久々の単独ということもあって、距離感を一番感じる場面であった。

台ノ下山頂上の展望は樹木が邪魔してあまりよくない

 

頂上へと続く尾根上は少々狭く、右側には大斜面が広がっている。その大斜面には頂上台地の端から崩れ落ちてきた雪庇の大きな残骸が転がっており、あまり深入りしない方が身のためだろう。ただし、細かくジグを切って登るのもけっこう大変で、少しだけこの斜面も使わせてもらうことにした。雪面全体が雪崩れることはまずないだろうが、出合い頭の衝突だけは避けたいところ。上部に注意しつつ二度ほど赤信号を渡らせてもらう。

斜面が徐々に緩やかになり、頂上台地上に出る。今日のノルマは達成出来そうだ。この嬉しさはどこの山へ行っても同じである。地形図を見て150mほど前方に見える小さな高みが台ノ下山の頂上であることを確認、帰りのプランを地形図と相談しながら頂上に到着する。頂上展望は木々に邪魔されてあまり良くないが、途中までの天塩岳から北日高にかけての山並が全て見えると言っても過言ではない眺望を考えれば、チャラにしても十分におつりが来る。

この日の相棒は自分用に拡大コピーした一枚の地形図であったが、真面目に相談すれば真面目に答えてくれるようで、帰路は赤信号を一度も渡ることなく、私をすんなりと急斜面の下まで導いてくれた。巷では山ヤの間で、GPSが良いか読図が良いかの極端な議論が度々交わされているようだが、まだまだ地形図も健在であることをこの日の相棒は示してくれた。また、GPSも使い勝手の良い文明の利器であることに間違いはない。要はこちらがそれぞれの相手に対し、どれだけ真剣に向き合っているかどうかということに尽きるだろう。(2012.04.15)  

【参考コースタイム】ゲート前P 9:20 台ノ下山頂上 10:55、〃発 11:20 ゲート前P 9:20    (登り1時間35分、下り 45分)

メンバーsaijyo

<最初へ戻る