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      写万部(499.1m)

     

   

長万部付近のどこからでも見える写万部山

 

    1/25000地形図「静 狩」「長万部」

登山口は地元によってかなり整備されている
頂上や登山口までの距離がしっかりと書かれている標識
頂上へは一直線

この日は小樽・西部の大登山を予定して札幌を出発するが、あまり天気が良くないため、回復傾向と予報が出ていた西側へ移動、長万部町の写万部山へと山域を変更する。岩内町を過ぎたあたりからは日が差し始め、積丹の山並みが朝日に輝いている。あまりの好天に失敗したかな…と思ったが、沢靴を忘れてきてしまったことが後で判り、写万部山に変更して良かったと納得する。この山は何かの機会に登ろうと潜在的に考えてはいたが、計らずも薮山の代替としてこの日の登山対象となった。長万部市街の東側に位置し、平地が広がるこの地域にあっては500mに満たない標高であっても抜群の存在感がある。急な変更で登山口が不明確だが、とにかく見えている写万部山へ向って車を走らせることにする。写万部の名は地元商工会のHPには「神がカレイを祭り、それが残雪の形になって残ったとの伝説から “雪カレイ”とアイヌの人々に呼ばれた山」との解説が載っていた。いずれにしてもその存在感からか、昔からこの地域の人々には親しまれてきたようである。

登山口へは途中に立派な看板もあり、難なく到着する。登山口には入山届けのプレハブや簡易トイレ、手洗所まで設置されており、かなり整備されているようである。また、登山口広場も内浦湾が一望の下に望め、この山の位置的な素晴らしさが十分に予感できる。登山口からは古い林道を利用しているのか、幅広い登山道が一合目の標識がある分岐へと続いている。分岐からの登山道は正に一級国道である。標識はちょうどよい間隔で一合毎に続いているが、自分の位置が刻々と判るだけにかえって余計な疲れを感じさせる。

数少ない天測点も設置されている

話は逸れるが、私は山へ入るときには敢えて腕時計を持たないようにしている。きっかけは気に入っていた高度計付きの腕時計を山でなくしてしまったことによるが、無ければないで逆に時間に追われずにじっくりと山を楽しむことができるようになったと気付いた。もちろん、ザックの奥には携帯電話をしまい込んでいるので、最悪の場合にはどうにかなる。文明の利器は止まることを知らず、高度計、GPSなど、最近では地形図内臓GPSまで登場した。このことは、登山者を過保護にしているのみならず、登山自体をもつまらないものにしているようにさえ感じられる。自分の現在位置と時間を知ることは大事なことではあるが、これのみに終始してしまっては本末転倒である。もっともっと大らかに“素晴らしき山”を楽しんでも良いのではないだろうか。発想を転換した結果、間違いなく山の素晴らしさが倍加し、余計な疲れを感じなくなった。そういう意味で、この山のあまりに丁寧すぎる標識は少々お世話が過ぎているのではないだろうかとつい感じてしまった次第である。

一合目から二合目にかけては針葉樹の植林のためか少々薄暗いが、そこから先はかなり明るい感じの登山道となる。真夏であれば照り付ける日差のために、かなり暑苦しい登山となることだろう。それだけ視界が利いて気持が良いということでもある。内浦湾沿いの駒ケ岳を始めとするお馴染みの山々が明瞭に望まれる。途中、急斜面のジグを切るあたりでは、下山時に真っ直ぐに下る登山者が多いのか、真っ直ぐに下る踏み跡ともともとの登山道が二手に分かれている。ここを登りきると6合目の標識があるコンタ400mの尾根上となって、あとは頂上へと真っ直ぐに続いている。青空に向って登り詰めて行く壮快感は標高や難しさとは関係なしに、どこも同じである。

天測点と一等三角点のある頂上から見る展望はこの地域の鳥瞰図といえる。札幌周辺の山々から半島部の山までが広範囲に望め、山座同定には薮山愛好者のバイブルとなっているミリオンの道路地図が必要なほどである。この地域の人々に愛されて当然の山であると実感する。欲を言えば、樹林に邪魔されている狩場方面の山々が見えれば、360°いうことなしといったところであろう。1時間足らずで気軽に登頂できる写万部山、下調べも何もしなかったことが、かえって山行の楽しさを大いに膨らませる結果となった。(2009.9.8)

 【参考コースタイム】登山口P 9:30 写万部山頂上 10:20、〃発 10:30 山登山口P 11:10 (登り 50分、下り 40分)

メンバーsaijyo、チロロ2

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