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      斜里(1547m) ・・・小屋の沢1000m右股から

小屋の沢から見た斜里岳頂上(左)

1/25000地形図斜里岳」

小屋の沢林道終点にて
今回の立案者でリーダーのmarboさん(右)と我がチームのチロロ3(旧姓naga)さん(左)
最初に現れた雪渓

三年ほど前、旧道から登った斜里岳であるが、この山に特化するBlog、「大好き!Mt.Onne」の管理人であるmarboさんの計画に乗り、バリエーションルートからこの山を目指すことにする。以前はプレハブ造りだった清岳荘も鉄筋コンクリートの立派な建物となり、およそ山小屋といった感じではない。管理人をされている熊ぷ〜さんは3年目の夏を迎え、入山者を迎える様子はいっそう柔らかく、見守る眼つきはいっそう厳しくなったような気がする。山ヤから山小屋・管理人へ、モードの切り替えが板に付いたのかもしれないが、あまり評しては後日怒られそうなので止めておこう。いずれにしても日本100名山、最高の管理人である。

急な雪渓歩きの開始

今回は北西面から頂上へ突き上げる、シュンクンベツ川支流・小屋の沢をトレースする計画である。小屋の沢林道は約1.5kmで終点までは少々荒れ気味であるが、難なく車を乗り入れることができる。入渓点は枯れ沢で、川原の石ころが転がっているだけだ。ひょっとしたら一度も水流に出会うことなく終了してしまうのでは…肩透かしを喰った気分は残るが、ないならないで割り切るよりしょうがない。途中、斜めに伸びる木々が多く、それを避けながらの歩行は少々億劫な感じである。歩き初めから約30分、ちょろちょろではあるが、辛うじて水流が現れる。斜里岳は古い火山で、厚い溶岩性の砂礫層は流れを簡単に吸収させてしまうようだ。麓には湧水が多いそうで、下山後、来運という集落へ“幸運がやってくるといわれている水”を飲みに行くが、冷たくて、飲んでいるだけでも確かに気持ちが豊かになりそうだった。

標高を上げると逆に水量が増し、普通の沢相となる。ただし、あくまでも小沢といった感じである。コンタ1000m付近まで来ると雪渓が現れる。これが入口のようなもので、次に現れる雪渓からは5月の芦別岳・本谷のような急斜面の登高となる。この時期の滝の落口付近は解けて薄くなっており、間違っても踏み抜かぬよう、慎重さの上にも慎重さを要する。今回、草付き用としてバイルを持参したが、傾斜がある雪面ではピッケルの代りとなり、心もとない地下足袋登高には強力な助っ人役となる。コンタ1150mで水流のある滝が現れ、そこが雪渓の終点である。この滝、見る限りでは小滝と映っていたが、近づいてみると滝の上部のみが姿を現していたようで、全体的には少なくても10m以上はありそうだ。順層で、手掛かりはしっかりとしており、簡単にクリアできる。結果的にはこの滝が山行中、唯一の水流がある滝であったが、 たった今通過してきた雪渓の下にも数多くの滝が隠されていると思って間違いなさそうだ。

ここを抜けると二股となっていて、両股ともに緩いスラブ状の枯れ滝である。本流側の左岸から巻き、滝の下部をトラバース、右岸側に延びる小尾根上へ登る。登ってみるとかなりの痩せ尾根で、木々がなければ結構な高度感を感じ、足がすくんでしまうことだろう。滝上には戻らず、そのまま尾根上を詰めることにする。木々の間から枯れ滝・上部の様子を見るが、沢形は消え、圧倒するような岸壁が姿を現している。無理して沢へ戻らなかったのは正解であった。付近が地形図上、コンタが一番密になっているところだ。尾根上にも何ヶ所か低い岩壁があり、手掛かりを探しながら攀じ登る。もちろん転がりでもしたら途中で止まることはまずないだろう。

