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      松籟山(1284m)・槙柏山(1184m)

頂上が尖って見える松籟山

 /25000地形図布部岳」

夕張中岳はどこから見ても格好がいい
新しく設けられたゲートからはスキーを担いでの林道歩きである。
1080mコルからの稜線。この後、細くなる。
大きくゆったりとした御茶々岳

  昨日の布部岳に続き、この山域で今回の参加メンバーが未だ登っていない山を目指し、十八線川へと向う。目指すは小天狗(1272m、1268m)の2ピーク、松籟山、御茶々岳、槙柏山、うち2〜3山である。何れの山も急峻であるが、十八線川からの斜面を標高1000m地点まで上がってしまえば、後はどのピークも射程圏である。山域の富良野側は急傾斜の厳しい地形となっているが、この斜面だけは唯一の弱点で、比較的登りやすい緩傾斜が御茶々岳と槙柏山とのコルまで続く。古くから、同山域へのポピュラーな冬期ルートとして、多くの岳人に重宝されている所以である。十八線川は砂防ダムが多く、4年前に訪れた時の車止めよりもさらに上流部に新たな砂防ダムが造られていた。残念なことに以前は終点まで車で入ることのできた林道は、入口の温水池から約1kmほどで突然ゲートとなる。真新しいゲートである。

 話は逸れるが、2001年から施行となったリサイクル法であるが、地球環境保全、限りある資源、真剣に考えれば絶対に必要な法律である。ただし、家電を廃棄する側にはそれなりのコストが要求される。販売の段階でのコストの上乗せをしてくれれば抵抗感が少なく済んだところなのだが、複数の廃棄では万単位の出費も要求され、結果として不法投棄を促進させてしまったようである。不法投棄の場として林道が一番に狙われたのか、林道への立ち入り規制が以前よりもずっとシビアになった。我々登山者にとっては全く世知辛い時代の到来といえる。この日も予定外に40分ほどもスキーを担いで歩く破目となってしまったが、ゲート近くの草むらにはテレビが鎮座していた。

 林道終点からはかなり古い作業道が続いている。融雪が進んで増水した十八線川には作業用の古い橋がかかっていて、ここを難なく渡ることが出来るのはこのルートの特典といえる。作業道は大きく曲がりながら広い斜面へと消えて行く。ここからは登り一辺倒の辛い時間帯が続く。昨日の山行でゴンドラを利用したこともあり、つけが回った形である。松籟山への1080mコルに到着する頃にはsakag氏以外の3名は完全に萎えてしまった。元気印のsakag氏、パーティの最年長者であるにもかかわらず顔色ひとつ変わっていない。この様子では全ピーク登頂をも狙っているのかもしれない…少々引いている自分を感じるが、こちらは目一杯であるにもかかわらず相手が全く普通であれば、誰だってそんな気にもなる。sakag氏は昨年の大病を克服して以来、さらなるパワーアップを果した感がある。氏を見る限り、個々にとっての大いなる人生とは、くよくよすることなくどんな時でも常に前を向き続けることのできる生き方、そんな生き様そのものをこう呼ぶのかもしれない。そうありたいと私も考える。

ごつごつした感じの小さな槙柏山 主稜線までの途中からは見事な芦別岳の山容が望める
極楽平付近からは中天狗の秀峰が… 昨日の布部岳も見える

 松籟山寄りに到着してしまったこともあり、利用すべき御茶々岳の緩い南斜面へ乗り移るには痩せた稜線を越えなければならなくなってしまった。傾斜の緩い斜面への下降と登り返しには結構なアルバイトが強いられそうで、しかたなく稜線にくっ付いた雪庇上を伝うことにする。安全と思われる雪面を一歩一歩探りながら進み、最後はシカ道を辿って予定の斜面へと抜ける。このシカ道については嬉しい誤算と付け加えておこう。

 主稜線までは大方緩い斜面のトラバースが続き、メンバーの気力も息を吹き返す。さて、いよいよ登る山の選択である。小天狗は対岸に見え、かなり遠い感じである。この山を目指した場合、他の山へはまず届かないだろう。そう考えれば、比較的近い、地形図上に名のある3山を選んだ方がより確実である。山行中の揺れ動く思考の中、不思議とメンバーの考えるところは一致するものである。sakag氏の提案は正にその3山であった。そうと決まれば、まずは一番遠い松籟山である。この山名の“松籟”、大辞泉の解説では松の梢に吹く風。また、その音。とある。何とも風流な北海道らしからぬ名称である。御茶々岳、槙柏山も同様である。それ以外にもこの山域の近くには多聞岳、金剛岳といった宗教系の名が付いた山もあり、どうも明治・大正期にこれらの山に関わった人々の環境が一枚噛んでいるような気もするが、正確なところは判らない。

