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      芦別岳(1019m)

/25000地形図 「崕山」「幾春別岳」

藪漕ぎ大好きメンバー(惣芦別岳頂上にて)
奥芦別支線林道は出合まで行くことが出来る
いっぱしの沢ヤであれば“ブタ沢”と評しそうな沢
どんな沢も、初めてであれば何にも勝る
いきなり立派な作業道に飛び出す

百々瀬満氏(気軽に北の山著者)がその著書の中で表した夕張山地西部の呼び名「後芦別」、これをあまいものこさん(甘藷山荘管理人)が「後芦別山群」と呼び、その呼び名が地形や位置的なものを考えると何となくしっくりとくるようになった。山域内の山はどれも奥深く、道央圏にあっては数少ない未知への憧れを呼覚ましてくれる山々といえる。夕張山地主稜線の直ぐ西側の中天狗、中岳、シューパロ岳などはこの「後芦別山群」二列目に属する。これら鋭鋒の総称としては上手く表現されており、山群はさらに三列、四列へと続く。今回登った1019m峰(通称:惣芦別岳)は幾春別岳と共に四列目に属する三角点も地形図名もない山である。南隣の幾春別岳とはよく似た山容であり、共に山群・前衛峰としての存在感がある。この山名を初めて知ったのは「ガイドブックにない北海道の山50」(八谷和彦著)で紹介されてからであるが、この山域では名が付いていない山さえも登高欲がそそられるから不思議である。この日は三角点「夕張境」のある三列目、1009m無名峰(通称:岩見岳)を目指しての計画であったが、アプローチとなる奥芦別林道が先日の豪雨のために崩壊してしまい、予定を急遽変更しての山行となる。

先に現地入りしていたEIZI@名寄さんの情報によると、奥芦別林道・本線(芦別川左岸)は早い地点で崩壊しているとのこと。支線である右岸もおそらくダメだろうと思いつつも翌朝、偵察に入ることにする。路肩は数ヶ所で崩れ、深い雨裂も刻まれているが、惣芦別岳の出合いまで歩いて行ける所までは車を乗り入れることができそうである。前泊した芦別ダム堰堤広場まで戻り、相乗りする車両を選び、各車両の重量を極力軽くして再び支線林道へ向う。恐る恐る走り、結局は予定ルートである西面に突き上げる無名沢の出合いまで車を乗り入れる。付近の芦別川はかなり深く切れ落ち、はるかに下を流れている。仮に芦別川右岸支線を使って計画通りの夕張境を目指すにしても芦別川の渡渉では難儀することだろう。

出合いからの水流は少なく、いっぱしの沢ヤであれば“ブタ沢”と評しそうな貧しさである。沢の遡行というよりは藪山探検といった方がぴったりかもしれない。コンタ590の屈曲点ではこの沢唯一といえる緩い四段の滝が現れるが、このシーズン、既に数々の沢をこなしているメンバーには滝としては映らなかったようである。さらにナメ床を重ねたような階段状の地形が出てくるが、他の沢であればほとんど記憶にも残らない程度のものだろう。コンタ630m二股を過ぎたところで、先頭を行くあまいものこさんが地形図上の崖マークに該当する地形を発見する。林道の側壁とも感じられたが、まさかと思いながら歩き続ける。…と今度は苔むした切り株を発見、やはりどこかに集材路?は入っているようである。清流をさらに辿ると突然大きなエンビ管が出現、ついに作業道本体がその正体を現す。作業道へ出てみると、“未知の源流域”もいきなり道路下の小川へと格下げとなる感がある。轍の間に雑草は見られず、現在も使われているようである。200mほど上方を偵察してみると植林地への入口を示すピンクテープが見られる。ひょっとしたらピークへの最短距離となりうるかもしれないとつい考えてしまうが、ここはやはり正攻法で行くべきだとの正論が頭を支配する。作業道の行方は帰りに調べることにして、“小川”へと戻り、改めて沢筋から攻めることにする。