樹木によってカモフラージュされているが、かなりの痩せ尾根 頂上直下にて烈風を避ける

コンタ1300m付近からは斜度が緩み、広い尾根上となってほっと一息といったところだが、烈風が吹き荒れるハイマツ帯である。ハイマツは下に向かって伸びていて、我々の行く手を真正面から阻んでいるようだ。悪い視界の中、前方には小ピークがぼんやりと見えているが、近づいて行くとさらにその先に次のピークが現れるといった具合である。ニセ・ピーク手前は数メートルほどの岩壁となっているが、手掛かりはしっかりとしていて簡単に乗り越すことができる。どちらかといえば強風の方が問題で、かぶっているヘルメットが風に持って行かれ、終始浮いた状態である。夏季でなければ、簡単に熱を奪われ、直ぐに行動不能といった状態に陥るだろう。

ニセ・ピークを三つほども越えたであろうか、見覚えのある砂礫地に二等三角点が現れ、なんとか頂上エリアへ到着したようだ。つかまる木々のない砂礫地では這うように進み、ほんのひと登りで見慣れた頂上ケルンに到着する。さすがに烈風の中、他の登山者の姿は全くない。あまりゆっくりとしていては強風によって熱が奪われるばかり、とにかく長居は無用である。直ぐに予定の西尾根へ向けての下降を開始する。途中までは玉石の沢コースの登山道を下り、途中からハイマツ帯へ突入する。

西尾根下降の強烈な藪漕ぎから開放・・・          清岳荘で出迎えてくれるyoshidaさん

最初は背の低いハイマツが続き、枝々は進行方向を向いていて快適である。相変わらずの強風に耐えながらも徐々に標高を落として行く。計画したmarboさんによると、以前の山行でこの西尾根に踏み跡らしきものを見たとのことであるが、踏み跡どころかハイマツの背丈が徐々に高くなって行き、終いには藪漕ぎグレードでいえばX級(足は地に着くが、力関係は薮の方が強い。焦りが頭を駆めぐり、傷の痛さも忘れてしまっている。山登りに来てしまった事を後悔する。[群馬の山歩き130選より])にあたる、ハイマツの枝渡りの開始となる。こうなったらエスケープする手立てなどあるはずもなく、腹を据えて辛抱強く下るしかないようだ。積雪期には快適と言われている西尾根であるが、夏にここを下るパーティはまずいないだろう。烈風からは開放されるが、いつ終わるとも知れぬハイマツ帯が行く手に立ち塞がる。ハイマツ以外の樹木が出てくればその割合を考え、ハイマツのみとなれば諦め気分、こんな時間帯が延々と続くからたまったものではない。北見から参加のクリキさん、そんな中でも笑顔を絶やさず、いつもニコニコと先頭を歩いているから凄い。逆に考えれば、こんな時こそ藪漕ぎを心から楽しむべきと教えられる。それにしても、積雪期であれば、ひと滑りで到着するであろう1075m標高点が何と遠いことか…

やっとたどり着いた1075m標高点付近も相変わらずハイマツだらけで、枝渡りの空中戦状態が続く。思いのほか長い標高点頂上の端までやって来て、やっと清岳荘・駐車場付近が木々の間から遠くに確認できる。さすがにここからの下り斜面ではハイマツの割合が減少し、普通の藪漕ぎといった様相となる。いつもであれば藪漕ぎ真っ只中といったところであるが、この日に限っては付録といった感じだ。清岳荘横を通り過ぎぬよう、左右に針路を微調整しながら一路終点を目指す。

結局、登りで費やした5時間45分に迫る5時間15分で無事、清岳荘前に到着。雨具はハイマツの松脂だらけとなり、今後は藪漕ぎ以外には使用不可、皆濡れねずみ状態でぼろぼろといった状況だ。酷い山行だった…が正直なところの実感である。ところがなぜか急転直下、ビールを飲んでいるうちに、払った労力以上の満足感が湧き上がり、marboさん、こんなとんでもないルートを…が、marboさんのおかげで…に変わる。山登りとは不思議なものである。リーダーとはいつもこう見られているものなのか…自分の身に振り返り、痛切に思い知らされる一日であった。(2007.7.21)  

marboさんの山行記

【参考コースタイム】 小屋の沢林道終点 625 コンタ1000m付近の雪渓 8:25 痩せ尾根上 10:00 斜里岳頂上 12:10 、〃発 12:15  → 清岳荘 1725 (上り5時間45分、下り5時間10分)

  【メンバーmarboさん、クリキさん、nagaさん、saijyo

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