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     相雲内岳(608.0m)摺鉢山(626m)

摺鉢山の稜線から見る相雲内岳

 1/25000地形図「霧立峠」

国道の待避所に車を停める
小沢は雪渓に埋まっており、難なく尾根に取付く
摺鉢山へのルートは雪庇が行く手を塞ぐ

  今年のゴールデンウイークは荒天続きだった。最終日6日(振り替え休日)くらいは日帰りでも良いから山をやりたい、連休初めの数日間は自宅のPCに釘付けだった。「○○山の天気 マピオン」の○○に道内各地の山名を入れ、全道の山々を検索し続ける。その結果として、◎ではないが○だったのが、今回登った相雲内岳と摺鉢山であった。シーズン最後の白い山並みが見たいというmarboさんのたっての希望があり、先日の上古丹別山の記憶が新しかったこともあって、この二つの低山への山行を決める。5日は雨天予想なので、6日早朝発の計画とする。

上古丹別山頂上から望む摺鉢山

  札幌を出るときは完全な雨天気、道央道を北上するも、どこまで行っても雨、雨、雨、深川はもとより、留萌道に入っても一向に止む気配がない。しかし、遠くに見える鷹泊・坊主山の向こうには地平線すれすれに青空が覗いていた。マピオン頼む、当ってくれ! その願いが適ったのか、幌加内トンネルを抜けると雨が上り、道路も乾いてきた。しかも、沿線には十分な積雪が残っている。やった!という思いと、朝方の雨で山を中止したであろう札幌の多くの登山者への「悪いね〜」という思いが交錯するが、これだけは私の努力の賜物なのだから仕方がない。

  添牛内を過ぎる頃から薄日も差し始め、風は強いが登山日和となる。予定は最初に小沢を進んで、途中から尾根に取付くルートであるが、さすがにこの時期ともなると沢がパックり開いている可能性は大だろう。ところが、入山地点に到着して見たところ沢は開いているが、良くよく見れば直ぐ先で塞がっている様子。どうやら運も味方に付いたようだ。もちろん、国道からスキーを付けて、まずは目指す両ピークの中間点であるコンタ510mポコへと向かう。左手に460mポコを見ながらの緩い登り、ラッセルなどはなく快適に標高を上げて行く。ポコが近づくと左手に鋭角的な摺鉢山が姿を現した。その稜線上には大きく発達した雪庇が、いつ崩れてもおかしくない状態で張り出ている。一部は既に崩壊、その残骸が生々しく急斜面に散らばっている様はなかなかの迫力だ。我々が登る予定の稜線上にも、まるで鼠返しのように雪庇が行く手を塞いでいる。「右から廻り込むか」とか、「雪庇の直下まで行ってスコップで掘る手もある」等… 色々思案するが、この時は登って行きさえすればどうにかなるだろうと楽観的に考えていた。

 まずは相雲内岳、この名を聞くと、つい層雲峡をイメージしてしまうが、語源はソー・ウン・ナイ(滝・ある・沢)で、添牛内の語源でもある。ついでに言うなら日高のソロアンナイや層雲峡も同じである。命名の起源となった滝は入山口近くの覆道の横にあったが、それほど目立ったものではなかった510mポコには意外にあっさり到着する。この様子であれば、ひょっとしたら午前中に山行が終わるかもしれないと思ってしまうほどの快調さである。相雲内岳手前の560m小ピークは左斜面を巻いてと思っていたが、斜面を歩いていると「ビシッ」と雪面全体が沈む音が聞こえてくる。この時期であればよくあることだが、そうは言っても気持の良いものではない。雪面の下がほんの少しであるが、スカスカになっているということであろう。トラバースは止めにして、ピーク付近まで登ってから相雲内岳への尾根筋に乗ることにする。

相雲内岳頂上からはピッシリ山の大きな姿も望むことができる
相雲内岳頂上から望む朱鞠内湖
相雲内岳頂上からはピッシリ山の大きな姿も望むことができる
デブリを通過、稜線上へと向かう 摺鉢山へはこの斜面を登るだけ

