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      尖 峰(953m)

ペクンネウシヌプリ頂上から見た尖峰

    1/25000地形図「俣落岳」「武佐岳」

ソーキップカオマナイ砂防ダムの広場に車を停める
前夜はやはり焚き火、酒を飲み、歌を歌う・・至福のひと時である
沢は昨日と比べてかなり減水していた
休憩の合間のルート確認は欠かせない

 今年も年一度の薮山仲間が集う季節となった。今年の一山は道東ということで、標津山地の尖峰(953m)に決まる。私が住む札幌からは少々遠いが、同山地にあっては一際目立つ存在であり、絶対に登ってみたい山であった。読んで字のごとくの鋭峰で、昭和の始めころから、すでにこの名がつけられていたと中標津の菅原さんが教えてくれた。単に尖がっているだけではなく形も整っており、いやが上にも登高欲がそそられる山である。薮山仲間の間では以前から話題となっていて、頂上からの展望は折り紙付きとのこと。今回の山行の準備をしてくれた熊ぷ〜さんが以前に登頂した折には、あいにく悪天候だったようで、その素晴らしい眺望はまだ見ていないそうだ。今回は天候も良さそうなので、期待は大いに膨らむところである。ただし、気になるのはYahooのポイント予報で、晴天予想であるにも関わらず降水確率が40%となっていることである。

滝かと思いきや、ナメ床であった
この沢唯一の函を持った滝

  早朝に目を覚ますと、満点の星空が広がっている。東が薄っすら明るくなり、昨日登った842m峰の頭上に白い残月が浮かび、正に雲ひとつない秋晴れの朝である。砂防ダムを下る水流は昨日よりは弱まっているようだ。ルートは昨日のペクンネウシヌプリと同じ、ソウキップカオマナイ川である。堰堤を越えて流れに入るが、昨日の水量とは打って変わり、かなり減水している。流心でさえ流される危険性をまるで感じない。参加メンバーの足回りはスパイク地下足袋、フェルト底、ウエーダー、長靴と、それぞれに一番実戦的と考えた道具で参加している。こんなところにも、形にはこだわらないが実用性にはこだわる薮山スタイルは見え隠れしている。ただし、長靴だけは少々厳しいかな…と感じた。

  川の渡渉を繰り返して行くうち、真正面に目的の尖峰が現れる。何度見ても、その鋭角的な山容は素晴らしい。川が大きく右に蛇行するところで、昨日見つけた「鉱石の沢林道」跡はないものかと、藪に分け入ってみることにする。林道跡といえばそうにも見えてくるが、単なる藪といってしまえばそれまでといった感じの笹藪が広がるのみである。結局、昨日の発見地点より下流には、明確な二匹目のどじょうは見当たらなかった。川が狭まる巨岩のある地点から、昨日同様に林道跡へと上がる。尖峰への小沢の出合はさらに上流であり、林道跡利用への期待は大いに膨らむ。楽をしたいというよりは、古の道を歩いてみたいという興味がそうさせるのかもしれない。その後も明瞭になったり消えたりするが、昭和の初期に存在したという鉱山への道路を思い起こすには十分なものがある。コンタ440付近は広くなっていて、道路跡はそこまでであった。ただ、ここから出合の480m二股は近く、話によると約30分は短縮できたとのこと。

  出合は明瞭な小沢が一本入っている。出合に到着する頃からか、辺りは薄暗くなり、ぽつりぽつりと雨が落ちてくる。ひょっとしたら展望はないかもしれない。小沢は変化に乏しいが、谷の中は冬枯れしていてどこでも歩けそうだ。特に左岸側は一見ブル道跡ではないかと思われるほどの感じである。変化が現れるのは40分ほど登ったコンタ650m付近である。最初に階段状の滝が現れ、Otaさんから聞いていた唯一の滝かと思ったが、近づいて見ると傾斜のついたナメ床であった。私はスパイク底のアピカ(製品名)だったので、ナメには滅法弱く、左岸側の笹に掴まりながら慎重にそこを通過する。通過後すぐに、函を持った本物の滝が現れる。近づいてみるとそれほどの滝ではなく、せいぜい4〜5mといったところだ。右岸の水際を登るが足場はしっかりしている。真夏であれば水流を登ると気持ちが良いとのこと。

