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      白井(1301.6m)

ヒクタV峰から望む白井岳

/25000地形図  「余市岳」

稜線が近づくと傾斜も出てくる
稜線が近づくと傾斜が増してくる
最後の登りは大きくジグを切る
現在は札幌国際スキー場があり、アプローチは楽になった
現在は札幌国際スキー場があり、アプローチは楽になった
北斜面には幹の太い天然林が見られる
朝里岳沢川は所々で落とし穴のように川面が顔を出している
小尾根上を白井岳頂上を目指して進む

白井岳は余市三山(余市岳、朝里岳、白井岳)の一山で、札幌市内の奥まった山である。人口185万人の大都市の中に、天然林の中をラッセルして頂上へ向うような環境があることを贅沢と感じるのは私だけではないだろう。現在では近くに札幌国際スキー場が開設され、簡単にこの山の麓まで移動出来るようになったが、かつては国鉄銭函駅から銭函峠を越えてヘルベチアヒュッテに一泊し、翌日余市三山を目指したと聞いている。白井岳へのルートは国際スキー場のスカイキャビンを利用して地形図上1099m標高点(スカイキャビン頂上駅)まで行き、そこから朝里岳(通称、飛行場)を経由して白井岳へ続く尾根へ降りて行くのが一般的だ。このルートでは登りの労力はわずかであるが、体が温まらぬうちに“飛行場”へ到着してしまうこともあり、実際よりは寒く感じるような気がする。また、ここは荒天時にはホワイトアウトになりやすく、文字通りの広い雪原なのでそれなりに厳冬期登山の経験が必要となる。荒天時には出来るだけ“飛行場”の東端にルートを取ると降り口を見つけやすいし、迷うことはない。

国際スキー場の駐車場に車を置かせてもらうが、夜通し駐車する場合には一言ことわって駐車すべきであろう。道道1号線(小樽〜定山渓)は通年通行となった現在でも夜間通行止めとなっている。夜間に無断駐車があった場合、山中泊の山行とスキー場内の事故との区別がつかず、管理の都合上大変困るようである。

今回はいつも下降に使う北斜面からのルートを取ることにする。国際スキー場の駐車場からは朝里岳沢川沿いに、スノーブリッヂを利用して左岸右岸と進んで行く。落とし穴のように川面が見え隠れしている。スキー場からのものと思われるシュプールが無造作に斜面を横切っているが、岸が迫った斜面のトラバースでは意外に傾斜がきついところもあり、積雪の状態によっては小雪崩への十分な注意が必要である。

白井岳の北斜面は小尾根と小沢が入込んでいて地形図上からは実際の様子が読み取りづらいため、944m標高点とコンタ1100mの沼を通過地点と考えてルートを組み立てる。コンタ750mの二股付近で944m標高点に続く小尾根に取付くが、ここからは尾根筋を辿って行く方が安全である。以前、付近の小沢を下降中、直径1〜2mくらいの穴がポッカリ空いていて、覗いて見るとちょうど小滝の落ち口であり、滝壷まで34mくらいの落差があったのを覚えている。この時に先頭を滑っていたのはベテランのIさんであったため、とっさのジャンプで難を逃れたが、そうでなければ落ちても決して不思議ではなかった。落ちてしまった場合、ロープがなければ助け出すことは難しいし、この時期の気温を考えると、どうなっていたかは容易に想像のつくところである。

944m標高点は尾根上の小さな丘となっていて、付近は広い平地となっている。ここからは左側の小尾根に移動してコンタ1100mの沼を目指す。途中からは少し傾斜がきつくなるが、大きくジグをきって登れば難なく標高を稼ぐことが出来る。沼に近づく頃、我々のトレースを辿ってきた単独行の女性が追いつき、沼から先の先頭を交代してくれる。冬山のトレース作りは入山している登山者同士の共同作業となることが多い。いつもは人にほとんど出会うことのない山を歩くことが多いため、あまり気にせずにルートを取っているが、このような入山者の多い山では後続の登山者に私の下手なルートファインデングを評価されかねない。しかし逆の場合には、先導者のルートファインデングの様子が見えてくるといった面白さもある。

白井岳頂上部は平らでのっぺりしている せっかくの頂上も、悪天の時は早々の退却となる

コンタ1230mの頂上の肩付近で稜線に出る。稜線上は冬型の気圧配置のため北西の風が強く、吹き溜まりとカリカリの雪面が交互に現れ歩きづらいが、頂上まではわずかである。いつも下るだけのルートで、登りでは使いたくないと思っていたが、実際入ってみると思ったほどの傾斜もなく短時間で頂上に到着することが出来る。頂上は平地となっていて吹きさらしであり、今日のような気象条件では早々に退却するに限る。頂上を示すプレートが樹木にかけられており、この山の人気の高さが伺える。

下りは深雪のパウダースノーの滑降である。滑りを楽しむ向きには堪えられない斜面であろう。特にコンタ1100mの沼までが、一番美味しいところである。沼からも楽しそうな斜面は続くが、我々は北東方向に針路を取ることにする。出来るだけ登り返しをしないための選択である。何本かの小尾根を斜め上部から越えると尾根らしい尾根には出るが、朝里岳沢川への下降点を考えると、さらに次の尾根を目指す方が確実な気がする。樹木は混んでくるが、シールなしの登り返しよりはましである。同じことを考える登山者もいるのか、樹木には古いピンクテープが何ヶ所かに見られる。最後の急斜面を滑り降りると往路のトレースと合流し、駐車場まではわずかであった。(2004.1.24)

【参考コースタイム】 国際スキー場(駐車場) 8:20 → コンタ750m二股 9:05 → 944m標高点 9:45 → コンタ1100mの沼 10:35 → 白井岳頂上 11:10、〃発 11:15 → 国際スキー場(駐車場) 12:25

メンバーsaijyoチロロ2

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