  相雲内岳頂上は台地上の広いところだった。展望は良く、三頭山付近の山々、小平町の大天狗岳付近、羽幌岳、ピッシリ山の大きな塊、そして朱鞠内湖と、360°の大パノラマが広がっている。台地上はどこを頂上としても良いようだが、やはり三角点の位置を特定しなければすっきりせず、こんな時はやはりGPSが威力を発揮する。GPSが示した場所の半径10m以内のどこかに三角点は埋まっている。広い雪原状だが、確かに頂上と特定されれば何となく高くも感じられる。この山はこの時期であれば簡単に頂上を踏むことができるが、地元のEIZI@名寄さんとOgino@旭川さんは敢えて無雪期を選んでこの山に登っている。道北の濃い寝曲がりをかき分けて登るところに、道北本来の山の姿を見出しているのかもしれない。頂上は風が強く、少し風下へ下って休憩とする。

 さて、次はいよいよ摺鉢山だ。途中で見た雪庇をいかにかわすかを考えつつ、往路のトレースを戻る。ところが、どこまで近づいても雪庇の様子は変わらない。我々が予定している尾根上の頭には立派過ぎる雪庇が行く手を阻んでいる。かわすどころか、近づくことさえ許されそうもない。諦めるしかないか… と思ったが、谷を下って尾根の下方から取付いてみてはどうか? とのmarboさんの見解。よし、それだ! そんな手があった。上しか見ていなかった私としては、大げさかもしれないが目から鱗だった。谷筋を下って行くが、見上げると切れ目のない雪庇がどこまでも稜線を覆っている。1ヵ所、雪渓が崩れて藪斜面が剥き出しとなったところがあり、藪漕ぎならばと斜面に取付いた。斜面の傾斜は見た目ほどではなかったが、雪渓の塊でも転がってきたらただでは済まない。上部を気にしながらデブリを慎重に横断、スキーを外してキックステップで標高を稼ぐ。予定していた藪斜面の傾斜は思っていた以上にきつく、結局その際の雪渓をつないで稜線上へと抜けた。この緊張感、これも春山登山の醍醐味といえるのだろう。

下界には春の兆し

 稜線上からは強風を避けて左側の斜面へと廻り込む。スキーを途中にデポ、最後は急斜面にキックステップを刻んで登りきる。低山とはいっても背景の山々はもっと低山で、その広がりは実に見事である。東京スカイツリーと変わらぬ標高のこの摺鉢山だが、この高度感はなかなかだ。頂上には我々の行く手を阻んだ雪庇が何もなかったように広がっていた。新雪で雪化粧されたために気が付かなかったが、marboさんによれば亀裂が走っているとのこと。何も考えずに立ち入れば当然のこと雪庇もろ共、谷底へと消えてしまうだろう。強風を避けて頂上直下で休憩、青い空と真っ白な雪面が眩しい。こんなロケーションでの頂上ビールは実に美味い!これぞ春山登山の喜びの瞬間と言える。

 予定していたルートを使えなかったこともあって、下りのルートは何も考えてはいなかった。下れそうなところを下るしかない。地形図を見れば、入山口からは少々遠くなるが、良さそうな斜面がある。藪の急斜面となっていた560mのポコを右に巻いて、雪庇の途切れた地点からその斜面の頭へと下る。ここからの標高差は200m弱、国道までは快適にひと滑りであった。今年の積雪量は異常で、下山地点の国道の脇でさえ積雪は1m以上はある。しかし季節はやはり5月、早いところでは雪渓を抉るように地面が顔を出していた。ミズバショウとエゾノリュウキンカは今がその時とばかりに咲き揃い、遅かった春の埋め合わせに躍起となっているようにも感じられた。(2013.5.6)  相雲内岳・摺鉢山写真

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【参考コースタイム】  国道入山口 P 8:30 相雲内岳頂上 10:00、〃発 10:15 摺鉢山頂上 11:50、〃発 12:20 → 国道 13:00 → 国道入山口 P 13:25  (登山時間 4時間55分)

メンバーmarboさん、saijyo

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