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 下記念別山(283.4m)

工事現場から望む下記念別山

1/25000地形図 「達 布「滝 下

工事現場に車を止めさせてもらう
最初は緩い沢地形を進む  私のはるか前を行くチロロ2さん
先頭でラッセルするyabuさん。Ko玉氏の良き協力者である

  夏の中記念別山、初冬の上記念別山と順調に終え、その後当然のことだが、いつも気になっていたのが、この下記念別山だった。記念別三山はどこといって特徴のない標高も低い里山ばかり、仮に山名さえなければ、おそらく札幌から出向くことなどありえなかった。里山と言えば麓に里があってこそそんな表現となるが、その里がこれらの山々にはない。これらの山名が付いた時期には開拓農家が道路沿いに点在、“キネンベツ”というアイヌ語地名があって便宜上、上中下の河川名が付き、それが基準点名となり山名となった。さらに、昭和20〜30年代にかけて、留萌炭鉱が最盛期を迎えて炭鉱鉄道が走り学校も出来る。その後時代の流れの中で炭鉱は閉山、過疎化が進んでついには原野に回帰、河川名と山名のみが忽然と残った。そんな里の無くなった里山がこの記念別三山である。栄枯盛衰を象徴しているかのようなキネンベツの響きには、少々おおげさかもしれないが無常感が感じられる。

最大斜度… !!

 冬将軍が勢力を増しているこの週末、下記念別と達布山を目指して札幌を出る。西高東低のこの日、よりにもよって大荒れ予想の留萌地方の山を目指すなど、運転している自分ですら正気の沙汰ではないと感じていた。しかし、北海道全山を目指すKo玉氏の計画でもあり、ここで常識に捕らわれていては成るものも成らない。集合場所のおびらしべ湖の駐車場でKo玉氏と合流する。彼は満面の笑みで我々を迎える。この三連休で遠く豊富町まで未踏の低山を追っての遠征だったとのこと。既に前日、前々日と二山を踏破、全山登頂まで残り60山台へと突入したらしい。その恩恵かどうかは知らないが、今日は短い下記念別一山でどう? とKo玉氏からの意外な提案、来るだけでやっとだった我々としてはすぐにその提案を受け入れる。

 今の時期は積雪による駐車スペースが問題となり、特にこの留萌地方は豪雪のためにことさらに難しい。下手したら狭い道道に路上駐車かと思いつつ取付き地点へと向かう。少々遠くてもと思いながら付近を走り回ると、何やらショベルカーが作業を行っている様子。しかも下記念別山の直下である。作業のための工事関係車両が止まる駐車スペースが確保されていた。内心、やった! と思った。OKかどうかは別として、工事関係者に止めさせてはくれないだろうか?との交渉に入ることにする。4人の中では歳は喰っていても紅一点のチロロ2さんは決まり、残る男3人の中では当然のことながら一番人当たりの良さそうな私が交渉人となる。この交渉、最初から勝敗は決まっていた。なんせ、現地の人でさえ聞いたことのないこの下記念別山へ、よりにもよって冬山登山、しかもこんな天気にわざわざ札幌からである。珍しさや意外性は第一級、かなりずうずうしい申し出だったが、面食らった工事現場の人としては断るに断れなかったのだろう。この件に関しては大変申し訳ないとは思っているが、助かったことは言うまでもない。

 Ko玉氏とyabuさんは正に水を得た魚、準備万端ですぐに飛び出して行く。私は最近疲れ気味のためか、もたもた… あんなこんなで、頭の中の整理がついていなかったことも原因している。このあたりは悪天候の中で既に二山を踏破してきた人間と、猛吹雪を押して札幌からやっとたどり着いた人間のモチベーションの違いだろう。現場の人に見送られ、一人遅れて駐車スペースを後にする。最初は沢形地形をトラバース気味に進む。いくつか小沢を通過したあたりからやっと自分の心の中のエンジンに火がともった状態となる。yabuさんはこの日も快調に先頭のラッセルを努めている。Ko玉氏にとっては最高の協力者であり、理解者と言える。彼のような協力者なしには決して叶わない全山登頂の夢であることは確かである。

やっとのことで頂上稜線へ上る 下記念別山頂上に到着!

