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 1081m点名;下主」(1080.7m)

パンケヌーシ川林道入口付近から望む1081m峰「下主」

1/25000地形図  「千 栄」 

谷間から望む1193m峰は登高欲がそそられる
雪に埋まった三角点「下主」を発見
三角点「下主」が埋められた“パンケヌーシ岳”頂上にて
支線林道「大和線」入口に車を停める
コンタ1100m頂上は樹林の中
遠くに望む夕張岳をズーム

完全な冬山スタイルにはまだ早いこの時期、どこかに展望の良い山はないだろうか?…我が「地図がガイドチーム」のチロロ2さんに相談したところ、この三角点名のみのピークに白羽の矢が立った。彼女は千栄の地形図(5万図)から三角点のある山を探し、国土地理院の基準点成果等閲覧サービスのページで点の記を読んで決めたとのこと。正に情報化の時代の山探しといえる。この三角点名「下主」(しもぬし)の出所は、あまいものこさんによるとパンケヌーシの“パンケ”の部分「下方の」をそのまま当てて、“ヌーシ”はそのまま「主」を当てたとのこと。さらに網走・伊藤氏の説明によると「ヌ・ウシは豊漁という意味で、ペンケヌーシは“川上の豊漁川”。パンケヌーシは“川下の豊漁川”の意味」だそうである。そう考えるとこの山は、千栄側から見る険しさを考え合わせて、パンケヌーシ岳と呼ばれていてもおかしくはなかったようである。

  ルートは日高ウエスタンファームの巨大なヒグマの置物を過ぎて、「日栄橋」から数百メートル進んだ千栄林道がアプローチとなる。この林道は大きなカーブを繰り返し、ぐんぐん標高を上げる。深いぺンケヌーシ川の谷間の向うに見える頂上部を岸壁で纏った1193m峰の姿が印象的である。薄っすらと積もった雪面に、昨日のものと思われる車輪の跡が続くが、一般的に考えて登る山がないこの山域では登山が目的ではないことだけは確かである。コピーした「点の記」を参考に進んで行くと、それらしい支線林道分岐が現れる。ただし、送電線からはあまり進んでいないこともあり、ここで間違えてしまうようでは薮山素人である。とりあえずはもう少し先へ進んでみることにする。次に現れたのが「大和線」の標識がある支線林道で、距離的にも林道の様子からも「点の記」の図と一致しそうな予感がする。点の記は平成4年の現況調査時点の情報であり、その後の台風による集中豪雨によって日高町界隈の林道は一時期ずたずたになっている。幸いなことに復旧が速かったのか、ここまでの乗用車の乗り入れは予想外でありラッキーであった。

念のために分岐で車を降りて、大和線を徒歩にて進んで行く。途中で倒木が道を塞ぎ、車輪跡もさすがにここまでである。高度を上げると展望が開け、夏に沢詰めで登った双珠別岳が存在感ある姿を見せている。三角点ピークに一番近いと思われる地点で大和線を離れるが、集材路跡はさらにコンタ950m付近まで続いている。水平距離にして約300m、いよいよ最後の薮斜面の急登である。雪の重さのために沈んだ笹薮は薮漕ぎ登山としては拍子抜けの感があるが、私としては登りやすさは大歓迎である。一歩毎に背後の景色が動いて行く。樹林の間からは白く輝くトムラウシ山、角度が変われば夕張マッターホルンと、姿を現す特徴的な山々の山座同定しているだけでも楽しい登りである。

傾斜が緩むと稜線は近い。期待しながらの最後の一汗、飛び出した稜線は樹林に囲まれて視界が利かない何の変哲もないところであった。ここで改めてこの山の構成を説明すると、西側の「下主」(1080.7m)、東側の1084m標高点、真ん中のコンタ1100mと三つのピークからなる。地形図上、一番険しくて頂上として相応しいのは下主ピークであるが、仮に一つの山として考えれば、やはりコンタ1100mが頂上である。飛び出したところはコンタ1100mの100mほど西側であり、まずは頂上を踏んでおくことにする。樹林帯の中、徐々に標高が上がり最高地点到着となるが、樹林に囲まれた景色は先ほどと何も変わらない。急峻に下る足元は樹林が程よく密生していて、冬の深雪滑降には変化があって面白いかもしれない。この頂上のお勧めを強いて挙げれば、ここから「大和線」までの滑降くらいのものであろう。  

次に300mほど離れた下主ピークを目指す。下り過ぎではないかと思いつつも、コンタ1050mコルまで下るが、途中からは大きな高みが見え隠れし、立派な頂上の存在に安心させられる。こちらは尾根上の単なる高みではなく、正しく一つの山のピークである。コルから見ると両側が切れ落ち、予測していたよりは鋭角的な山容となっている。コルからは覆っていた樹林帯も徐々に薄くなり、頂上付近では完全に視界が開ける。先頭を歩く、薮山初参加のWaさんが早々と三角点「下主」を発見、頂上到着を確認する。青空が広がり、これぞ山の頂上といった感じにパーティの満足感は最高潮である。ペンケヌーシ岳とチロロ岳の大きな姿は木々の枝が邪魔しているが、春別岳や雲知来内岳、登山中常時見えていた1193m峰と双珠別岳、遠くには夕張岳や十勝岳、トムラウシ山の真っ白な姿など、飽きない山岳風景が広がっている。特にここから見る1193m峰は次の目標となりそうだ。  

下りはコルからトラバース気味に集材路終点を目指し、わずか15分程度で集材路終点となる。いつもの薮山が戻ってくるが、「下主」に到頂した満足感と頂上の展望の良さは、他の有名どころと比べ遜色のないものがあった。名がない山であるため、登山者は入らない。名があれば多くの登山者を迎え入れる。ペンケヌーシ岳に登っていれば、必ずやこのパンケヌーシピークも登らずにはいられなくなるだろう。そういった意味では名が付かなかったことこそが、この山にとっての幸運と言えるのかもしれない。北海道にはまだまだ面白い山がありそうだ。(2006.11.26)

【参考コースタイム】 支線林道「大和線」入口P 7:55 → 「大和線」を離れ集材路へ 8:35 → コンタ1100m頂上 9:25 、〃発 9:35 → 「下主」ピーク 9:50 、〃発 10:25 → 集材路から「大和線」へ 10:50 → 支線林道「大和線」入口P 11:10

  【メンバーキンチャヤマイグチさん、Watanabeさん、saijyoチロロ2、チロロ3(旧姓;naga)

「下主」ピークから望む春別岳(左)と雲知来内(右)

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