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      塩谷丸山(629.2m)

余市漁港から望む塩谷丸山 (2016年8月25日撮影)

 

/25000地形図 小樽西部」

JR塩谷駅前の駐車場に車を停める
登山道は整備されて歩きやすい
登頂、バンザイ!
余市岳も
山麓では梅と桜が満開である
山麓では梅と桜が満開

道内では早くから開けた小樽は、仏教をはじめ和文化がいち早く上陸した地域である。塩谷丸山が信仰の山であったことは今回この山へ登り、Web上で調べて初めて判ったことであるが、同じ小樽の赤岩山や天狗岳なども「廃仏毀釈」によって追われ、新天地・北海道へ逃れた多くの修験者によって開かれたとのこと。明治時代には岩場で修行する山伏の姿があったそうである。廃仏毀釈運動といえば歴史教科書の中だけの世界であったが、我々の山の世界にも少なからず影響していたということには驚かされる思いがした。

札樽道を小樽へ向うとき、朝里辺りから見ると小樽市街の上に大きく被さるように見えるのが、この塩谷丸山である。この山は札幌・藻岩山のように、各層の登山者に大いに親しまれている小樽市民の山といえる。我々「地図がガイドチーム」のチロロ2さんのリハビリ山行との名目で、およそチームとしては似つかわしくない、ハイキング登山のメッカとも言えるこの山を目指すことにする。

以前来たのは何時の頃かとしばし考えてみるが、私が学生だった約30年以上も前の記憶となる。当時はもちろん今のような登山ブームなど考えられず、この山はガイドブックには載っていない、一般的にはあまり知られていない山であった。1/50000地形図には歩道が載っていて、情報がないままとりあえず行ってみたが、思いのほか快適だったのを覚えている。この山の人気の秘密は多くのWebページで紹介されている通り、標高のわりには展望が抜群であることが大きな要因といえる。

山田耕筰の「忍路・高島及びもないが せめて歌棄・磯谷まで」歌われている忍路や高島方面を眼下に納めることができる。余談ではあるが、この歌は女人禁制の魚場へ出向く恋人に、ついて行くにも行かれぬ切ない思いをうたった歌である。時代が変わればそんな思いも古い民謡の世界として忘れ去られてしまうことであろうが、古きよき時代の静かな山々への郷愁が何となくオーバーラップされてくるのは私の考えすぎであろうか。

エゾエンゴサク 秋には赤い実を付けるオオカメノキ
展望が良いのは当然だが、エゾ富士まで顔を出す 賑わう頂上から少し離れると、静かな雪渓がある

市街地の中の登山口では駐車場の確保が難しいだろうと考え、JR塩谷駅の向かい側にある駐車場に車を停める。登山口へ向って歩いていると、近所の老人から、今日は晴れていて山は良いだろうと声掛けられるが、週末ごとに多くの登山者がこの山へ入っているということであろう。登山口には駐車スペースがあり、多くの車が停まっていて、すでにこの日も大勢の登山者が入っているようである。しばらくぶりの登山道のある山への登山、今日はゆっくりとこの山を楽しむことにしようとの思いで出発する。

麓は梅と桜が同時に花開く北海道特有の“春”満開の季節である。登山道の脇には“野の仏”も見られ、信仰の山であったことを伺わせる。普段の藪漕ぎ登山ではあまり気にすることもない沿道の植物にも自然と目が向いてしまう。エンレイソウやキクザキイチゲ、ヒトリシズカ、エゾエンゴサク、オオカメノキなど、今がその時期とばかりに咲き誇っていて、まるで植物園の遊歩道を歩いているようだ。頂上へと続く道は以前と比べ、長い年月の間にかなり踏み込まれたようで、第一級の登山道へと変わっている。

 コンタ420m付近で台地上に上がるが、この頃には前述の忍路も眼下に収めることができる。一方、残雪で白く輝く積丹からニセコへと続く山並みが何とも美しい。北の方には日本海の向うに、特徴のある浜益岳が指呼出来、その周辺の増毛山地の山々も同定が出来る。台地上を進むと笹の丈も低くなり、展望もいっそう広がり、頂上への期待が膨らむ。最後の登りを終えると頂上部であるが、祠の建つ頂上はほんの少し先である。大勢の登山者で溢れていて、岩壁の上にもくつろぐ登山者を見ることができる。手軽に登れ、この展望となれば当然といえば当然かもしれない。我々は頂上とは逆側の雪渓上での休憩である。少し離れると頂上の賑いも嘘のように静かである。

 驚いたことに、このHPを見ているという登山者から声をかけられる。聞けば、ガイドブックにはない山を登ってきたとのこと。このHPを通して、ガイドブックから抜け出し、主体的に自分の山へ挑むことを提唱してきた私としては、自分で山を探して登るという山行形態のすばらしさを理解して頂いたことに、正直なところ嬉しさを感じた。未知の山に立ち向かう姿こそ山男の真髄と信じている。(2006.5.21)  

 

白く輝く峰峰(左から八内、稲倉石、余市天狗岳、ポンネアンチシ山、余別岳、積丹岳など)

【参考コースタイム】塩谷駅前 P 8:35 → 塩谷丸山頂上 10:45、〃発 12:00 → 途中、竹の子取り → 塩谷駅前 P 14:10

メンバーsaijyo、チロロ2、チロロ3(旧姓naga)

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