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     シートートムシメヌ山(799m)

道道終点(登山口)からシートートムシメヌ山を望む

/25000地形図  「遠別川上流、ピッシリ山」

道道終点のゲート前に車を止める

シートートムシメヌ山。リンクルミリオンの道路地図帖(東京地図出版)を毎日のように見ているが、こんなに長い名の山は日高の “カムエク”と“コイカク”の正式名称くらいである。何かロッキー山脈にでもありそうなインディアン系の響きのある名称であり、今回の山行に参加したメンバーのほとんどが、第一印象としてこの山名に惹かれたように思う。というのは私自身も以前にこの山名を知ってからはずっと気になっていた山であるからだ。799mと北海道の山にあっては1000mにも満たない低山であり、登山の対象としては、登山道もなく、一般的には藪山としてでしか認知されない山であろう。参加メンバーの一人である、甘藷山荘管理人あまいものこさん曰くは、アイヌ語を繋げてみても山名の由来となった地形がどこなのか全くわからないとのこと。ひょっとしたら適当につけた可能性も考えられるが、明治30年ごろに作られた道庁の地図には既にこの山名が登場しているそうである。

沢中での休憩

この山は道内屈指の豪雪地帯である朱鞠内湖北部に位置しているため、登るタイミングが実に難しい。本来であれば根曲がり竹が積雪に埋まっている4〜5月頃に登りたい山であるが、道道688号(名寄〜遠別線)は未開通であり、北母子里から先は6月10日前後まではゲートが閉められている。EIZI@名寄さんはアプローチに自転車を利用したが、私にはそんな妙案も思いつかず、夏季の沢登りと藪漕ぎ以外に登頂の方法が見つからなかったというのが正直なところだ。現在、地形図上の道道終点より先、遠別町へ向ってさらに道路は伸びている。EIZI@名寄さんの話によればこの先、4〜5qくらいは伸びているとのこと。この状況を知らなかった私は、最初に現れるルヤンペナイ川を渡渉して、ウツナイ川出合までは藪漕ぎ覚悟の入山であったが、ゲートは閉じられているものの、出合いまでは難なく到着することができた。

一昨日の雨のためか、ウツナイ川は濁ってはいないが水量は多いように感じられる。9月も下旬ともなれば、朝晩は冷え込み、沢歩きには少々厳しく感じられる時期である。入渓してしばらくは河原がないため、冷たい水流の中を進むしかない。ほとんど人が入らないと思われる山域だが、登山者なのか渓流釣りのためなのかピンクテープも見られる。標高差の少ない流れであるため両岸の藪の中には湿地となっているところもあり、根曲がりを避けながら、なるべく水際の枯れたイタドリや蕗を掻き分けて進んで行く。中州と二股との区別が付きづらい。大きく間違えることはないが、途中で二股を見逃してしまった恐れはある。地形図上のコンタ430m付近の崖マークと思われる地点を通過する。あまり変化のない地形の中でははっきりと判るポイントである。

入渓地点の橋に到着
沢は意外なほど細い
到着した頂上は意外にも開けていた(展望は下写真参照)
シートートムシメヌ山頂上にて

椴虫山(三角点名)南西沢のコンタ460m二俣はしっかり確認するが、コンタ500mの二股は見逃してしまう。ここを間違えると頂上とは別の方向へ進むことになり、かなりのロスタイムとなるところであったが、EIZI@名寄さんのGPSのおかげで事なきを得る。頂上へ向う左股の水流が少なかったこともあるが、やはり先頭を歩いていた私の不注意である。右股へ入るとやっと標高が上がって行くのが感じられるようになる。小さな滝(1〜2m)が現れるが、結果的にはこれが山行中唯一の滝であった。前方には頂上部が見え隠れするようになり、いよ最後の詰めとなる。一足早く左側から入る沢形を地形図上のコンタ630m二股と勘違いしてしまったため、頂上から東側へ下る尾根上へ出てしまう。かなり太い根曲がり竹が密生していて、腕の力だけではどうにもならず、体重を乗せての前進である。“水を得た魚”とはこういうことを言うのか、先頭を歩く藪漕ぎ大好き人間のIsidoさんの藪を漕ぐ後ろ姿は幸せそうにさえ感じられる。

やがて周辺が明るくなり、頂上到着が実感できるようになる。頂上は膝くらいの背の低い藪しかなく、嬉しい誤算である。藪が濃いことが想像されていただけに、頂上らしい頂上に誰もが喜びを隠せない。西側の低い稜線の奥には日本海に浮かぶ天売・焼尻の島影が見える。目を北方に転じると利尻の山影、そして音威子府付近の敏音知山や鬼刺山の鋭鋒、さらには隣の椴虫山の後にはレーダーサイトのある函岳が見える。南側には朱鞠内湖の方向に大雪山をはじめ、トムラウシ山やオプタテシケ山、十勝岳など、もちろんピッシリ山はすぐ南に大きな姿を見せている。正に360度の展望である。付近の山々の標高が総じて低いせいもあるが、秋の澄んだ空気は雄大さと相俟って、“藪好きパーティ”冥利に尽きる大パノラマを見せてくれる。面白かったのは参加メンバーの山座同定である。私もかなりマニアック志向と自負していたが、この時に名前が上がっていた山々の同定にはとてもついて行けそうにない。「あれが幾山、あれが文殊…いいや、あれが加須美等々…」。EIZI@名寄氏、あまいものこ氏、Ogino氏、マニアック度に於いては錚々たるメンバーである。

下山ルートについての話が持ち上がる。EIZI@名寄さん曰くは藪を漕いで尾根上をトレース、工事中の名寄・遠別線を目指すのが良いとのことである。はじめは冗談かと思ったが、どうも冗談ではなさそうだ。大学のワンゲル部的なルート選択であるが、昨春にこの山域は探査済みということもあり、勝算ありと読んだのであろう。 “百家争鳴”状態は続くが、南西へ伸びる尾根のとにかく右側のどこかを下ることで話はまとまる。形ばかりのリーダーとはいえ、こんなパーティであればどのメンバーの意見に従っても正解であり、全く悩む場面がない。

とりあえず、730m標高点のあるコブを目指し、藪漕ぎでの稜線トレースを開始する。傾斜のないところは背丈以上の根曲がり竹が行く手を阻み、竹の向く方向を見ながらの藪漕ぎとなる。先頭を交代しながら、それぞれが独自のスタイルで自分の藪漕ぎ区間を担当する。730m標高点からはあまいものこさんの先導という何とも贅沢な下降により、最短ルートで工事中の道道へ飛び出す。頂上からの行動時間は約2時間であった。 (2004.9.26)

EIZI@名寄さんの山行記へ  あまいものこさん(甘藷山荘)のページへ

【参考コースタイム】 道道終点(登山口) 6:35 → ウツナイ川出合 6:50 → シートートムシメヌ山頂上 10:20、〃発 11:15 → 730m標高点、〃発 13:05 → 道道(工事中) 14:25、〃発 14:25 →  道道終点(登山口) 15:15   

メンバーsaijyo、あまいものこさん、EIZI@名寄さん、Oginoジュニアさん、いくこさん、isidoさん、チロロ2、チロロ3(旧姓Naga)

 

ー 頂上からの眺望 ー

頂上から朱鞠内湖と大雪山(右上)

天塩山地の主峰・ピッシリ山が大きく見える

天売・焼尻をズーム

山座同定していた北見山地の山々 ・・・ 私は全然判らない

頂上から鬼刺山(左)と敏音知山(右)

帰路、シートートムシメヌ山を振り返る

 

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