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      宿弗山(867.4m)

  

   

町道から望む宿弗山(左が三角点ピーク)

1/25000地形図 「仁世宇」

入口から7km地点で通行止めとなる
廃屋はタヌキの子っこたちの楽園となっている
パンケユパシュネナイ川出合へ向う途中、ハッタオマナイ岳が望まれる

   宿弗山(しゅったやま)はハッタオマナイ岳と振内山の中間にある、山容も標高も目立たない山である。頂上直下まで林道が通じ、登山というには少々興ざめする感じであるが、別ルートさえ取ればそれなりに楽しむことができる。そう言う我々も、地域の様子からある程度の林道状況の予測はしていたが、この日は予めそれを知っていてルートを選んだ訳ではなく、結果的に“それなりに楽しめるルート”を選択したようである。頂上到着後、初めてこの山の現状が判り、頂上付近にまで伸びている立派な林道に驚かされる。この山には「シューター沢」という名称の沢が入っているが、山名はシューターに「宿弗」を当てたと思われる。シューターについては意味不明であり、どなたか教えて頂ければありがたい。

パンケユパシュネナイ川の流れ

 入山口は振内・岩知志の仁世宇川沿いの町道である。入って直ぐにヤマベ(ヤマメ)の釣堀とその料理が食べられるという仁世宇園という店が幟を立てている。過疎の一途を辿る沿線の中で、ここだけは本州からもヤマベ目当ての客が訪れるそうである。この先、7km先で地滑りにより通行止めとの看板がある。沿線には離農した農家の廃屋が多いが、一軒だけは今も農業を営んでいるようであり、新しい家屋が建っている。生活道路と言うよりは林道と言った方が妥当な雰囲気である。シュータの沢林道入口で自然災害復旧工事の現場となり、ここから我々の目的のルートであるぺンケユパシュネナイ川出合いまでの約4qの道程を歩くことになる。途中、かなり大規模に森林が伐採され、リフトの無い夏場のスキー場と見間違えるほどである。ぺンケユパシュネナイ川出合い付近にはTVドラマ「北の国から」顔負けの、なかなか味のある古い廃屋が建っている。主は狸であり、6〜7匹の子狸が遊びまわり彼らの楽天地となっている。

  地形図上ではぺンケユパシュネナイ川出合からしばらくは続くと思われた作業道は、入口から既に荒れていて跡形もない。わりと新しいコンクリートの造作物のみが残っている。かなりの量の流木が河原を塞いでいるのは、普段の水流は細いが、降雨の際には一気に激流となって下ってくるためと思われる。山域全体で広範囲に伐採が行われている影響もあるのではなかろうか。途切れそうな作業道跡をつないで行くが、河原を歩いても大差はない。290m二股は左股へ入る。途中で左岸からのしっかりとした作業道が現れ、しばらくは楽をさせてもらうが、この作業道も右岸へと消えて行く。作業道からさらに左股へ沿うように続く集材路跡も倒木で埋め尽くされた沢の上流部で消える。自然の沢が現れるのはさらに上流である。詰の段階で小滝が連続して現れるのは楽しいが、沢全体を考えればほんの一部である。直ぐに源頭となり崩壊地で沢は終わる。植林と思われる整然としたカラマツ林の下草漕ぎとなるが、笹薮は背も低く、藪漕ぎ初級といったところであろう。

水流は細いが倒木が凄い 頂上付近は造園作業が行われたかのように整備されている
宿弗山頂上は背の低い笹薮となっている 宿弗山の三等三角点「宿弗」

 カラマツ林を抜けると頂上部が現れる。樹木は無く、低い笹薮に覆われた丘となっている。笹に覆われた刈り分けを通過し、一登りで頂上への稜線へ飛び出したが、飛び出したところが立派な歩道となっているのには驚かされる。なんと、200〜300m離れた林道終点には車が2台停まっていて、周辺の笹刈り作業が行われている。歩道には階段も作られ、かなり整備されているようである。つい先ほどまでの我々は、庭園の中で“藪漕ぎ遊び”をしていたのではないかと錯覚してしまうほどの別世界である。整然と笹が刈られ植林されている様子は、何か公園の造園作業でもしているかのようだ。展望の良さを考え合わせると、目的は観光?とつい考えさせられる。ただし、三角点は歩道から外れた笹薮の中に在り、頂上を示すものは何もない。展望は抜群で、晴れていれば北日高の主だった山々を指呼することが出来そうだ。夕張岳や穂別・坊主山、さらには苫小牧付近を中心とした太平洋の広がりなど、北海道地図そのままの大パノラマが展開している。

 下りは車道歩きのみと思い込み、のんびりと日向ぼっこを決め込む。この状況にいち早く危機感を感じたのは今回の参加メンバーであるキンチャヤマイグチさんである。車道は逆方向の富内側へ向っており、地形図上の点線で示された歩道は先ほど通過した刈分け跡のようである。となれば下りで予定していた林道へつながっているという保証は全くない。現在の整備状況と古い地形図とのタイムラグによるギャップと言える。さらに悪いことに、下りでは歩きやすい歩道へと入り込み、これもまた地形図上の歩道であると勝手に思い込み、立派な車道が平行していることで間違いに気が付く始末である。地形の変化のみが頼りの積雪期には決して起こりえない間違いと言える。直ぐに登り返して薮に突入、予定していた地形図上にあるシュネナイ林道へと辛うじて抜ける。気を抜くことの怖さ、自分に都合の良い解釈は禁物であるということを改めて思い知らされる山行であった。(2006.7.2)

 後日、掲示板を通じて中標津・すがわらさんが山名の解説をしてくれました。以下・・・一般的には、山名「宿弗」はシュクドルで、蝦夷葱・エゾネキ、アサツキであり、エゾネギの多い山と言う意味です。平取方言で読みますと、シユクとは熊のことです。特に牡熊のことです。ドルセとは、落ちる、落下する、転ぶの、意で、ラ音語のようです。ドルセはドラシ、ドラセ、から来ていて、ドは、−のほうへで、ラスは、ご存知のように、滑る、下に滑り落ちる、と言う意味ですね。それで、全体では“熊が転げ落ちる山”という意味になります。

■同行して頂いたEIZI@名寄さんの山行記

【参考コースタイム】 シューター沢林道入口(工事現場) 7:50 → パンケユパシュネナイ川出合 9:00 → 宿弗山頂上 12:00、〃発 12:50 → シュネナイ林道入口 15:30 → シューター沢林道入口(工事現場) 15:45 

メンバーEIZI@名寄氏、キンチャヤマイグチさん、saijyo、チロロ2

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