  滝上へ出ると二股となっている。最後尾にいる私は何も考えずについて行った。そもそもはルートファインディングに長けたメンバーが先頭に何人もいて、おまけにこのルートの経験者が二人もいる。とても私の出る幕ではない。水が枯れてコルが近づくと、雨交じりの風が強くなる。コルの少し下ではさすがにたまらず、全員が雨具を着込む。そのまま沢形を詰めたが、コルへは出ていない。途中から沢形を抜け出し、ピンポイントでの尖峰登頂を目論んでいたつわもの揃いの藪ヤ面々、結果的には沢形通り進んでしまったことに納得がいかなかったようである。性格がルーズな私としては、これくらいの誤差は許容範囲、ルートファインディングは大成功と思っていたのだが…

頂上直下にて一息 尖峰頂上に到着

  沢詰めでコルまで抜けなかったには理由がある。以前に同じルートを辿ったOtaさんによれば、稜線上の藪は非常に濃いとのことで、少しルートを下方へずらせば藪も薄く、かなり効率が良いそうである。確かにその通りで、藪漕ぎらしい藪漕ぎはほとんどない。一箇所だけハイマツを越えるが、すぐにまた歩きやすい踏み跡となる。風雨の中、意外なほど簡単に憧れの尖峰頂上に到着する。残念なことに辺りは見渡す限り真っ白、雨も本降りとなってしまった。強風による寒さも加わり、だれも頂上ビールとはならないようだ。私とチロロ2の「地図がガイドチーム」、それと影のチームメイトであるOtaさんは、それでも頂上ビールは止められない。寒さの中で待っているメンバーには申し訳なかったと、今になって思えば感じる。

  下山時、ソーキップカオマナイ川を下っている途中、にわかに日が差し始め、いくらも経たぬうちに晴天となる。今、少し前に登った尖峰が顔を出した。まるで、そう簡単には素晴らしい展望は見せないぞ、と言っているかのようである。悔しいが、今回は諦めるよりしょうがない。こうなればと、薮山メンバーの次の興味は、鉱山に続く古の道に興味が注がれる。下りは林道跡を忠実に進んで行く。昨日の増水で苦労した部分はかなり山側を通過しているため、私としては二匹目のどじょうを逃していたようである。林道跡は続き、道路だか藪だか判然としなくなり、最後はやはり道路だったと思えそうな辺りで砂防ダムが現れた。(2008.10.26)

【川北温泉】

  下山後、野趣豊かな川北温泉を訪れる。以前は建物があり当然屋根もあったそうであるが、現在は全部取払られ、無料の露天風呂に変身してしまった。標津山地東部のこの付近にはこういった温泉が多く、山登りの締めくくりには格好のひと時を提供してくれる。菅原さんの話によれば、付近には「ルベス」と名が付く鉱床が広がっていて、昔は亜鉛の生産を行っていたそうである。ルベス温泉という秘湯もあるそうだが、ヒ素の濃度がかなり濃く、入浴には不適とのこと。もっともルベス温泉はかなり奥深く、こちらを訪れることができるのは余程の温泉マニアか山ヤさんくらいのものであろう。

Otaさんの「blog」へ

【参考コースタイム】ソーキップカオマナイ砂防ダム 6:10 480m二股 7:50 尖峰頂上 9:45、〃発 10:00 480m二股 10:55 ソーキップカオマナイ砂防ダム 12:30 (登り 3時間35分、下り 2時間30分)

メンバー】熊ぷ〜さん、クリキさん、nakayamaさん、Ogino@旭川さん、kitui@北見枝幸さん、Otaさん、saijyo、チロロ2  (前日のみ参加)網走・伊藤さん 

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