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    シアッシリ山(902.9m)

    

高広山から望むシアッシリ山 (2016年5月撮影)

1/25000地形図 「シアッシリ山」「黒岩山」

西尾峠の駐車スペースに車を止める
703mピークを背後に頂上を目指す

 「シアッシリ山」この山は1/25000地形図の地図名として以前からよく知っていた。この名を見てのイメージとしては、先ず第一に紛争真っ只中のシリア周辺が思い浮かぶ。世界史では、シリア隣接のメソポタミア北部をアッシリア地方と言って、紀元前にはアッシリア人が世界帝国を築いた旨が載っている。こんな歴史的に重いアッシリアだが、登ろうとしているシアッシリ山とは偶然だが良く似た名である。ちなみに、アッシリアの意味は、"Asu"「日が昇る地方」で、アジアの名の語源らしい。こちらシアッシリはアイヌ語で“ずっと向こうの山”の意味があるとのこと。残念ながらあまり関連性はないように思われる両者だが、故中標津のすがわらさんによれば各民族は細い糸でつながっており、大陸とはオホーツク人を通し、発音など言語の面では何等かの影響があったのではないかと言っていた。

 道北の山は標高の割には山域が広く、しかも濃い藪が特徴である。シアッシリ山には登山道が無いため、無雪期にピークを踏むのはとても大変だ。強いてこの時期に登ろうとすれば、林道や作業道などの詳しい情報が必要となる。であれば、狙い目はやはり雪面が硬い4月〜5月が良い。私としては当然のこと一番頂上に到達しやすいこの時期を選ぶことにした。距離的に長いルートでは、やはりスキーが効果的で、ラッセルが無ければなおのこと良しである。

 道道120号の西尾峠から美深町と枝幸町の境界に沿って登るのが一般的で、私もそのルートを辿ることにしてみた。この時期は融雪が進んでいることもあって、冬期間に落ちた針葉樹の葉や小枝で雪面はかなり汚い。今シーズン買ったばかりのスキーの滑走面を気にしつつ、硬い雪面にスキーを滑らせる。同行するIkkoさんは、スキーが絶対有利なこんな時期でさえ、普通の長靴での登山である。雪面は広く、傾斜もほとんどない。この日は気温が上昇しているのかガスがかかり、見えるものと言えば樹林のみ、ラッセルが無い代りにトレースも直ぐに消えてしまう。GPSが無ければこまめに標識を付けて進まなければならないだろう。

途中、青空ものぞくが、晴天はここまで シアッシリ山頂上はガスの中 (Ikkoさん提供)
二等三角点「志阿尻」と金麦
強風を避けての休憩  …頂上にて 二等三角点「志阿尻」と金麦

 樹林帯を進んで行くうちに、徐々に傾斜が判るようになり、560mのコンタ付近からは稜線歩きらしくなる。小さなコルを一つ過ぎると、このルートの中では目立ったポイントとも言える703m小ピークへの登りとなる。積雪期の山行ではピークを通過して、位置を確認しつつ進んで行くのがセオリーとなるが、この悪い視界では小ピークの展望など、とても期待は持てない。であればとGPSの利便性を試してみることにした。703mへの斜面を向かうコルと同じコンタまで登って、コンタを外さぬようにトラバースしてみる。結果はなるほど文明の利器で、労せずして同じ高さのままでぴったりとコルに到着した。当然と言えば当然だが、登山の安全性を考えるのであれば、この道具の使い方に熟知することも1つの方策である。コルからは緩く長い登り。途中、霧が晴れて、巻いてきた703mピークが姿を現す。だが、目指すシアッシリ山の頂上部はすっぽりガスに覆われている。到着時には霧が晴れることを祈りつつ前進あるのみだ。

はるか先を行くIkkoさん 相変わらず元気がいい

 767m標高点までは緩い単調な登り、そこを過ぎると徐々に方向を右に変える。尾根は広く、山を歩いている感じはしない。もっとも、濃いガスに覆われ辺りが何も見えないためにそう感じるのだろう。左側の端まで寄ると、東面が急斜面となって落ち込んでいる様子が見える。いよいよ頂上が近づくといきなり急斜面となる。スキーはあまり上手ではないので、ここにスキーをデポしてキックステップで登り詰める。今日も元気印のIkkoさん、我々よりも一足先に笹薮の頂上に到着した様子。我々は一歩遅れての到着となるが、彼は既に薄い笹薮の中に二等三角点「志阿尻を見つけていた。眺望は何も無く、シアッシリ山の頂上に到着したという事実のみ。だが、これはこれで十分に満足できる。長年気になっていたこのピークに立っているということだけでも成果であり、何にも変えがたい充実感を感じる。風下に少し移動すれば、無風状態となるのでゆっくり休憩タイムとする。

 下山時には登り返しがないようにルートを取ってきたこともあり、さすがに下りは速い。Ikkoさんは長靴なので先に行ってもらうことにするが、さすがにこんな山ではスキーが速い。下山途中、別のパーティが上がってくる。見た感じではかなり熟れた感じの面々で、ひょっとしたらガイド登山かもしれない。GPSを使わず、途中で付けていった標識にはオリジナルのものを使っている。一般登山者であればこんな凝ったことはしないだろう。767m標高点を少し下った地点で斜面を走り下るIkkoさんを捕らえる。しばらくは並行して下って行くが、傾斜が増して来ると、さすがにスキーに分がある。Ikkoさんとの差がついたのではないかと振り返ると、スキーで下るチロロ2さんを追い越しそうな勢いでIkkoさんが走っている。スキーに良い斜面は長靴にも良いのか、殿様と草履取りのようなその並走の様子が何とも可笑しかった。(2014.5.3)

【参考コースタイム】  西尾峠 P 7:55 → シアッシリ山頂上 10:30、〃 発 11:10 →  西尾峠 P 12:20 (登り2時間35分、下り1時間10分)

メンバー】Ikkoさん、saijyo、チロロ2

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