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       然別山(466.5m)

国道から見る然別山(一番左が三角点ピーク)

      /25000地形図然 別

少し広くなった除雪スペースに車を停める
気持の良い樹林帯を進む
遠くに稲倉石山が見える
稜線から見る頂上丘
然別山三角点ピーク、小さな頂上標識が付けられている

平日の休暇を利用して札幌から近い仁木町・然別の然別山へ行ってきた。当初は銀山(641m)のツアーを予定していたが、日本気象協会のHPで雨雲の動き(レーダー)を見ていたところ、日本海で発生した大きな雪雲の塊が時間ごとに南下、正午には完全にこの山域を覆う予想となっていた。後志地方には大雪注意報も出ており、こんな日は速やかに山行を終えたいところだ。そこで考えたのが歩行距離の短い然別山で、標高は低いが国道5号線からはそれなりに立派に見える山である。

然別山は然別川の水源の山ではなく、然別の近くの山に設置した三角点名が二等三角点「然別山」で、そのまま山名になったと思われる。辺りは千数百万年より以前は海底だったようで、二枚貝の化石等も多数発見されているらしい。その後の火山活動で海底が隆起、現在の姿になったとのこと。然別とはアイヌ語のシカリ・ペツ(自分を回す・回る川)で、ここでは余市川が大きく回って流れている状態からそう呼ばれている。江戸時代の後期には岩内・余市間の交通の要衝となり、当時の「余市越え山道」の中継地点として人馬継立所等が設けられていたそうだが、明治時代に入って稲穂峠を越える小樽岩内間街道 (現在の国道5号)が完成、その役割を終えている。“古の道”も今後時間が許せば探ってみたいものである。

この山のアプローチとなるポン然別川沿いの道道755号は昭和59年に廃坑となった大江鉱山へと続いている。袋小路となっているために除雪はないと読んでいたが、入ってみるときれいに除雪された道が奥へと続いていた。話によれば、水質管理のために今でも保安担当の社員が行き来しているらしい。円山地区付近から101.9m三角点までの約1.5kmはラッセルするつもりでいたため、この除雪にはたいへん得した気分になった。除雪車の転回場を探したが目的地点付近には見当たらなかったので、400〜500m手前の凸標識のある少し広くなった路上に車を停める。それでも、取付き地点までラッセルを考えれば天と地ほどの差である。

予想に反して日差しもあり、風は冷たいが晴天に近い状態だ。札幌を出遅れたこともあり、少々急がなければ昼までに頂上へは届かない。除雪によって出来た1mほどの雪の壁に上がって、樹林帯の斜面へと進んで行く。春が近づいたのを感じさせる硬い雪面に薄っすら湿った雪が積もった状態で、ラッセル自体は軽い。急斜面を少し登ると総じて緩い斜面となる。作業道を横切るが、これを利用するよりは真っ直ぐに進んだ方が速そうだ。少し登ってさらに作業道を横断、樹林帯が途切れてかなり広い雪原となる。ひょっとしたら放牧地かと思ったが、柵は見当たらないし、後で調べても結局判らなかった。登ってきた方向の谷が切れ落ちている様子と、雪雲に霞んできている稲倉石山が印象的だ。少しピッチを早めなければこの山もすぐさま雪雲に覆われてしまうだろう。

再び樹林帯に突入、エゾシカの足跡が縦横無尽に入り乱れており、ここも彼らにとっては生活圏となっているようだ。すると突然、少し離れたところでバリバリと樹木の枝が倒壊する音、一瞬、狩猟による散弾銃かと頭の隅を過ぎった。ここ数日間報道されている厚真町の誤射による死亡事故の件もあり、こんな平日に、しかもこんな山域で物音ひとつ立てずに登っている登山者としてはついつい自分の今の状況を考えさせられる。私は決して臆病者には分類されない人間と自負しているが、人間の引き起こす不用意な愚行についてまで信頼できるほどの度量は持ち合わせていない。少し鳴りを潜めてじっとしていたが、その後の音は何も無かった。おそらくは枝に固まりとして残っていた雪がその重さに耐えかねて枝ごと自然落下したのだろう。

頂上から望む銀山と三角山 天気は急変、降雪状態に

斜面の傾斜が徐々に増してくる。そのまま頂上への直登も考えるが、地形図上では表現されていない意外な急斜面が現われる可能性も考えられ、ここは正攻法をとってコンタ440mポコとのコル側へと大きく回り込む。ジグをきって高度を上げて行くうちに稜線に飛び出した。前方には余市のシリバ岬始め平野が大きく広がっている。たかだか400m程度の標高だが、なかなかの高度感である。予報通りで、かなり分厚い雪雲が北方の空を覆い尽くし、こちらに迫ってきているようにも感じられる。雪が降り出すのは時間の問題だが、自分の居る場所は今のところは日差しのある心地よい雪山である。細かなジグをきって稜線上を登り詰めると、樹林が疎となった白い高みが前方に現われた。頂上だ! 時間との勝負と考えていただけに、無事到着した嬉しさは格別である。樹木には小さな手製の頂上標識が掛けられており、地元では意外によく登られている山なのかもしれない。北側の展望は開けているが、南側は雑木林に邪魔されてよく見えない。目だったところでは銀山から続く稜線上に三角山が頭ひとつ飛び出している様子が見える。

早速、頂上ビールを取り出すが、ふと見れば、谷ひとつ隔てた隣りのピークにも既に雪雲がかかっていた。明らかにかなりの降雪状態である。一度取り出した缶ビールだが、すぐさまザックにしまい込み、すぐに撤退とする。シールを外してのパイプの煙は、残念ながら今日はお預けである。一人の下りは速い。直ぐにコル付近に到達するが、にわかに降雪状態となって完全に視界不良となる。かろうじて見える往路のトレースをたどって樹林帯へと逃げ込む。広い雪原もトレースのみ見ながらひと滑りで通過、前方に薄っすら谷が迫ってきて頂上から約20分で道道に飛び出した。できればもう少しゆっくりと静かな雪山を味わいたかったが、最後は意に反したあわただしい幕切れとなった。(2011.2.10)

【参考コースタイム】道道755号駐車地点 10:45 然別山山頂上 11:55、〃発 12:00 → 道道755号駐車地点 12:20 (登り 1時間10分、下り 20分 )

 【メンバーsaijyo

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