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       積丹(1255.2m)

豊富な残雪が残る積丹岳 ( 岬の湯から望む)

 1/25000地形図「余別」「美国」

天候が急回復、目指す積丹岳頂上も見えてくる
気が付けば雲海が広がっている
登山口前に車を停める
最初はどんよりとした曇り空
途中から青空ものぞく

積丹岳は私が雪山へ足を踏み入れた最初の山だった。30年ほど前になるが、もちろんスキー登山など全く頭に無く、ツボ足で春先に登っている。その後何度もこの山を訪れたが、いづれも春先だった。山岳会に入会してからは伊佐内川、大滝川、ウエンド川と、沢の遡行で夏のこの山に入山している。難易度といい最後の強烈な籔漕ぎといい、沢の練習には打って付けで、下山が登山道というのも好都合だった。そんな意味でも私に山の面白さを教えてくれたのはこの積丹岳だと思っている。そもそも積丹半島は豪雪地帯で、五月いっぱいは初夏と雪山とが同居しており、半島を取り囲む青い海とのコントラストが実に美しい。何といっても春山の明るさ、快適さが気楽に満喫できるのはこの山の特長といえる。標高こそとなりの余別岳に一歩譲るが、多くの岳人に親しまれている度合を考えれば、山名もさることながら間違いなく積丹半島の盟主と言えるだろう。

札幌を出る朝方は雨模様で少々不安な出発となったが、現地に到着する頃には雨も上がって何とか登れそうな感じとなる。今ひとつパッとしない曇り空の中、避難小屋の建つ登山口をスタートする。登山口こそ正規の入山口だが、もちろんどこでも歩ける雪山ルートである。ルートは積丹半島の山の中でも珍しく地形的な変化の少ない尾根で、長さといい傾斜といいツアースキーには打って付けである。ロケーションも抜群とあっては人気が出ないわけがない。一時期かなりの登山者がこの山に集中していたのではないかと思う。以前はヘリスキーも行われていたが、登りは良いとして、視界が悪い下降時にはそれ相応のルートファインディング力が必要となり、それなりの経験者でなければ少々危険を伴なうだろうと思っていた。そんな理由かどうかは判らないが10年くらい前にこのプロジェクトは頓挫したとのこと。未だに樹木にはその時に使った標識が残っている。それなりに有名になったこの山はスノーモビルの登場もあって逆に静かな山歩きを好む向きには敬遠されるようになった。もちろん私もそんな理由でこの山からはしばらく遠ざかっていた。

札幌では雨だったがこの積丹岳では雪となっていたようで、まるで新雪が降り積もった初冬のような景色を作り出している。木々は樹氷で白く姿を変え、登ってきた方向には雪のない美国の市街地やローソク岩、さらには小樽・赤岩、塩谷丸山の姿が望まれる。山だけが一面銀世界といった感じであるが、雪面をなぜるとすぐに春特有の汚れた雪面が顔を出す。そんなところを見れば薄化粧でごまかされた冬景色ということになるが、見た目が良ければそれも良しとするのも1つの考え方、あまり深く考える必要はない。Yahooのポイント予報では午前9時前後からは晴れ予報となっていて、良く見れば青空もちらほら覗かせている。銀世界とはいえやはり五月の山、気温が上昇してきたようで樹氷から雨のように水が降り注ぎ始め、さらにはバラバラと樹木全体の氷が降ってくる。どんよりとした曇り空だが、何となく天候も回復傾向にあるようだ。

南側には積丹半島の山並が広がっている
積丹岳頂上にて下りの準備 南側には積丹半島の山並が広がっている

広い尾根上には小さな沢形が入っていて、この沢形の全体像を頭に入れておかなければ帰路で惑わされそうだ。木を見て森を見ないか、森を見て木を見ないか、あまり地形図ばかり見ていても山そのものの美しさを楽しまなければ本末転倒である。見れば周りは足跡だらけで、こんな有名どころではそれに従うのも1つの方策、ここは多数決の論理で濃い足跡を選んでそれをたどることにしよう。971m標高点への緩い登りで樹木はなくなり広い雪原の中の踏跡を見ながら進んで行く。この頃からは青空が広がり始め急速な天候回復となる。ふと気付けば前方には青空を背景に真っ白な頂上が輝いて見える。これは凄いぞ、頂上到着が楽しみだ! 思わず興奮してしまったが、これはにわか作りの冬景色効果もあり、ちょっと出来すぎの感がある。

右側は無雪期であれば強烈な根曲がり竹の藪漕ぎが強いられる伊佐内川源頭の広い斜面だが、この時期であれば稜線上の潅木帯を進むよりは遥かに歩きやすい。大きくこの雪原に逃げながら稜線上のコンタ1130mポコへと回り込む。覆っていた雲は足許へと下がって雲海となって広がり、気が付けば青空が広がっていた。頂上の白い台地が大きな姿を現す。左側が少し高く見えるが、目指す頂上は低く見える右側の奥。稜線上を忠実にたどるよりは右側の一番緩そうな辺りから取り付くのが良さそうだ。急斜面をひと登り、少し進んで積丹岳の頂上となる。南側の斜面は大きく落ち込んでいていかにも頂上といった感じである。

頂上展望は掛値なしに素晴らしい。石狩湾を覆う雲海の上には真っ白な暑寒別岳を始め増毛の山々が浮かび、目を転じればここ数年登り続けてきた積丹半島の山々も勢揃いである。真正面には雪庇の張り出した余別岳やポンネアンチシ山、赤石山の海を隔てた背後には遠く狩場山塊も白く浮かんでいる。後方羊蹄山や余市岳といった高い山は雲の上に姿を現し、そのほか泥ノ木山、両古美山、余市・天狗岳…と、南側にうねうねと続く山並を一山一山挙げればきりがない。

結果的に晴天となったこの日、下降が素晴らしかった。豊富な雪渓に青い空、正に五月の山そのものだ。ひとつ難を言わせてもらえば、不自然なほど白すぎる雪面の滑りである。滑りの悪さと雪質の微妙な変化は、厳冬期のそれとは違って正直なところ今ひとつであった。気温上昇後のザラメの方がまだ良かったのかもしれないが、そこまで求めるのは贅沢過ぎるというもの。そうは言え、残雪期の積丹岳は第一級であることについては疑う余地など全くなかった。(2011.5.15)

【 頂上から山座同定 】

頂上からの増毛山地の遠望(望遠10×)

【参考コースタイム】 登山口 P 7:55 → 積丹岳頂上 11:15 、〃発 11:50 → 登山口 P 13:00  (登り 3時間20分、下り 1時間10分 )

メンバーsaijyo、チロロ2、Horie氏

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