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   寿都・天狗(839.7)

723m標高点手前から見た寿都・天狗山

723m標高点手前から見た寿都・天狗山

1/25000地形図 「歌 棄」

牧草地の端に車を止める
ほとんど雪が消えた牧草地を尾根取り付きまで進む
306mポコから 723m標高点ピークを望む
尾根上に残る雪渓を進む (Ikkoさん提供)

  定年退職まであと12ヶ月。なぜか今年は急に休暇が取りづらくなり、こんな状況では山へのモチベーションなど上がるはずもない。1日/週の貴重な休日を山で使ってしまってはウイークデーまで疲れが尾を引き、日常生活が辛くなる。時間を要する山は来年以降に、と考えるしかないようだ。そんな中でのクリーンヒットとなったのが寿都の天狗山であった。現在乗りに乗っているIkkoさんは天狗山のみでは飽き足らないようで、観音山へも足を伸ばしたいとのこと。1年間辛抱さえすれば、いつでも山に入ることが可能になる私としては今は1日1山で十分、前の晩はそんな山のモチベーションに関するやりとりで盛り上がってしまい、予定を越えての山談義なる。

 いつものように前日の夜更かしを後悔しての朝を迎える。前々日は賀老山のUP作業を1時までやってしまったこともあって、寝不足解消のためには山談義はほどほどにと考えていた。だが、Ikkoさんが相手となるとついついエンドレスとなってしまう。

寿都の天狗山は地形図を見る限りではこの山域の主稜線からの派生尾根上のコブで、その奥深さもあって、つい後回しとなっていた一山。私とチロロ2さんは天狗山までとし、Ikkoさんにはmocoさんが付き合ってくれるということで、両者にとっての折り合いを付けての出発となる。まずはmocoさんの車を観音山の入山口に置いて、天狗山の入山口となる牧草地へと向かった。足回りはスキーかスノーシューか、それともワカン、つぼ足と、こればかりは現地入りしてみなければ判らない。観音山の入山口では辛うじてスキーに分がありそうだったが、到着した牧草地では全く雪がなく、日陰にわずかに残っている程度であった。結局はスノーシューをザックに付けてつぼ足での出発となる。

 雪面から顔を出したばかりの牧草地の端を歩き、目的の尾根末端へと到着する。笹薮とはいっても雪渓をつなぐことくらいは出来るだろうと考えていた。だが、取り付いた斜面は南西面で雪渓など全く残ってはいなかった。早速、今期初の藪漕ぎとなる。気になるのはマダニの出没だが、この日に関して言えば、一匹も見当たらなかったのはラッキーだった。小沢を挟んだ反対側の尾根には未だ多くの雪渓が残っているが、この尾根を使った場合、最後の詰めで苦労する。ここは笹漕ぎを辛抱しつつ尾根上まで登り、反対側には雪渓が残っているので、それを利用するのが得策と考えた。尾根上付近まで達したIkkoさんに呼びかけたところ、案の定、雪渓に出たとのこと。これで9割方は成功したと確信する。尾根上でパーティ編成を縦走組と天狗一ピーク狙い組に再編成、Ikkoさんとmocoさんにはマイペースで進んでもらうことにする。

306mポコに到着した私とチロロ2さん (Ikkoさん提供)

 雪渓をつなぎつつ、しばらく進むと306mのポコに到着する。Ikkoさんとmocoさんは既に出発、遅れ気味のチロロ2さんを待つ。眼下には黒松内低地が広がり、その向こうには月越山脈と母衣月山、さらには大平山の見事な山塊、真っ白な狩場山と、大パノラマが広がっている。ここに来るだけでも十分に価値あることのように思えた。チロロ2さんが到着。ふと見るとIkkoさんとmocoさんは次の高みの上部に到達している様子。さてさて、我々もこうしてはいられない。10分くらいで、彼らが見えた位置に到着、稜線上の雪渓を進む。行く手には笹原が広がっている。また、笹薮漕ぎかと思われたが、先行している彼らは見当たらない。どうやら北側へと雪渓を回り込んだようだ。この標高まで登れば雪渓の方が笹原に対して優位に立っているようである。我々も回り込んで急な斜面をひと登り。次のポコへと到着する。大パノラマの構成自体は変わらないが、見える範囲はぐんとワイドになり、先ほどの比ではない大迫力となる。なんせ、その迫力は高みに到着する度ごとに増してき、その度ごとに感動は高まるばかりだ。正にこの山ならではのものと言えるだろう。しばしその光景に見入る。

