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       社満射岳(1062.5m)

南富良野「道の駅」から望む社満射岳

      /25000地形図幾 寅

今話題のタケノコ山北東斜面 南富良野国設スキー場がスタート地点
もう少しでタケノコ山
左から落合岳、国境山、トマム山
タケノコ山頂上に到着

今、道内で“人気急上昇”の山といえば南富良野町の社満射岳が挙げられる。厳密にいえば社満射岳への途中の1039mピーク(通称;タケノコ山)がその山で、頂上からの標高差400mを一気に滑り下る北東斜面がなかなか素晴らしいようだ。この様子は動画サイト・You Tubeにも投稿されている。この大斜面、一見して谷地形の雪崩斜面と感じた。雪質を考え、弱層テストもやっているので大丈夫と、この日タケノコ山で出会ったスノーボーダーが言っていた。ここ数週間の週末はこの山に通い詰めているらしく、射満社岳の頂上を一度は踏んでみたいが、つい目前の美味しそうな斜面がそれを阻止してしまうとのこと。我々のようなピークハンターとはまるで違って、山頂に登ることよりも楽しめる斜面の方がより価値あるものという意識が若者中心に広まっているようだ。さらにスノーボードの普及も大きい。そんな中でこの斜面のダイナミックな滑りが脚光を浴びたのだろう。蓼食う虫も好き好き、山の楽しみ方はそれぞれということだろうが、ぜひとも万全の備えで斜面に入ってもらいたいものだ。

私は過去3度社満射岳を訪れている。最初に登った20年ほど前はほとんど登山の対象とはならない、道路地図でのみ名前を見るような山であった。子供の頃にテレビでやっていた人気番組「奥様は魔女」の主役・サマンサにも似たかなり奇妙な山名で、この山への最初の山行もこの山名に興味を持った山の後輩からの要望で実施している。当時はガイドブックからの情報が大勢を占め、およそ登山者が集まる山は限られていた。この山を初めて訪れて、当時だれもが登っていた無意根山・千尺ルートや迷沢山・送電線ルートなどと、この山との面白さの違いが判らなかった。情報がない分だけかえって新鮮で、同じルートの繰り返しよりは遥かに楽しかったのを覚えている。今はインターネットによって時代が大きく変りつつある。情報が自由に行き来する時代となり、山域やルートの選り分けもそれなりに手厳しくなってきたように感じられる。

第三リフトが止まっているため、歩かなければならない
登ってきたルートはガスって何も見えず
タケノコ山手前のコル付近

入山口となる南富良野国設スキー場の営業開始は午前9時、その頃になると何台かの山ヤと思われる車がやってくる。話を聞いたところではタケノコ山からの下降地点に車を一台置いてきたとのこと。ここには取水施設があり、冬期間でも除雪されているらしい。こんな利便性にもタケノコ山が人気の山となった理由の一つがありそうだ。スキー場の利用者はあまり多くはないようで、中腹からの第3リフトは運休中とのこと。終点の781mピークまではラッセルしなければならない。先行パーティのトレースを使わせてもらう手はあったが、スタートから楽をさせてもらっては後の気力が続かない。ここは自らのトレースを切り開くことで気力の維持に努める。仮に後続が決して交わることのないこの二本のトレースを見たなら、意味が判らないと感じることだろう。過去の山行ではタケノコ山からの大斜面ルートの下降など全く頭の隅にもなく、776m標高点への登り返しを避けるべく東側の斜面を長いトラバースでスキー場へと下っている。そんなこともあって今回は尾根上のコブは全て巻いて行く。タケノコ山への急斜面の登りで我々が先頭となるが、前日にも登山者がいたのか、ジグを切るルートも踏み固められていて、当日の降雪を払う程度のラッセルである。タケノコ山の頂上が近づくと、別方向から斜面狙いと思われるスノーシューのトレースと合流する。

タケノコ山周辺はよほど滑りに良いのか、先行パーティは南斜面の滑りをも楽しむようだ。我々の目標は滑りではなく社満射岳の頂上を踏むことのみである。タケノコ山からの下り、頂上が遠く険しく感じられるが実際のところは意外に近い。視覚に騙されがちだが、ここは地形図を信じた方がよい。少し南側からジグを切って頂上部へ、あとはそのまま進んで12年ぶりの三角点ピークとなる。聞くところではここには一等三角点が埋まっているとのことだが、過去3回を含めてすべて冬期の登頂だったので、この三角点には一度もお目にかかっていない。点の記によれば、平成16年で林道終点から約2時間30分かかっており、あまり上部までの集材路はないのかもしれない。タケノコ山では晴天だった空模様だが、にわかに視界不良となり怪しくなってきた。展望の良い山とのことで大いに期待していたが、残念ながら今回もはずれてしまったようだ。

社満射岳頂上に到着 下山後、国設スキー場へと道路を滑る

さて、下降である。どんなルートを下るかはその時の気分次第、とりあえずはタケノコ山への登り返しを考え、シールを貼ったまま下降する。コルまではブレーキがかかった状態で、そろりそろりと慎重に下る。上手く滑ったかと思うと直ぐに転倒、シールワックスくらいは塗っておかなければならないようだ。タケノコ山の南斜面に向かったパーティが射満社岳を目指して上がってきた。我々も南斜面を大きく巻きながら、東尾根へとトラバースすることにする。雪崩ることはなさそうなので、途中でシールを外す。目指す尾根手前の沢形は意外に傾斜がないと見えたが、入ってみるとなかなかの傾斜、素早くここを通過して東尾根上へと飛び出す。タケノコ山頂上からのトレースが現われ、話題の斜面へと下っている様子。やはり北東斜面狙いの登山者のようである。我々は東尾根をそのまま727mコルまで下って、地形図上の林道終点へと樹林帯の短い急斜面を下ることにする。

コルまでは程よい傾斜だが、日頃の手入れを怠っている私のスキーでは深雪ですぐに止まってしまった。一番楽しめる場面であっただけに何とも残念だ。コルから樹林帯への急斜面では少しだけ滑りを楽しむことができたが、あとはスキーが止まってしまい下りのラッセルとなる。小尾根一つ隔てた斜面からは歓声が響き渡っている。パーティリーダーがよほど上手にメンバーの気分を盛り上げているのか、雄叫びとも思える叫び声が谷間に響き渡っている。非常事態とそうでないときの区別がつきづらい。マナーをわきまえない登山者が出入りするということは、そのくらいここもメジャーになってきたということだろう。正直なところを言えば、素晴らしい滑りを逃してしまったものの僻みといえるのかもしれないが…(2011.2.20)

 ※ Web上でこの山の山名由来を見たが、点名「杜満社岳」(トマンシャ)が社満射(シャマンシャ)と、地形図上に誤って表記されたとあった。何度か図書館でこの件について探してみたが、結局のところ見つけることはできなかった。今後、機会があればさらに調べてみたいと思っている。

【参考コースタイム】南富良野国設スキー場 9:05 タケノコ山頂上 11:25、〃発 11:35 → 社満射岳頂上 12:05、〃発 12:20 → 東尾根 13:05 取水場 14:10 南富良野国設スキー場 14:50   (登り 3時間、下り2時間30分・取水場からの移動時間も含む )

 【メンバーsaijyo、チロロ2

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