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 勝軍山(215m)

 

1/25000地形図   「松 前」

意外に立派だった松前城・天守閣
松前の道の駅に車を停める
松前城入口は雰囲気が良い
「同行二人橋」はなかなか趣がある
勝軍山頂上の石の祠

  半世紀以上も札幌に住んでいて、道内でただの一度も訪れたことのない町が松前町だった。当初は予定していなかった勝軍山だが、予定していた白神山と天狗山はヒグマとの遭遇で中止、城でも見て行こうと松前を訪れる。道内唯一の天守閣を誇る松前城がこの日の目玉となり、道の駅「北前船 松前」を気軽に出る。もちろん山へ登ることなど全く頭に無く、傘とカメラのみの軽装である。整備された観光地・松前、道内にあっては珍しく内地の雰囲気を感じさせてくれる街並である。国道からも望むことの出来る松前城は、思っていたよりも大きく立派に感じられた。

  天守閣が資料館となっているので、350円の入館料を支払って見学する。城の周辺はかなりの賑わい、後で調べたところではこの日は時代祭りの最終日だったようだ。城の周辺を散策してみると、ここにも八十八ヶ所があるようだ。予定していた山を中止していたこともあり、ついでにここも辿ってみることにした。見ればここの八十八ヶ所は安政元年(1865年)に6年もの歳月をかけて完成、松前八景の一つとして親しまれてきたとのこと。四国八十八ヶ所の土砂を埋め、その上に石仏を安置していると入口に書かれていた。一周3.3km、道内にあっては歴史ある霊場コースの一つといえる。何より、城周辺の賑わいがうそだったかのような静けさが良い。このコースの頂上は勝軍山というわずか215mほどの小さな山、その頂上くらいは踏んで行こうと気軽な気持で遊歩道の入口を出発する。

途中、休憩所も設けられている
頂上から続く踏み跡は裏の林道に飛び出した

 出発地点の「同行二人橋」はなかなか趣がある。回りの緑と橋の雰囲気、石仏とのコントラストが実に美しい。整備された遊歩道は歩きやすく、こんな気軽なハイクにはもってこいだ。標高を上げて行くと、街並みや海が望めるビュースポットも用意されている。途中、休憩小屋があり、そこからひと登りで将軍地蔵尊の石仏となり、何やらコースの最奥地らしい雰囲気となる。将軍地蔵とは、この山の山名発祥の石仏で、地蔵菩薩のひとつ。これに念ずれば、戦いに勝ち、宿業・飢饉などを免れるといわれ、鎌倉時代以降に武家に信仰された(デジタル大辞泉)とのこと。遊歩道はそこを過ぎた辺りから下り始める様子、このコースの最高地点は既に通過してしまったようである。ただし、勝軍山頂上となるとちょっと違うようだ。地蔵尊の裏側はさらに高くなっていて頂上も近そうなので、そこから薄い藪に入ってさらに藪斜面を登ることにした。

 途中で歩道を発見、ピンクテープも見られたため、何だ… どこからか続いていたのかと思った。分岐が何処だったかは判らないが、さらに歩道を登ると勝軍山の頂上らしきところに出る。小さな石祠が置かれており、ここが実質この山の頂上だということは一見して判った。そのまま反対方向へと下れば遊歩道へ出るものと思ったが、下ってみると少し離れた送電線の鉄塔へと向かっている。であればと、登って来た歩道を下ることにする。しかし、下っても下っても遊歩道へは出ず、道も不明瞭、何となく怪しい感じとなり、先ほどまでの遊歩道へは出そうもない。たかだか200m程度の小山、せいぜい下っても知れているだろうと思ったが、道は急斜面を横切るようにジグをきりながらどんどん下る。辺りは針葉樹林帯で薄暗く、なんとも心細い雰囲気となって行く。やっと平らになってほっと一息だが、どこに降りたものやらさっぱり判らず、踏み跡程度に続く小道をさらに進んで行くしかない。ひょっとして山の反対側にでも下ってしまったのではないか… 少々不安になる。ヒグマの糞も見られ何とも嫌な気分だ。もはや何時もの山の領域である。やはりどんな時でも地図とコンパスくらいは携帯すべきだったと後悔するが、そう考えても仕方がない。

 しばらく歩くと明るくなり、どこやら林道に出る。この小道の出入り口はガードレールに塞がれており、今現在は使われてはいないようである。東西南北くらいは日を見れば判るので、街のある南側へと進むことにする。思ったよりも奥に飛び出していたらしく、けっこう歩かされる。林道の標識を見れば民有林道 勝軍山線と書かれており、大松前川沿いの林道に出たことだけは確かなようだ。歩くこと20分、やっと人家が現れる。城の回りは綺麗に整備されて、どこか北海道らしからぬ気取ったものを感じたが、林道から出て現れた街並みは、さすがに北海道そのものの匂いを感じさせるいつもの景観であった。

 道の駅に戻り、携帯で勝軍山の情報を集めることにした。早速ヒットしたのが「一人歩きの北海道山紀行」のsakag氏のページ。頂上付近の歩道について「下りにはっきりとした踏み跡を辿ったら、別の方へ下っていき、慌てて戻った」とあった。… そうか、さすがにsakag氏、最初にこの山行記を読んでから訪れるべきだったと後悔するが、下山後とあっては後の祭りであった。(2013.8.15)

   

【山親父】

 勝軍山を訪れる予定はなかった。そもそもこの日の計画は道内最南端の山、天狗山〜白神山である。sakag氏の山行記を参考に、天狗山直下の道路終点からの天狗山〜白神山〜天狗山を予定していた。ところが、一週間前の豪雨の影響か道路は白神集落の墓地より上は雨裂のために普通車ではとても無理。仕方ないので墓地から歩くことにした。途中、エゾスカシユリの群生を始め予想外の花々の多さに気持ち良く標高を上げる。頂上の電波塔が近づいてやれやれと思った瞬間、カーブを曲がったすぐ先にヒグマがいた。牛? えっ〜 !、嘘だろ… と思った。とてもそんな雰囲気のところではなかったからだ。距離にして10〜20m、完璧に危険ゾーン内である。即座に逃げる体勢を取るが、逃げては拙いと思い直し、振り返って正対する。ヒグマは立ち上がって何やら考えている様子。ポケットに手を入れカメラを取り出す。カメラを向けながら電源を入れたが、その瞬間ヒグマは方向を変えてカーブの先へと消えて行った。カメラに収めることは出来なかったが、とにかくホッとしたのは言うまでもない。私もカーブの先へと進んでみたが、既に影も形もなかった。そのまま計画の続行も考えたが、やはりそうすべきではない。単に運が良かっただけかもしれないし、消えたヒグマがどこかでなりを潜めてこちらをうかがっていることも考えられる。丸々と太ってはいたが、どこか若グマの様子だった。ヒグマの生息数が増加していると言われている北海道、たい焼きに例えるなら見事しっぽの先までアンコが入った状態にあるということだろう。

 【参考コースタイム】 道の駅 1010 松前城見学 八十八ヶ所入口 10:50 勝軍山頂上 11:15 大松前川林道 11:30 道の駅 1200   

  【メンバーsaijyo

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