  御茶々岳西側の斜面をトラバース、極楽平を目指す。斜面はズリズリだが、どうってことはない。極楽平へは御茶々岳の北側の平坦地から少し下ることになる。地形図上では広い平坦地の北側の高みに名が付いているが、実際はこの平坦地こそが極楽平である。無雪期には沼も出現、クマやシカの楽園となっているのであろう。この時期であれば針葉樹の疎林となっていて、確かに気持が良い。ましてや長い斜面のトラバースや急登の後にここへたどり着けば極楽そのものと感じるだろう。かなり遠くに見えていた松籟山も極楽平を通過した辺りからはぐんと近づいてくる。先頭のsakag氏は出来るだけ無駄なアップダウンをせぬよう、効率の良いルート取りを考えながら松籟山への距離を縮めて行く。

松籟山の尖った頂上にて…あまり良い写真がなかった 迫力満点の夫婦岩

  いよいよ目の前にコルが現れる。ここからは僅かであり、スキーをデポしての総仕上げである。ずっと気になっていた松籟山への攻めどころであるが、確かに途中から見る限りでは取っ付きようがないと感じた。コル手前に到着してさえ、どうルートを取ったら良いだろうといった感じである。ただし、ずっと考えていたのは我々の薮山仲間は皆踏んでいるという事実であり、登攀をやっての登頂といった話は聞いていない。そういった意味ではかなり楽観的に考えていた。案ずるより生むが易し、取り付きの急斜面は木々に掴まりながら、それより上は多少傾斜が緩んだ残雪の斜面をしっかりとキックステップで、気が付くと目の前には頂上を覆うハイマツが現れ、難なく視界360°の松籟山頂上に到着した。ゲートからは既に6時間もの時間が過ぎているが、仕上げのあっけなさのためか気分的には余裕である。折り返し地点、もしくはそれ以上の行程は既に消化したと感じる。

槙柏山頂上にて… 管理人

 北側が緩い地形となっている御茶々岳への往復は簡単である。これが急峻な南側からであれば笹に掴まりながらのキックステップを強いられるところである。 (5年前の山行)  西側から大きく緩い尾根に沿って上がって行き、程なく頂上丘横の“広場”に出る。ここは芦別岳山塊の絶好の展望台である。萎えまくった心も余裕へと変わり、道内随一のアルペン的な山塊をバックに撮影会である。頂上へは空身で2〜3分、この日2山目の頂上展望が広がる。芦別岳や夕張中岳の圧倒的な山容はもとより、三角形で鋭い尾根を落す松籟山、これから向うコブといえばコブに過ぎない槙柏山など、夕張山地が好きな私としては、どの山にも深い思い入れがある。

 再び御茶々岳・槙柏山間のコルへ戻り、3山目の槙柏山へと向う。ここも見上げるような急斜面であるが、松籟山を登頂してきた後でもあり、威圧感はまるで感じない。ただし、近道を考えての斜め上がりはリスクが大きく、まずは稜線に到達してから頂上を目指すことにする。頂上への稜線上には一ヶ所岩稜となった場所があり、ここは慎重に基部の潅木に掴まりながら巻くことにする。全体的にはかなりコンパクトな山であり、往復しても1時間はかからない。頂上には訪れる登山者がいるのか、樹木の枝先にはピンクテープが巻かれている。とらえどころのない御茶々岳の山容も、ここからの角度ではかなりまとまった感じとなり、意外に格好が良い。深い谷と急峻な山、芦別周辺の山々のイメージを一言で表現するなら、こんな言葉が妥当なところであろう。さて、充実の3山を終え、いよいよフィナーレは今シーズン最後の滑りである。その後の長い林道歩行はエコのためということで、この際、考えぬこととしよう。(2009.5.5)

「一人歩きの北海道山紀行」sakagさんの山行記

    

【参考コースタイム】十八線川林道ゲート 5:30 砂防ダム終点 6:05 → 1080mコル 8:15 → 松籟山頂上 11:15、〃発 11:30 → 御茶々岳頂上 12:55、〃発 13:15 → 1080mコル 14:30 → 槙柏山 14:55 → 1080mコル 15:20 → 砂防ダム終点 16:05 → 十八線川林道ゲート 16:40

松籟山まで(登り 5時間45分、下り 5時間10分)※御茶々岳槙柏山、休憩時間、すべて含む

メンバー】sakag氏、Hori氏、saijyo、チロロ2

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