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      空沼(1251.0m) ・・・湯ノ沢から

 

1/25000地形図 「空沼岳」 「札幌岳」

ヒトヨタケに似たナメアシタケ?
ボリボリが鈴なりのところも
湯ノ沢の入口は空沼岳登山道への途中から
林道跡はやや荒れ気味だ
映画「水の旅人」を思い出させる沢風景
通称、四段の滝

空沼岳は四季折々、何度登ってもあきない山である。単調な登山道から広々とした万計沼が突然出現し、その神秘性にこの山の奥深さを味わい、さらに、続く真簾沼で天上の開放感を味わう。辿りついた頂上にはエゾ富士や恵庭岳を始めとする360°の大パノラマが広がっている。だれもがこの山に触れ、山の魅力の虜となるシナリオであるが、登山を始めた頃の私も例外ではなかった。そこで今回は、その魅力+αを求め、アプローチに話題の沢を取り入れてみることにする。今年、刊行した沢ヤ・岩村和彦さんのGanさんが遡行(ゆく)北海道の沢登り」で登場した湯ノ沢である。著書の中で「拾った宝くじに当たったような気分になる・・・」と表現されているが、今回入ってみて全く同感であった。登り尽くされた札幌近郊にあって、この沢はあまり話題とはなっていなかっただけに、身近であるにも関わらず変化に富んで美しいといった意外さが、多くの登山者の間で受けたようである。

空沼岳登山口へ向って行き、採石場を過ぎて直ぐの分岐が湯ノ沢への入口である。右に向う道は直ぐにゲートとなり、発破作業云々と掲示されており、立入禁止の看板が目に付くだけに二の足を踏みたくなるところである。この日は休日であるにもかかわらず、サイレンが鳴り響き、発破作業が行われていた。天まで轟くような発破音であるが、次の設置までには間があるはずとの読みでゲートをくぐることにする。10分も歩くと分岐となり、左の古い林道へ入る。鬱蒼とした中に何時もの山の雰囲気が戻ってくるが、採石場の騒音はしばらく続く。この林道は現在は使われていないようで、林道跡といった感じである。ただし、湯ノ沢人気の影響か、踏跡のみは明瞭である。林道跡は続き、地形図上の終点までは橋も健在である。終点付近で水流にぶつかるが、そこを越えてもさらに集材路跡?は続いている。何ヶ所かで小規模ながけ崩れのために埋まっているが、崩壊ヶ所を越えるとさらに林道跡が現れ、結局この沢のハイライトと呼ばれている区間の入口であるコンタ560m付近まで、入渓せずに到達する。

見なければ良かったのだが、Web上で沢の様子の大方は情報として知っているため、次々と現れる小滝は記録のおさらいをしている様であり、未知という意味での感動は半減である。水は濁り気味で、上流のどこかに崩れやすい地形が存在していると思われる。ただし、苔生した渓谷自体は美しく、細かな変化にも富んでいる。川床は全体的には岩盤質であり、規模の割にはナメ床が多いようにも感じられる。時折、日差しが川床まで届き、以前に山崎努が一寸法師役?で登場した映画「水の旅人」に出てくる神秘的な源流域を思い出す。秋のキノコシーズンとあって、キノコに詳しいキンチャヤマイグチさんへメンバーからの質問が集まる。特に、途中で見つけた季節の味であるボリボリの群生にはやはり目が奪われる。それ以外にも、お酒と一緒には食べられないホテイシメジやヒトヨタケに似たナメアシタケなども教わり、しばしキノコの世界の面白さを垣間見る。

湯ノ沢にはナメが多い このゴルジュを越えると10mの滝が待っている
この沢のハイライト、すだれ状の滝 初めて目にする秘沼・空沼

コンタ750mで核心部の滝が現れる。手前のゴルジュ状は規模も小さく、水流の中を難なく登ることができる。しかし、次の10mは要注意である。左岸のルンゼを登るのは簡単であるが、ここから滝の落ち口までのトラバースが心許ない。特に最初の数mは草付きとなっていて、しっかりとした手掛かりがない。スタンスは泥状で、バランスを崩すと怪我だけでは済まされないだろう。多くの登山者がここを通過すると考えれば、さらに痩せることになるだろう。今後この沢がさらなる評判を呼び、だれもが入渓するとなれば、より安全なルート(高巻きルート)の確立が必要と思われる。

核心部を過すると後は何もない。15mのスダレ状の滝手前から、右岸(左側)の小沢を使って右側の小尾根を乗り越すが、小沢の踏み跡がかなり上部まで続いているため、そのまま詰めてしまいそうである。途中で本流へ戻るため、少し藪を漕ぐ。本流へ戻ってほどなく林道が現れ、湯ノ沢の遡行は終了となる。

早朝に登った頂上は相変わらずにぎやかである。今回は晴天ということもあって、頂上から15分のところにある、空沼を見下ろすことのできる展望台へ行ってみる。最初は細々と続く踏み跡も途中で諦めてしまう登山者が多いのか、藪の中に消えてしまう。それでも何となく薄っすらと続く形跡を頼りに進んで行くと開けた場所に到着、空沼が姿を現す。支笏湖や恵庭岳との対比が面白いが、空沼は周辺よりも一段奥まっていて、正に秘沼といった雰囲気である。空の青さを映す水面にさざなみがキラキラと輝き、実に美しい。

今回の山行で見なければ良かったものがもう一つ。最近よく話題になる、個人の頂上標識である。○○氏の句入りのものであるが、運命的な出会いというか、我々が評している直後に当のご本人(多分)が現れ、筆を取り出し直し始めた。これには戦々恐々とさせられるが、その場で個人標識の設置の是非を論じたところで無意味との印象から、静かにその場を立ち去ることにする。各個人が自分の思いを込めた標識を勝手に設置することを良しとした場合、収拾がつかない状況となる。頂上には足跡以外は残さない、こういった当たり前のマナーくらいはぜひ守ってほしいものである。(2005.9.17〜18)

【参考コースタイム】 ゲート・P 9:15 → 地形図上・林道終点 10:20 → 核心部・ゴルジュと10mの滝 11:35 → すだれ状の滝 12:10 → 林道 12:40 → 万計山荘 13:15

メンバーキンチャヤマイグチさん、kokuboさん、saijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga) 

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