 再び尾根上の細い雪渓を進み、ここからがこのルート最長の急斜面の登りとなる。樹林帯の急斜面は場所によってはキックが刺さらず苦労させられる。眺望がないのが寂しいところ。途中、小尾根を越えると緩く広い雪面となり、そこを登り詰めると天狗山への稜線上となる。樹林の間に目指す天狗山が現れるが、沢形の向こう側で、まだまだ遠い感じである。723mの小ピークへ登ると眺望が一気に広がり、それまでにない感動的なロケーションとなる。ここからの天狗山は斜面が立っていて少々不安になる。先行するIkkoさんと少し遅れてmocoさんがその急斜面を登っている様子が見える。Ikkoさんは長靴だけで登っており、もちろんピッケルなど持ってはいない。そう考えれば、登れないほどの急傾斜ではないということだ。

 遮るもの1つ無い平らな尾根上を進んで行くうちに、ぐんと天狗山が近づく。見上げるとIkkoさんとmocoさんが頂上からこちらを見下ろして手を振っている。我々を待たずに先に進んで行くよう声を掛け、我々も急な雪面に取り付く。確かに足を滑らせれば滑り落ちて行くような斜面だが、長靴でも登れる。そう考えればプラブーツの我々がはるかに有利であり登れないわけがない。そんなことを考えつつ、一歩一歩ステップを刻んでいるうちに頂上がすぐ先に見えてきた。ステップはしっかりと刺さり、こけない限りは大丈夫。直下付近で斜面の傾斜が増してきて、最後は大きく左側へと巻いて頂上台地へと飛出す。ここの下りについて言えば、つい不安になるのが人情だが、登りと下りでは感覚的な違いがあり、意外にすんなりというのが経験則上の常識というもの。さあ、とにかく頂上だ。

 頂上は一部籔が顔を出していた。頂上展望は遮るもの無しの360°、全く言うことはない。尾根上のコブ程度にしか考えてはいなかったが、どうしてどうして… ニセコの山々や後方羊蹄山も見える。yoshda@北見さん好みの頂上、彼がいたなら間違いなく喜ぶに違いない… つい、そんな話題となる。三角点は雪面の下で確認できないが、頂上は頂上である。寿都天狗をやっつけた達成感によって嬉しさがいっぱいに広がる。当然のこと「金麦」を1缶。登山の喜びとはこんな些細な瞬間かもしれないが、これで十分。

 下山後、ほどなくしてアイヌネギひとかかえとともにIkkoさんとmokoさんが到着する。観音山はすでに6年前に登頂済みだが、やはり彼らと共に縦走の充実感をとことん味わいたかったというのが本音。まあ、それは来年、来年… (2012.4.12) 

参考コースタイム】  牧草地入口 P 7:50 → 306mポコ 9:05 → 723m標高点 10:40 寿都・天狗山頂11:20、〃 発 10:40 →  牧草地入口 P 13:50 (登山時間 登り3時間30分、下り3時間10分)

メンバーIkkoさん、mocoさん(観音山まで縦走)  saijyo、チロロ2(寿都・天狗山まで)      

    

  寿都・天狗山の山行写真

コンタ390m付近を登る (Ikkoさん提供)

コンタ 700m付近の尾根から望む寿都・天狗山 (Ikkoさん提供)

天狗山頂上から撮った私とチロロ2さん  (Ikkoさん提供)

頂上直下の斜面から望む寿都湾と寿都の市街

頂上直下の斜面

寿都・天狗山頂上と「金麦」 背景は狩場山と大平山

頂上から望む大平山 (Ikkoさん提供)

天狗山_山頂から雷電山と目国内岳

 

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