後芦別山群を代表するシューパロ岳 こんなアングルで見る幾春別岳は初めてだった
夕張マッターホルンはやはり目を引き付ける 夕張中岳の眺めが素晴らしい

途切れそうな水流は直ぐに切れ、笹薮漕ぎとなる。辺りの地形は扇状に広がっていて、明瞭な沢形ではない。いつの間にか45°ほど北へ傾いたようで、現在地点の特定を誤る。結局、高みを目指すこととなり、西尾上へ出る。高曇りの空模様で視界も良く、三笠方面の平野が背後に広がっている。奥まっていて平野から指呼することの難しい幾春別岳も間近に迫力ある姿を見せている。頂上は登りつめた先で、少し薄くなった薮に頂上への期待が膨らむ。灌木、時には倒木を除けながらも何とか頂上へ到着する。たどり着いた頂上は密度の濃い藪の中であるが、少し進むと開けた場所がある。何といっても潅木の間に見える後芦別山群の山々が素晴らしい。主峰・芦別岳を始め中天狗、中岳、シューパロ岳、夕張マッターホルンなど、鋭鋒群の眺めは全く見事である。この山群の魅力はアルぺン的な険しい山容ということもあるが、やはり簡単には取り付けない奥深さというところに尽きるだろう。

帰路は西尾根の藪漕ぎで下る。目指すところは作業道から続く植林地の上部である。藪中で思いがけず、タマゴダケを発見する。一見、ベニテングダケと変わりない美しさで、私のような素人には見分けがつかないが、キノコに詳しいキンチャヤマイグチさんも一緒であるため、食用可能であることが判る。Web上で調べたところ、美味しいキノコの一つとのこと。その他にヤマイグチという珍しいキノコも見つかった。ただし、この日の彼の鑑定では同じくらいに毒キノコも多いようだ。藪漕ぎの比率が高い我々の山行の中で、いつも目にするキノコであるが、この世界もなかなか奥深く、じっくり調べると面白そうである。

西尾根上の薮を忠実に辿りながら下降して行くと、先の作業道まで約200mの地点で歩道に飛び出す。結果的には植林地の歩道は大して延びていないようで、沢筋からのアプローチで正解であった。最後の興味は作業道がどこへ下っているのかへ移る。概ね駐車した沢の出合いへ向っているため、方向が変わればいつでも沢を下降するつもりで、どんどん下って行く。遡行した小沢を右手に見ながら進んで行くと、出合い付近からは奥芦別林道・芦別川左岸支線の駐車地点よりも上流側へ標高を落としながら続いている。直ぐに林道が現れ合流するが、駐車地点より400〜500m先であった。

下山後、ザックの天蓋のチャックが開いていてカメラがない。EIZI@名寄さんが乗ってきたバイクで探してくれるとのこと。お言葉に甘えてしまったが、直ぐにザック本体からカメラが現れる。あわてた私は彼を追って、降りてきた林道を乗用車にて追いかける。なかなか追いつかず、結局、最初に飛び出した地点付近まで入ってEIZI@名寄さんと合流する。年のせいか、あわてて冷静ではなくなってしまったようである。山へ入った以上は何時いかなる時でも冷静であるべきであった。また、支線へ入った時から慎重に走ってきた林道であるが、結果的には作業道をつないで惣芦別岳8〜9合目付近まで何も考えずに乗用車で乗り入れてしまった。それより何より、たったカメラ一台のことでEIZI@名寄さんには大変申し訳ないことをしてしまった。私にとっては反省材料の多い山行となった。(2006.9.3)

■同行して頂いたEIZI@名寄さんの山行記luckyさんのblog

 参考コースタイム】 奥芦別支線林道・駐車地点(出合) 7:20 → コンタ710m・作業道 8:55 → 惣芦別岳頂上 10:50 、〃発 11:45 → コンタ710m・作業道 13:05 → 奥芦別支線林道・駐車地点(出合) 14:05

メンバー】EIZI@名寄さん、あまいものこさん、luckyさん、キンチャヤマイグチさん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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