 沢地形を登り詰めるとコンタ160mのコブに出る。考えてみれば、この高さで我が家よりも10mほど低いのだから、高さから言えば間違いなく低山の部類と言える。少し下っていよいよこの山の核心部、頂上本体への急登である。見上げるようなこの斜面、里山の小さな山としては意外なほど。経験がなければ間違いなく圧倒されるだろう。だが、我々としては当たり前、日常茶飯事の藪山山行である。斜面ごとずり落ちそうだが、スキーのトレースは上手い具合に斜面に乗る。樹木はそれなりの密度を保っており、最悪でも雪崩れるほどの事態とはならないように思う。中にはかなりの大木も見られ、気分的には寄らば大樹の陰状態で、近くに寄ると何となくほっとするから私も臆病者ということだ。キックターンを試みるが傾斜がきつ過ぎてスキーの切り返しが出来ず、山側のスキーを手で持って方向転換をする始末、チロロ2さんから得意の抜き足ターンを聞きたいところだが、彼女は彼女で目一杯、そんな余裕などあるはずもない。だが、これはこれで藪山愛好者としては得難い藪山登山のひとコマでもある。

 楽しみつつ? も急斜面を登りきり、頂上への緩い稜線となる。無理言って車を止めさせてもらった工事現場が眼下に見える。とても300m足らずの低山とは思えない高度感であり、狭い稜線が余計にそう思わせているのかもしれない。今登ってきた斜面はさすがにスキーでは下れない。さて、下りはどうするか? まあ、それは後から考えるとして、まずは登頂である。頂上は小高くなっていて、すぐにそれと判るところ。眺望は降雪のために良くないが、達布山くらいは薄っすら見える。Ko玉氏の登頂の証拠写真を撮ってしばし休憩とする。もちろん、頂上ビールも1口… 下りは東側の幾分緩い斜面をひと滑り、最後は斜面を回り込んで難なく急斜面の取付き地点へ。まあ、下りとはこんなものである。特に積雪期の下りはあっけないものだ。後は登りのトレースを使い工事現場へと直行。何はともあれ、いつも気になっていた記念別三山であったが、これにて無事終了となる。(2014.1.13)

  【参考コースタイム】 工事現場 P 8:45 →  下記念別山頂上 9:50、〃 発 10:05  工事現場 P 10:40  (登り 1時間15分、下り 35分 )

メンバーYabuさん、Ko玉氏、saijyo、チロロ2

      

の下記念別

二等三角点「下記念別」 (Ikkoさん提供)

 「 数寄屋橋を過ぎてすぐの林道に入りUの字カーブから取りつきました。最初から背丈を超す笹薮漕ぎが始まり、尾根を外さないように進みます。取り付きから150mぐらいで尾根を横切る廃道化した作業道が現れました。さらに尾根をトレースしながら進むと、ブドウの蔓も絡んできて嫌らしい状況に… 実がついているものがあると、口の中に放り込みビタミン Cの摂取をします。最後の尾根斜面に取り付くと超急登になり、低木や笹につかまりながら高度を上げます。尾根に乗っても低木や笹があり、少々歩きずらい状況が続きます… 痩せ尾根はところによっては切れ落ちているところもあり、低山とは思え ないほどの高度感がありました。

  三角点は一番高いところに笹が刈りはらわれた状態で出ていました。山頂からは達布山方面の景色は見えますが、ちょっと手前のほうから天狗岳方面の景色が見えます。道北の紅葉も終わりの方でしたが、光が当たると色も冴えて綺麗でした。超低山ではありましたが、写真を撮ったりしていたので登り2時間、下り1時間の山行となりました。」… Ikkoさんからのメール

 

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