<戻る

      シャクナゲ岳(1074m)

コル付近から望むシャクナゲ岳

1/25000地形図 「チセヌプリ」

眼下に広がる大沼
この時期、ニリンソウも多い
神仙沼付近の駐車場は観光客で埋め尽くされる
歩道脇にはシラネアオイが群生している
シャクナゲ岳頂上は南側が開けている

  シャクナゲ岳という山名は「一人歩きの北海道山紀行」のsakag氏によれば「昔はシャクナゲの木があったことに由来」とのことである。北海道の中で植物の名が山名となった例は珍しい。「笹山」「紅葉山」「桜山」といった一般的な名では見られるが、具体的にシャクナゲといった種類まで特定した山名となれば、他にはないような気がする。北海道でシャクナゲと言えば、やはり黄色い美しい花を咲かせるキバナシャクナゲが挙げられるが、おそらく以前のこの山にはこのキバナシャクナゲが咲き誇っていたのだろうと想像される。つい命名当時のシャクナゲ岳を歩いてみたいと考えてしまうが、今となっては無い物ねだり以外のなにものでもない。とはいえ初めて登る山であり、私にとってはシャクナゲ岳のすべてが未知であり、興味深い。普段の藪山山行では、地形図上の歩道を示す点線は既に廃道であったり、逆に立派な林道となっていたりで、ほとんど当てにすることもなく山行を計画しているが、さすがにハイカーに人気の“ニセコ”ともなれば全く地形図通りであり、そのことさえ新鮮に感じられる。

 登山口は最も一般的な自然休養林休憩所であり、かなり整備された観光スポットとなっている。この時期、竹の子が旬とあって、途中の道道66号線(通称:パノラマライン)沿いでは、竹の子採りの人たちの車で両路側帯が埋め尽くされている。さすがにこの休憩所駐車場まで来ると竹の子採りに混じって登山者の姿がちらほら現れるようになるが、中高年登山がブームと言われていても数の上では“山菜採り”には遠く及ばないようである。

 神仙沼付近は正に観光エリアで、綺麗な木道が敷かれ、一般観光客の往来が賑やかである。この日は出遅れたこともあり、自然休養林休憩所からしばらくはザックを担いだ我々登山者は少々場違いな雰囲気であるが、木道が切れるまでの少しの辛抱である。途中から長沼へ向い、その湖畔が事実上の登山開始地点となる。歩道は一変し、薮の被る登山道となって長沼に沿って続いているが、融雪によりところどころで水没している。竹の子採りを楽しむ人たちにも時々出くわすが、彼らも水没地点ごとに減って行き、向う岸に到着するころには登山者のみの世界となる。長沼と別れ、チセヌプリとシャクナゲ岳との間のコルへ向っての緩い登りとなり、やっと“雰囲気”が出てくる。標高が上がって行くごとに長沼の美しい青い水面が広がり登山者冥利に尽きる場面である。

 ニセコということで歩きやすい遊歩道と想像していたが、ところ所で薮が被っていたり段差があったりで、ぶらりと散歩気分というわけには行かない。とはいえコルから先はすっきりとした展望が広がり、やはり人気のニセコであることを実感させる。この時期、登山道の両脇にはシラネアオイが群生していて、まるで登山道に合わせて植え込んだかのように連なっているが、この登山道がなければ付近はただの笹薮だったかもしれない。登山道際は薮が薄くなっていてシラネアオイやニリンソウ等、多くの植物たちも息を吹き返しているように感じられる。付近は庭園の遊歩道といった感じである。小ピークを右に見ながらさらに一登りで、シャクナゲ沼のある頂上部へ到着する。今回は途中でゆっくりし過ぎたため、シャクナゲ沼はパスすることにする。分岐からは少々薮が被っているが、踏み跡程度の登山道を200mも歩けば頂上となる。頂上を示す杭が建っていて、南側半分の展望が広がるが、最高地点は少々手前の藪の中にあり、こちらからは360°を見渡すことができる。標識の建つ頂上には既に大勢の登山者が到着していて、それぞれに山座同定を楽しんでいた。

 凹地沼がニセコに四季折々の景観を作り出し、三者三様にシーズンを通して楽しめる山域である。登山ということで言えば、自分の体力にあった山やルートが手軽に探せ、アクセスも良い。団塊の世代が社会の一線を離れて行く今後、アウトドアの世界もますます成熟期をむかえ、ニセコあたりがその主役となって行くだろうと予感させられる思いであった。(2006.6.25)

【参考コースタイム】 神仙沼・駐車場 9:10 → 880mコル 11:00 → シャクナゲ岳頂上 11:45、〃発 12:25 →  神仙沼・駐車場 14:40 

メンバーsaijyo夫妻

<最初へ戻る