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      空沼(1251.0m) ・・・万計山荘の管理当番見習い

 

北の沢・第二やまばと公園から空沼岳を望む (6月)

1/25000地形図 「空沼岳」 「札幌岳」

空沼岳登山口
管理の行き届いた万計山荘
登山道を辿って、最初に現れる万計沼
登山道を辿って、最初に現れる万計沼

札幌で育った人間であれば、円山、藻岩山、手稲山の次に山を知る機会となるのが空沼岳であろう。この山の登山ルートには万計沼、真簾沼など、違った顔を見せる二つの沼があり、身近に在って豊かな自然を十分に満喫できる魅力的な山である。その他にも一般的ではないが山名となった空沼(カラヌマ)があるが、こちらは本格的な沢登りによってのみ行くことができる。札幌の小中学校では私の育った時代(昭和30年代)にはワンランク上の登山として空沼岳の登山遠足があった。現在の事情は判らないが、少なくてもファミリー登山の山として、子供心に登山の魅力を植え付けるには絶好の山であることは今も昔も変わりはない。私が小学生だった頃には既に万計山荘が建っていて、この山荘の存在が何となく心強かったのを覚えている。当時は建ったばかりであり、モダンな山荘というイメージであった。中学校の登山遠足でも何度か訪れ、小屋前で清涼飲料水なども販売されていて、なかなか活気のある山小屋との印象を受けた。その後、日帰り登山者の増加による利用者の減少や営林署の統廃合など、万計山荘にとっては不遇の時代が続く。今から10数年前、清掃登山で山荘を訪れたが、正面玄関が釘打ちされ、荒れ果てた姿の万計山荘があった。平成6年、当時の札幌営林署・林野弘済会から札幌の勤労者山岳連盟にこの山荘の維持・運営に関する提案がある。その後、同連盟のみならず広く一般からも有志を募り「万計山荘友の会」が設立され現在に至っている。

二つ目の真簾沼は明るい感じ 秋の気配を感じさせるオオカメノキの実
空沼岳頂上から望む万計山荘 トイレ掃除は万計山荘の重要な仕事

何と言っても、万計山荘の最大の素晴らしさは広く一般に開放されていて、何時でも利用が可能なところである。身近な空沼岳登山の要を担っている山小屋として、多くの登山者の拠り所となっている。宿泊料、休憩料はすべて無料であり、山荘を維持したいと願う一般からの募金のみで運営を賄っている。天候が回復したこの日は約40名ほどの登山者があり、約7000円の募金が集まった。管理も友の会の有志がボランティアであたり、正に理想的に運営されている。昨年の台風18号の爪あとは大きく、登山道には大木が横たわっていたが、友の会の尽力によって以前にも増して整備された登山道となっている。また、以前の清掃登山では軽く10kgを越えていたゴミも、登山者の意識の向上もあり、現在ではほとんど見られない。

我々地図がガイドチームも以前から同友の会の会員であったが、今回はSasa氏の誘いもあり、管理人見習いとして初の参加である。久々の空沼登山道を辿る。ここの登山道は空沼岳という身近な山域であり、つい気軽に考えがちであるが、どうしてどうして頂上までは約8qである。この山を登った仲間からは意外に疲れたという話を良く耳にするが、あながち頷けなくもない。近郊だから…、空沼だから…という安易さとのギャップであろう。前日に雨が降ったこともあり、足回りは長靴がベストである。登山口から約2時間、視界が開けて万計沼に到着する。途中、ぬかる山道には木道が敷設され、標識も新設されていた。万計山荘友の会の活動が目に見えて成果を上げているようである。湖畔には前回・十数年前に訪れた時の荒れ果てた山荘の姿は無く、細かなところまで会員の心が行き渡った、生まれ変わった万計山荘の姿があった。朽ちていた土台や床はしっかりと補強され、快適な空間となっている。トイレには特に気を使っている。山荘を利用しない登山者でも気軽に利用したくなるよう清潔に保たれている。風通しを良くし、EM菌を利用して無毒化する。自然分解しないロールペーパーは個室ごとに回収し、小屋裏の焼却炉で燃やすなどの徹底さである。Sasa氏に管理のノウハウを教わるが、印象として持っていた難しさは感じない。要はこの小屋を大事にしたいという気持を持って管理にあたることである。

翌日は頂上を目指す。山荘泊での登頂はかなり余裕がある。30〜40分で万計沼よりも大きな真簾沼に到着する。この沼は万計沼と比較して解放的な明るさが感じられ、かなり広々としている。冬期間は氷結し湖上から札幌岳への縦走路へ抜け、夏道がない狭薄山を目指すことが多い。縦走路付近は雪洞を掘るには格好の場所である。残念なことに最近はスノーモビルが湖上を滑走することもしばしばとのこと。ここは国立公園内でもあり、厳に慎んでほしいものである。

オオカメノキの実が赤く実り、正に秋の気配である。真簾沼から約1時間、空沼岳頂上に到着する。日帰りの登山者が到着するには少々時間が早く、静かな頂である。楽しみにしていた狭薄山や札幌岳の姿はガスに包まれ確認することはできないが、万計山荘の赤い屋根が樹林の中にポツリと映っている。頂上付近の地形は複雑に小沢が入り込んでいるところもあり、冬期であれば読図が難しそうである。万計山荘までのルートファインディングを含め、読図訓練には格好の場所かもしれない。下山時、登ってくる多くの登山者とすれ違う。登山口から登って来ればたどり着く頃で、空沼岳にもいつもの活気が戻ってくる時間帯である。(2005.9.17〜18)

【参考コースタイム】9/18計山荘 7:35 → 真簾沼 8:10 → 空沼岳頂上 9:20 、〃発 9:50 → 真簾沼 10:35 → 万計山荘 11:25

メンバーsaijyo、チロロ2

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